コラム ICT利用による在庫循環の円滑化 企業のICT利用による在庫循環の円滑化は、企業の生産性を向上させるとともに、過度の景気変動を緩和する効果があると考えられる。ここでは、在庫循環図を用いて在庫管理の時系列的な動向を分析し、近年の傾向を検証する。 情報通信関連の在庫循環図を見ると、平成11年7−9月〜平成14年10−12月、平成14年10−12月〜平成17年10−12月でそれぞれ一巡していることから、この2期間に区切って見ると、前期では循環の円軌道が大きく、出荷及び在庫の変動が大きかった一方、後期では循環の円軌道が小さく、出荷及び在庫の変動が小さかったことが分かる(図表1)。図表1 情報通信関連の在庫循環図 また、情報通信関連を含む鉱工業在庫循環全体を見ても、平成11年10-12月〜平成15年4-6月の循環の円軌道は大きかったのに対し、平成15年4-6月〜平成18年10-12月の循環の円軌道は小さくなっており、同様の傾向があることが分かる(図表2)。図表2 鉱工業在庫循環図 以上より、近年、在庫循環の円軌道が小さくなっており、在庫循環が円滑化していることが分かる。この背景には、ユビキタスエコノミーが進展する中、個人・世帯の領域においてICT利用が浸透してブログ、SNS等の消費者発信型メディアが普及することで、企業と消費者の間の情報流通が円滑化し、企業が消費者のニーズを的確に把握できるようになったことや、企業においてサプライ・チェーン・マネジメント等ICTシステムを活用した効率的な在庫管理が普及したことがあると考えられる。 今後、電子タグ等のユビキタスツールの活用や商品、空間等のコード体系の整備等により今まで以上の高度な在庫管理が普及するとともに、ICT利用が企業内の在庫管理だけでなく取引企業等との間の生産・在庫管理へと深化することにより、在庫循環の円滑化が更に進展することが考えられる。