第5節 研究開発の推進 1 ユビキタスネット社会の実現に向けた新たな研究開発戦略  我が国が持続的に経済発展を遂げ、かつ、安心して安全に生活できる社会を実現するためには、重点的に研究開発を実施すべき分野を定めて積極的・戦略的に投資を行い、産業の競争力を維持・発展させる必要がある。このような観点から、第3期科学技術基本計画(平成18年3月閣議決定)では、「社会・国民に支持され成果を還元する科学技術」、「人材育成と競争的環境の重視」を基本姿勢として、情報通信分野を含む4分野を重点推進分野とし、第2期に引き続き優先的に研究開発資源を配分することとされた。さらに、基本計画期間中における分野別推進戦略では、重点投資する戦略重点科学技術を選定し、選択と集中を図ることとされた。  我が国は世界最高水準のブロードバンド環境を実現し、モバイルインターネット利用の分野でも世界を大きくリードしている。我が国が得意とする分野をいかしつつ、ユビキタスネット社会の実現に必要な要素技術や利活用技術の研究開発及び実証実験を推進するとともに、トラヒックの爆発的な急増等に対応できる次世代バックボーンの実現等の新たに顕在化してきた課題を解決するための研究開発が極めて重要となっている。  従来から情報通信分野の研究開発の多くを担っている民間企業は、収益につながる事業への選択と集中を行うことで企業体質の改善を図っており、産業構造変革が進行する中で、民間企業の研究開発環境は急速に変わりつつある。さらに、平成18年度からは、政府の新たな科学技術基本計画に加えて、情報通信分野における研究開発の中核機関である独立行政法人情報通信研究機構の第2期中期目標期間が始まるなど、研究開発を取り巻く環境は大きな変革期を迎えている。  総務省では、平成16年7月に「ユビキタスネット社会に向けた研究開発の在り方について」を情報通信審議会に諮問し、平成17年7月に答申を受けた。同答申では、ユビキタスネット社会に向けた社会の潮流を展望し、今後重点的に推進すべき研究開発の方向性について、 [1] 国際競争力の維持・強化 [2] 安全・安心な社会の確立、及び [3] 知的活力の発現 の三つを示した上で、これらを具体化するための「UNS戦略プログラム」と、同プログラムを推進するために国等の担うべき役割、研究開発を進める上で必要不可欠となる体制や環境について提言している。  「UNS戦略プログラム」(Universal Communi-cations, New Generation Networks, Security and Safety for the Ubiquitous Network Society)は、 [1] 国際競争力の維持・強化を目指す「次世代ネットワーク技術戦略」 [2] 安心・安全な社会の確立を目指す「ICT安心・安全技術戦略」 [3] 知的活力の発現を目指す「ユニバーサル・コミュニケーション技術戦略」 から構成されており、総務省では、同プログラムに基づき、平成18年度以降の研究開発を重点的・戦略的に推進していくこととしている。  また、独立行政法人情報通信研究機構においても、UNS戦略プログラムを踏まえ、この三つの研究開発領域への重点化を行っている。  以下、この三つの研究開発領域における取組内容及びUNS戦略プログラムを推進するための研究開発環境の整備について述べる。