2 情報通信分野の研究開発の重点的・戦略的な推進 (1)国際競争力の維持・強化を目指す「次世代ネットワーク技術戦略」  総務省では、基幹ネットワークの再構築(IP化)が今後世界的に進展する中で、光通信やモバイル等を機軸に、ユビキタスネット社会のインフラとなる新世代ネットワークの技術を実現するための研究開発を推進している。 1 次世代バックボーンに関する研究開発  総務省では、トラヒックの爆発的な急増に備え、情報通信インフラを強化するため、次世代バックボーン(基幹通信網)に関する研究開発に平成17年度に着手し、推進している。本研究開発は、今後のトラヒックの爆発的な急増に対応し得る情報通信インフラの強化のため、[1]地域に閉じるトラヒックは当該地域で交換できるようにするためのトラヒックの交換管理・制御等を行う分散型バックボーン構築技術、[2]個々のサービスに応じた複数事業者間の品質保証技術、[3]異常トラヒックの検出・制御技術の開発を行うものである。 2 ユビキタスネットワーク基盤技術の研究開発  ユビキタスネット社会の実現に必要となる研究開発要素は極めて多岐にわたる。総務省では、特に基盤性を有し、リスクが高く、波及効果の高い技術に力点を置き、平成15年度から超小型チップネットワーキング技術、ユビキタスネットワーク認証・エージェント技術、ユビキタスネットワーク制御・管理技術の三つの技術について研究開発を産学が一体となった体制により実施しており、要素技術の確立を目指している(図表3-8-2)。 図表3-8-2 ユビキタスネットワーク基盤技術の研究開発の概要 3 超高速フォトニック・ネットワーク技術に関する研究開発、テラビット級スーパーネットワークの開発  ネットワークの端から端までを光化することにより、ネットワークの大規模・大容量化を図ることが可能である。そのため、1本の光ファイバに数千の信号を同時に送ることができる超高密度波長分割多重技術及びこれに対応した光スイッチング技術等の超高速フォトニック・ネットワーク技術に関する研究開発を実施するとともに、テラビット級のトラヒックを安定かつ最適な経路で制御・管理する技術等の開発を実施している(図表3-8-3)。 図表3-8-3 超高速フォトニック・ネットワーク技術に関する研究開発等の概要 4 情報家電の高度利活用技術の研究開発  本件は、家庭内のテレビ、冷蔵庫などネットワーク接続機能が搭載されたすべての家庭電化製品(以下「情報家電」という)について、安心安全に高度なサービスが利用できる環境を構築するため、認証能力の異なる複数の情報家電の間において、自動で認証情報の連携を実現する技術、情報家電それぞれの能力差異やネットワーク環境・利用状況などの変動に応じた適切な方法でソフトウェアの更新を実現する技術の研究開発を行い、情報家電の高度利活用の基盤となる要素技術を確立することを目標としている。 5 超高速インターネット衛星の研究開発  ADSLや光ファイバなどブロードバンドのインターネットの普及は目覚ましいものの、山間地などの地理的条件不利地域では未だブロードバンド環境が未整備な世界が多数存在している。  また、近年の地震、津波等大規模災害の相次ぐ発生から安心・安全な社会に対する社会的要請が高まっており、そのための情報通信技術の活用が求められている。  総務省では、広域性・同報性・耐災害性等といった衛星の特徴を積極的に活用した地上のインターネット網と相互補完する超高速衛星通信技術の確立、アジア・太平洋地域諸国との国際共同実験の実施等の研究開発を目的として、最大1.2Gbpsの広帯域通信が可能となる超高速インターネット衛星(WINDS:Wideband InterNetworking engineering test and Demonstration Satellite)の研究開発を文部科学省と連携して推進している。超高速インターネット衛星は平成19年(2007年)度に打上げを予定している。 6 技術試験衛星VIII型の研究開発  通信・放送の移動体向けブロードバンドサービスは急速に発展しているものの、地理的ディバイドの問題が依然解消されていない。今後地上系モバイルシステムが高度化するうえでは、携帯端末による移動体衛星通信技術の開発と移動体向けサービスのニーズが高まっていくと考えられる災害対策等の用途に対応した開発が必要である。  総務省では、マルチメディア移動体衛星通信技術、衛星測位に関する基盤技術等を開発することを目的として、技術試験衛星VIII型(ETS-VIII)の研究開発を文部科学省と連携して推進している。技術試験衛星VIII型は、13m級大型展開アンテナ、高出力中継器、フェーズドアレイ給電部、衛星搭載交換機、高精度時刻基準装置等を搭載し、平成18年度に打ち上げる予定である。