(2)所得から見たデジタル・ディバイド  ユビキタスネットワークの進展に伴い、だれもが、時間や場所を問わず多種多様で膨大な情報に容易にアクセスし活用できる環境が整備されつつあり、日常生活における利便性の向上が図られることが期待される。  他方、膨大な情報の中から必要な情報を取捨選択しそれを有効に活用するという行為は、知識に対する探究心を満足させるという心理的な効用だけでなく、例えば、より多くの求人情報をインターネットを通じて得ることによって、就労に関する多様な選択肢の中からより高い収入を得られる仕事に就くことができる可能性が高まるなどの経済的な効用をもたらす。このことは、ユビキタスネット社会において、デジタル・ディバイドが、個人間の経済的な格差をもたらす可能性があることを意味している。  そこで、ここでは、情報通信ネットワークの利用に関して、所属世帯年収別でどれほどの格差が存在するか見ることとする。  インターネット利用状況及びブロードバンド利用状況については、いずれも所属世帯の年収が低いほど利用率が低い傾向がある(図表1-3-31)。インターネット利用については、最も所属世帯年収が低い層である200万円未満では52.9%、最も所属世帯年収が高い層である2,000万円以上では86.4%と、約34ポイント、携帯インターネットの利用はそれぞれ28.6%、66.0%と約37ポイント、ブロードバンドの利用は、15.4%、63.5%と約48ポイントの開きがある。 図表1-3-31 インターネット及びブロードバンド利用状況(所属世帯年収別)  さらに、所属世帯年収別に情報通信機器の保有状況について見ても、所属世帯の年収が低いほど保有率が低くなっている(図表1-3-32)。携帯電話・PHSの保有については、所属世帯年収が200万円未満と2,000万円以上の差は約37ポイント、また、パソコンの保有については差が約53ポイントとなっている。携帯電話等は、緊急時の連絡手段として不可欠な機器として位置付けられるようになったこと、また、機器1台当たりの単価がパソコンに比べて安価であるとともに、通信料の値下がりや定額制の普及によって経済的な負担を抑えることができること等の理由から、パソコンの保有状況に比べると全体として保有率が高く、格差が小さいと考えることができる。 図表1-3-32 情報通信機器の保有状況(所属世帯年収別)  逆に、パソコン、携帯電話・PHSのどれも保有していないとする人の割合は所属世帯年収が低いほど高く、200万円未満では3割近くがどれも保有していない一方、2,000万円以上ではその割合は1割にも満たない。  また、情報の取得と経済的な効用の関係について見てみると、多くの情報、新しい情報又は欲しい情報のいずれの取得によっても、経済的な効用を得ると考える人が半数を超えている(図表1-3-33)。 図表1-3-33 情報の取得による経済的な効用  現状において、インターネット利用状況及び情報通信機器の保有と所属世帯年収には正の関連性があり、また今後、情報へのアクセス力の差が更なる経済的な格差に結び付く可能性があることが分かる。  すなわち、インターネットを利用して情報にアクセスできる人は、情報にアクセスする手段を持たない人に比べて、経済的に高い効用を得ることができる可能性が高い。一方で、前述したとおり、情報にアクセスする手段を持たない人は、情報にアクセスできれば得られたはずの経済的な効用を得ることができず、そのために更に所得が低くなるという、いわば負のスパイラルに陥る可能性が考えられる。