(5)移動体衛星通信技術の研究開発  携帯電話をはじめとした移動通信システムは、平時は便利であるが、ひとたび災害になれば、地上通信網の物理的破損、被災地への通話集中によるふくそうにより長期間通話が不能となる事態が生じている。このため、山間部や海上も含め、全国をカバーでき、災害にも強い衛星通信の活用が期待されており、これを普及率の高い携帯電話からも利用できるように技術革新を図ることができれば、いつでもどこでも個人に対する避難勧告、避難誘導等の確実な情報伝達が可能となる。また、災害利用ばかりではなく、いつでもどこでも利用できる携帯電話を実現することで、国民の新たな豊かさを支えるサービスの創出も期待される。  総務省では、文部科学省と連携し、300g程度の携帯端末による移動体衛星通信技術や衛星測位に関する基盤技術等を実現することを目的として、世界最大級の13m級大型展開アンテナや高精度時刻基準装置等を搭載した技術試験衛星VIII型(ETS−VIII:愛称「きく8号」)の研究開発を行った。同衛星は、平成18年12月に打上げに成功し、今後は、衛星開発機関による実証実験のほか、衛星アプリケーション実験推進会議における審議結果を踏まえ、災害対策関係機関による防災実証実験等、広く一般から募集した利用実験の実施を推進していくこととしている。  また「安心・安全な社会の実現に向けた情報通信技術のあり方に関する調査研究会」最終報告書(平成19年3月)では、ETS−VIIIの成果を基に、一層の移動体衛星通信技術の高度化に取り組み、広く普及している携帯端末に搭載できるだけの小型軽量化、地上系携帯電話との一体的な運用の実現を目指すこととしている。