(2)ネットワークの高度化等 ア ネットワークの高度化の推進 (ア)IPv6化の推進  現在、インターネットの通信規約として、IPv4(Internet Protocol version 4)が多く使用されているが、新バージョンであるIPv6は、IPアドレス空間の拡張(ほぼ無尽蔵)、セキュリティの強化、QoS(Quality of Service:サービス品質)の確保、各種設定の簡素化(例えば、機器のネットワーク接続の際、自動的にアドレスが設定される。)等を可能とするものであることから、e-Japan戦略(平成13年1月)等において、パソコンやネット家電等のインターネットへの常時接続を想定し、IPv6への移行を推進するとされている。また、「IT新改革戦略」(平成18年1月)においても、世界一便利で効率的な電子政府の実現に向け、各府省の情報通信機器の更新に合わせ、原則として平成20年度までにIPv6対応を図ることとされている。  現在、ネットワーク側では、IPv6対応の商用ISP(Internet Services Provider)サービスや、IPv6を用いた映像伝送等用専用ネットワークサービスの提供が開始されるとともに、電気通信事業者の次世代ネットワークの基盤技術としてIPv6の利用が検討されており、端末機器側でも、ネットワーク機器、OA機器、テレビ電話、ネットワークカメラ等についてIPv6対応製品が発売されるなど、IPv6インターネット利用環境が整いつつある。  総務省では、平成15年度から3年にわたり実証実験を実施し、IPv6への円滑な移行を行う上でのネットワーク構築・運用上の課題の解決や、各種機器及びサービスの相互接続性確保に取り組むとともに、地方公共団体、地域コミュニティ及び家庭等にとって魅力あるIPv6アプリケーションについての検証を行った。これにより得られた成果は国内外に公開し、世界的なIPv6への移行促進にも貢献している。また、「u-Japan推進計画2006」においても、IPv6移行についてICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)等の国際会議において各国との情報共有・意見交換及び導入に向けた働きかけを引き続き実施するほか、ユビキタスネット社会の実現に向け、膨大な数の機器等をユーザーへの負担感なく安心・安全にIPv6ネットワークにおいて利用するためのセキュリティ確保の在り方について、実証実験により検証することとしており、平成18年度から実施している。 (イ)ネットワークのオールIP化に向けた技術基準の見直し  我が国では、技術革新やこれまでの競争政策等の推進により、世界最速・最安のブロードバンドが実現し、IP電話等の新しいサービスが急速に普及・拡大している。また、国内外の主要な電気通信事業者が固定電話網のIP化に向けた計画を打ち出すなど、ネットワークのオールIP化に向けた動きが活発化している。  しかし、IP化されたネットワークの網構成は、現在の固定電話ネットワークと異なることから、サービスの機能や通信品質、ネットワークの安全・信頼性、相互接続性・運用性等を適切に確保するためには、新たにネットワークのIP化に対応するための技術基準の見直しをはじめとする環境整備をできるだけ早い時期に実施することが不可欠である。  そのため、総務省では、平成17年10月にネットワークのIP化に対応した電気通信設備に係る技術的条件について情報通信審議会に諮問し、同審議会から、平成19年1月にネットワークのIP化の進展に対応するために必要な検討課題のうち、「0AB〜J番号を使用するIP電話の基本的事項に関する技術的条件」について一部答申を受けた。  総務省では、一部答申を踏まえ、技術基準の策定等を進めていく予定である(図表3-2-2)。 図表3-2-2 一部答申の概要 (ウ)次世代IPネットワークの推進  ユビキタスネット社会の実現のための最重要課題の一つである次世代IPネットワークの構築については、相互接続試験、実証実験、要素技術の研究開発等の技術的な検討のほか、技術基準の策定、国際標準化等について検討が必要である。そのため、独立行政法人情報通信研究機構(National Institute of Information and Communications Technology)が中心になって、平成17年12月に、大学、通信事業者、メーカー、アプリケーション制作者等からなる「次世代IPネットワーク推進フォーラム」が設立されている(図表3-2-3)。 