(2)地域間の生産誘発効果ア 関東から関東以外の8地域への生産誘発効果 この点を分析するため、関東の情報通信産業サービス部門に対する最終需要が誘発した関東以外の8地域の情報通信産業製造部門の生産額を見ると、平成2年には約516億円、平成7年には約752億円、さらに平成12年には約1,523億円と一貫して増加している。同生産誘発額の成長率は、平成2年から平成7年までの5年間では、45.7%であったのに対し、平成7年から平成12年までの5年間では、102.4%にまで上昇している。したがって、成長率に着目すれば、関東の情報通信産業サービス部門による関東以外の8地域の情報通信産業製造部門に対する生産誘発は、1990年代の後半により大きくなったといえる28(図表1-1-72)。図表1-1-72 関東から関東以外の8地域への生産誘発額の推移及び成長率(平成2〜12年) 上述した生産誘発額の変動は、「最終需要の変化」と「生産構造の変化29」という二つの要因によって引き起こされる。関東の情報通信産業サービス部門による関東以外の8地域の情報通信産業製造部門への生産誘発額の成長率を上記二つの要因に分解してみると、生産構造の変化要因は、1990年代前半には-3.0%とマイナスに寄与していたが、90年代後半には39.4%と大幅なプラスに転じている。このことから、1990年代後半における同生産誘発の増大は、最終需要の拡大のみならず、地域間の生産構造の変化によっても引き起こされていたことが分かる(図表1-1-73)。図表1-1-73 関東から関東以外の8地域への生産誘発額の成長率の要因分解イ 関東以外の8地域から関東への生産誘発効果 関東以外の8地域の情報通信産業製造部門に対する最終需要が誘発した関東の情報通信産業サービス部門の生産額を見ると、平成2年には約4,210億円、平成7年には約4,275億円、さらに平成12年には約8,431億円と一貫して増加している。また、平成2年から平成7年までの5年間における同生産誘発額の成長率は1.5%であったのに対し、平成7年から平成12年までの5年間では、97.2%と著しい上昇を示している。関東以外の8地域の情報通信産業製造部門による関東の情報通信産業サービス部門に対する生産誘発は、アのケースと同様に、1990年代後半に大きく高まってきたといえる30(図表1-1-74)。図表1-1-74 関東以外の8地域から関東への生産誘発額の推移及び成長率(平成2〜12年) また、上述の生産誘発額の成長率を二つの要因に分解すると、1990年代前半には-25.8%とマイナスに寄与していた生産構造の変化要因が、1990年代後半には29.5%と大幅なプラスに転じている。1990年代後半における関東以外の情報通信産業製造部門による関東の情報通信産業サービス部門への生産誘発の増大には、最終需要の拡大だけではなく、地域間の生産構造の変化も少なからず寄与していたことが分かる(図表1-1-75)。図表1-1-75 関東以外の8地域から関東への生産誘発額の成長率の要因分解 以上より、1990年代後半に、関東の情報通信産業サービス部門が関東以外の8地域の情報通信産業製造部門へ与える生産誘発効果が高まり、また、関東以外の8地域の情報通信産業製造部門から関東の情報通信産業サービス部門への生産誘発効果も高まっていることが分かった。このことから、関東の情報通信産業サービス部門で発生した需要が他地域の情報通信産業製造部門の生産を誘発し、また他地域の情報通信産業製造部門で発生した需要が関東の情報通信産業サービス部門の生産を誘発し、さらにそれが他地域の生産を誘発するという波及効果を通じて、日本全体へ生産誘発効果をもたらすという大きなメカニズムが働いている可能性があり、日本の情報通信産業の成長は地域経済の一体的な発展に貢献していると考えられる。28 1990年代後半、関東の情報通信産業サービス部門が関東以外の8地域の情報通信産業サービス部門に与える生産誘発も同製造部門への効果とほぼ同様に高まっているが、増加の絶対額では本文で言及している後者の方が大きい29 生産構造の変化とは、投入係数の変化による効果を指す。地域間表では投入する財の原産地域を区別することから、投入係数は生産物と生産要素の技術的関係だけではなく、地域間の分業構造をも反映することになる。なお、「最終需要の変化」と「生産構造の変化」への分解方法については、付注10を参照30 1990年代後半、関東以外の8地域の情報通信産業が関東の情報通信産業サービス部門に与える生産波及効果は、同製造部門と同様に同サービス部門の伸び率も高いが、本文で言及している前者の方が増加の絶対額が大きい