第8節 研究開発の推進 1 情報通信分野の研究開発政策の展開 〜ユビキタスネット社会の実現に向けた新たな研究開発戦略〜  我が国が持続的に経済発展を遂げ、かつ、安心して安全に生活できる社会を実現するためには、重点的に研究開発を実施すべき分野を定めて積極的・戦略的に投資を行い、産業の競争力を維持・発展させる必要がある。このような観点から、第三期科学技術基本計画(平成18年3月閣議決定)では、「社会・国民に支持され成果を還元する科学技術」、「人材育成と競争的環境の重視」を基本姿勢として、情報通信分野を含む4分野を重点推進分野とし、第二期に引き続き優先的に研究開発資源を配分することとされた。  さらに、基本計画期間中における分野別推進戦略では、重点投資する戦略重点科学技術を選定し、選択と集中を図ることとされた。  我が国は世界最高水準のブロードバンド環境を実現し、モバイルインターネット利用の分野でも世界を大きくリードしている。我が国が得意とする分野を活かしつつ、ユビキタスネット社会の実現に必要な要素技術や利活用技術の研究開発及び実証実験を推進するとともに、トラヒックの爆発的な急増等に対応できる次世代バックボーンの実現等の新たに顕在化してきた課題を解決するための研究開発が極めて重要となっている。  従来から情報通信分野の研究開発の多くを担っている民間企業は、収益につながる事業への選択と集中を行うことで企業体質の改善を図っており、産業構造変革が進行する中で、民間企業の研究開発環境は急速に変わりつつある。さらに、平成18(2006)年度からは、政府の新たな科学技術基本計画に加えて、情報通信分野における研究開発の中核機関である独立行政法人情報通信研究機構(NICT)の第2期中期目標期間が始まるなど、研究開発を取り巻く環境は大きな変革期を迎えている。  総務省では、平成16年7月に「ユビキタスネット社会に向けた研究開発の在り方について」を情報通信審議会に諮問し、情報通信審議会では情報通信技術分科会の下に研究開発戦略委員会を設置し審議を進め、平成17年7月に答申を行った。  同答申では、ユビキタスネット社会に向けた社会の潮流を展望し、今後重点的に推進すべき研究開発の方向性を、「国際競争力の維持・強化」、「安全・安心な社会の確立」及び「知的活力の発現」とした上で、これらを具体化する「UNS戦略プログラム」(図表3-8-1)と、プログラムを推進するために国等の担うべき役割及び研究開発を進める上で必要不可欠となる体制や環境について提言している。 図表3-8-1 UNS戦略プログラム  総務省では、UNS戦略プログラムに基づき、平成18年度以降の研究開発を重点的・戦略的に推進していくこととしている。  なお、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)では、本年4月1日に始まる第2期中期目標期間から、特定独立行政法人以外の独立行政法人に移行(非公務員化)し、非公務員化のメリットを活かした戦略的な人材獲得、産業界との人事交流等を積極的に推進するとともに、UNS戦略プログラムを踏まえ、[1]新世代ネットワーク技術に関する研究開発、[2]ユニバーサルコミュニケーション技術に関する研究開発、[3]安心・安全のための情報通信技術に関する研究開発の三つの研究開発領域への重点化を行っている。