図表3-2-3 次世代IPネットワーク推進フォーラム  同フォーラムには、 [1] 次世代IPネットワークに関する相互接続実験や技術基準の検討を行う技術部会 [2] 次世代IPネットワークに関する研究開発、国際標準化の検討を行う研究開発・標準化部会 [3] 次世代IPネットワークに関する普及促進・情報交流を行う企画推進部会 が設置され、継続的に議論が行われているところである。  平成18年度には、技術部会の技術基準検討WGにおいて、今後のIP化されたネットワークに対して0AB〜J番号を用いるIP電話のサービス品質・ネットワーク品質に求められる技術的条件や、ネットワークのIP化に伴う安全性・信頼性等について検討を行った報告書が取りまとめられている。 (エ)ネットワークアーキテクチャに関する調査研究  現在、情報通信ネットワークにおいては、ネットワークのIP化やホームネットワーク、ユビキタスネットワークの進展等、ネットワークの構造に新たな変化が起こりつつある。一方、欧米においても10年先をにらんだ新しい世代のネットワーク技術に関する検討が始まっている。  このような現状を踏まえ、総務省では、ネットワークの進展イメージや新しい世代のネットワーク実現による社会的・経済的効果、取り組むべき課題(研究開発、標準化、推進体制等)について検討することを目的として、平成19年1月から「ネットワークアーキテクチャに関する調査研究会」を開催している。同研究会は、同年6月を目途に報告書を取りまとめる予定である。 (オ)「IP化時代の通信端末に関する研究会」の開催  現在、我が国の社会基盤である情報通信ネットワークにおいては、IP化が進展しつつあるところであるが、このようなIP化時代において、多様な端末が各アプリケーションを実行するために適切な品質で通信を行うには、ネットワーク側だけに品質確保やセキュリティ等の機能を求めるのではなく、ネットワークと通信端末が連携して様々な機能を実現することが期待されている。  このため、総務省では、IP化の進展に対応した通信端末について、その未来像や広く円滑な利用を推進するための機能の在り方及び必要となる方策について、多様な観点から検討することを目的として、平成18年12月から「IP化時代の通信端末に関する研究会」を開催している。同研究会は、平成19年6月を目途に報告書を取りまとめる予定である。 イ 電気通信番号の在り方の検討 (ア)IP時代における電気通信番号の在り方に関する検討  固定電話サービスへの新規参入やIP電話の急激な拡大等固定電話サービスを取り巻く環境が大きく変化しつつあり、それに伴い、固定電話サービス用の電話番号が不足する可能性が生じていた。また、ネットワークのIP化の進展により、電気通信番号に求められる役割についても見直しを行っていく必要がある。  そのため、総務省では、平成16年12月から「IP時代における電気通信番号の在り方に関する研究会」を開催し、同研究会は、平成17年8月の第一次報告書(固定電話サービスを取り巻く環境の変化により不足する可能性のある電気通信番号のひっ迫対策、IP化の進展に伴い電気通信番号に求められる役割等について検討)に引き続き、平成18年6月に、 [1] FMC等の新サービスに利用可能な番号として、新規番号として「060」番号を利用することが適当であり、既存0A0番号(050、070、080/090)の使用についても、利用者に大きな影響を生じない一定の範囲で利用可能とすることが適当 [2] コールセンター等行政に対する問合せ用の番号として1XY番号を使用可能とすることが適当 [3] 公正競争上の観点から、FTTH等の新規サービスの受付番号として、「116」番号は広告せず、新規サービスの広告には、着信課金番号等を用いることが適当 [4] インターネット電話への転送サービスについては、いったん、呼を着信させた上でインターネット電話に転送する形態であることが必要 等を内容とする第二次報告書を取りまとめている。 (イ)FMCサービス導入に向けた電気通信番号に係る制度の在り方に関する検討  FMCサービスについては、近年世界的に関心が高まってきており、我が国においても多様な事業主体がサービス提供に向けた検討を開始していることから、総務省は、「IP時代における電気通信番号の在り方に関する研究会」第二次報告書(平成18年6月)を受けて、FMCサービスの早期実現に向けて、FMCサービス用新規番号の指定要件や、既存番号を利用する際のサービスの具体的範囲や指定要件について検討するため、平成18年9月、情報通信審議会に「FMCサービス導入に向けた電気通信番号に係る制度の在り方」について諮問し、平成19年3月に答申を受けた。  