2 企業のICT利用による競争力  ユビキタスネットワークが進展し、あらゆる領域においてネットワークの接続環境が急速に向上する中、多くの企業がICTを積極的に活用することにより、業務効率化と付加価値創造を図り、企業競争力の向上を目指すようになった。こうした動きは、まず米国で1990年代後半に進展し、その後、日本のみならず、全世界に広がりつつある。グローバルな規模で、ICTの利用を軸とした活発な企業間競争が進展しているのである。  また、日本では、少子高齢化、人口減少が進む中で、今後も高い経済成長を実現していくためには、企業がICTを活用することにより生産性の向上を図ることが不可欠である。  以上のような観点から見たとき、果たして、我が国の企業は、ICTのメリットを十分享受しているといえるのかという疑問が生じる。例えば、企業がICTを導入するに当たり、その企業の業務領域に応じた適切なICTシステムが導入されているのであろうか。ICTシステムの導入に対応した業務改革(業務プロセス等の見直し)や組織改革(意思決定構造等の見直し)等のイノベーションがどの程度生じているのであろうか。また、それらは企業競争力や生産性の向上に貢献しているのであろうか。  このような問題意識の下、今回実施したアンケート調査や通信利用動向調査の結果等に基づき、我が国の企業のICTシステム導入とそれに伴うイノベーション、すなわち業務・組織改革等の現状と課題、そしてそれらと企業競争力や生産性の向上との関係等について分析していくこととする。