(3)メディアの新しい動向  個人が情報発信できる機会が拡大する一方で、従来、情報発信主体の中心であったメディアにも新たな動きが見られる。テレビや新聞等の既存メディア同士、あるいは既存メディアとインターネット企業との間の提携や買収の動きは世界的に広がっており、このような中でインターネットは影響力を高めつつある。  その中心的な存在であるGoogleは2006年(平成18年)1月にラジオ広告配信企業のdMarc Broadcastingを、10月に動画共有サイトを運営するYouTubeを、2007年(平成19年)4月にオンライン広告企業のDouble Clickを買収し、ビジネス領域を急速な勢いで拡大させつつある。イギリスの既存メディアであるBBC等も、YouTubeと提携した(図表1-3-18)。 図表1-3-18 近年における世界のメディア再編の主な動き  一方、FOXネットワークを傘下に持つニューズ・コーポレーションは、世界中に会員を誇るSNS「My space」を運営するIntermix Mediaを2005年(平成17年)に買収した。また、2007年(平成19年)3月には、NBCユニバーサルとニューズ・コーポレーションが新しい動画共有サイトを共同で開設し、インターネットポータル企業のAOL、マイクロソフト、Yahooとも提携することを発表した。また、映画業界では、2006年(平成18年)にワーナーブラザーズ及びソニーピクチャーズが動画共有サイトを運営するGubaとそれぞれ提携を開始した。  さらに、インターネットは新たな広告媒体としても影響力を強めている(図表1-3-19)。我が国の媒体別広告費の推移を見ると、既存メディアの広告費が横ばいにある中、インターネットの広告費は2000年代に入り急激に増加しており、平成17年には3,630億円であった(図表1-3-20)。インターネット広告には、インターネットの画面に画像や写真の広告を配置するもの(バナー広告)、インターネットの検索サイトで、あるキーワードを検索した際にキーワードに関連性の高い広告を自動的に表示するもの(検索連動型広告)、ユーザーが過去に閲覧したサイトを記録、分析し、ユーザーの関心に沿った広告を表示するもの(行動分析型広告)等、その特徴をいかした様々な広告手法が出現している。このうち、平成17年の検索連動型広告費は930億円で、インターネット広告費全体の25.6%を占めている。検索連動型広告は、特定の事柄に関心を持っている消費者に対して、その事柄に関連した広告をピンポイントで表示することができるという特色がある。なお、メディア再編の動きが活発な米国では、2005年(平成17年)の広告費全体に占めるインターネット広告費の割合は4.7%であった。 図表1-3-19 目的別のメディア重要度の比較 図表1-3-20 媒体別広告費の推移  このように既存メディアとインターネットの関係が緊密化している背景として、インターネットの普及により、従来のマスメディアのように不特定多数に向けて画一的にコンテンツを送るのではなく、場所や時間を問わず、特定の利用者のニーズや関心によってコンテンツを配信することが可能となったことがある。ブロードバンド化の進展により動画像の配信が容易になったことも大きい。  昨今、動画共有サイトを利用した映画のプロモーションビデオの公開や、テレビCMで商品名や企業名等のキーワードをインターネット検索画像のように表示し、テレビからインターネットへと消費者を誘導するような広告も増えてきている。今後も、企業と消費者を直接結びつける手法として、既存のメディアとインターネットが連携した広告が一層進展すると考えられる。