同答申の主な内容は次のとおりである。 [1] 対象とするFMCサービスとしては、「網形態、通話料金、通話品質等を問わず、既存番号の指定を受けている移動網や固定網を複数組み合わせて、1ナンバーでかつ1コールで提供されるサービス(ただし、電話として最低限の通話品質は確保していることが必要」)とすることが適当 [2] FMCサービスに利用可能とする番号及びその範囲としては、新規番号としては、060番号を利用可能とすることが適当であり、既存番号は、050、070、080/090番号を利用可能とすることが適当。ただし、050番号によるFMCサービスについては、現時点では、事業者において、ガイダンス等の適切な方法により、PHS・携帯電話回線に接続し、その料金水準で課金されることを接続前に発信者が把握できる措置が取られることが必要。なお、0AB〜J番号を利用することは、現時点では発信者へ与える影響が大きく、不適当 [3] FMCサービスの提供に必要となる条件としては、機能・設備として、接続先を把握し、呼を振り分けるといった機能を有する設備の設置等が必要。品質として、組み合わせる網について、少なくとも「電話として最低限の通話品質」を確保していることが確認できることが必要 ウ IPアドレス・ドメイン名の適切な管理  インターネット利用に必要不可欠なIPアドレスやドメイン名については、重複割当の防止等全世界的な管理・調整を適切に行うことが極めて重要であり、現在、民間の非営利組織であるICANNが、これらインターネット資源の管理・調整を行っている。総務省は、ICANNの政府諮問委員会(各国政府の代表者等から構成)の我が国からの正式登録メンバーとして、国際的な協力体制の確立に取り組んでいるところである。  IPアドレスについては、ICANNのIANA(Internet Assigned Numbers Authority)から地域アドレス管理機関(RIR:Regional Internet Registry)に割り振られた後、RIRから直接又は国別アドレス管理機関(NIR:National Internet Registry)を通じてインターネット・サービスプロバイダ等に割り振られ、それをユーザーが利用する仕組みとなっており、我が国においては、社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)が国別アドレス管理機関となっている。  また、ドメイン名については、「.com」や「.net」のような分野別ドメイン(gTLD:generic Top Level Domain)と、「.jp」や「.uk」のような国別ドメイン(ccTLD:country-code Top Level Domain)に大別されるが、国別ドメインとして我が国に割り当てられている「.jp」ドメインについては、株式会社日本レジストリサービス(JPRS)が管理しており、ユーザーは、指定事業者を通じて登録する仕組みとなっている。さらに「.jp」ドメインは、組織の種別ごとに区別されたドメイン名(属性型)、市区町村名と都道府県名で構成されたドメイン名(地域型)、日本に住所があれば誰でも登録できるドメイン名(汎用)等に区分されている。平成19年4月1日現在、「.jp」ドメインには約90万件が登録されており、そのうち、一般企業等用の属性型ドメイン名「.co.jp」は約30万件、任意の英数字を登録できる汎用jpドメイン名は約41万件、汎用日本語jpドメイン名(例:総務省.jp)は約12万件となっている。  さらに、政府機関や地方公共団体のドメインについては、属性型ドメイン名「.go.jp」「.lg.jp」のほか、汎用日本語jpドメイン名のうち「行政・司法・立法に関連するもの」として予約されたドメイン名が排他的に登録可能となっており、「第1次情報セキュリティ基本計画」(平成18年2月情報セキュリティ政策会議)において、政府機関は、「政府機関のドメインであることが保証されるドメイン名の利用を推進する」こととされている。  このように、予約リストは政府機関等以外の者による登録を防止する上で非常に重要なものであることから、総務省では、JPRSと連携して「汎用JPドメイン名における予約ドメイン名リスト(行政・司法・立法に関連するもの)」の組織改編等に対応した現行化作業を行っている。