(2)ICT産業を取り巻く事業環境 ア 世界の主要ICT企業の設立年  2006年の売上高が80億ドル(約1兆円)を超える世界の主要ICTベンダーの設立年を見ると、日本においては、戦前から戦後間もなくの時期に創業された老舗企業が中心となっている(図表1-2-3-10)。一方、北米においては、1960年代、1970年代、1980年代に設立された企業がそれぞれ3社、5社、4社となっており、米国シリコンバレー等を中心とするハイテク企業群の中から継続的に新しい企業が生まれ、大きな成長を遂げてきたことが分かる。また、新興地域であるアジア太平洋地域でも、戦後、特に1970年代から1980年代に創業された企業が大きな成長を遂げている。今後の日本のICT産業の活性化及び国際競争力の強化のためには、我が国においても、新しい企業が継続的に創出され、大きな成長を遂げられるような環境を整備することが重要であると考えられる。 図表1-2-3-10 世界の主要ICTベンダーの設立年  具体的には、企業が継続的に創出され、成長するためには、それぞれの成長ステージごとに必要な資金の供給が必要である。したがって、まず、新興する企業が資金調達の壁を乗り越えられないまま撤退することのないよう、資金供給が行われる仕組みを整備することが必要である。  また、図表1-2-3-10が示すように、1970年代以降に設立された企業の多くは、技術に事業の中核を置いている企業が多い。こうした技術オリエンティッドな企業が大きく成長を遂げるためには、高度かつ専門的な技術を有する人材を育成し、またそうした人材を活用できる環境が重要である。  さらに、企業内に十分な人材と資金を抱えていても、技術シーズとしての研究開発の成果をうまくビジネスに結び付けなければ、企業としての成長は達成されない。したがって、研究開発環境や研究成果の活用のための制度の整備も同様に重要であると考えられる。  そこで、以下では、資金調達、人材育成及び研究開発の各観点からの事業環境に関する我が国の課題と諸外国の対応を見ることにする。 イ 資金調達環境 (ア)成長ステージに応じた資金供給の重要性  企業が創業した後、一定規模にまで成長し、株式市場等で独自に資金調達ができるようになるまでには、いくつもの成長の壁があり、それを乗り越えるための資金が必要となる(図表1-2-3-11)。一方、規模が小さく、事業実績も伴わないような創業期の企業への資金供給は、資金の供給者側にとって高いリスクを伴うため、成長の第一段階にあるような創業間もない企業の資金調達は容易ではない。そこで、創業期から安定期に入るまでの資金調達においては、安定期に入った企業とは異なる資金調達の仕組みが必要になると考えられる。以下では、そのような資金調達環境に関する我が国と諸外国の現状について考察する。 図表1-2-3-11 企業の成長ステージ (イ)我が国の資金調達環境に関する課題と諸外国の対応 A ビジネス・エンジェルによる資金供給  日本と米国における創業時の資金供給源を見てみると、日本では自己資金、親族等及び金融機関の割合が多くなっているのに対し、米国ではエンジェル(ビジネス・エンジェル)による投資が最も多くなっている(図表1-2-3-12)。金融機関からの資金供給は、通常、融資の形態を採るケースが多いことから、日本における起業は、起業家個人の力量とリスク負担によって行われるケースが多いといえる。一方、エンジェルとは、個人として創業希望者に出資を行う投資家であり、通常、出資の形態が採られることが多い。このため、エンジェルによる投資の多い米国では、起業家個人のリスクは比較的小さいといえる。また、起業経験者等がエンジェルとなっているケースでは、資金面のサポートだけでなく、創業時の事業運営のノウハウ面まで含めた幅広いサポートを行うことも多いことが指摘される。 図表1-2-3-12 日米におけるベンチャー企業創業時の資金調達先  エンジェル投資が盛んといわれる欧米においては、「エンジェルネットワーク」と呼ばれる人的ネットワークが多く形成されており、このネットワークを通して、投資先を探す個人と、投資者を探すベンチャー企業とのマッチングが行われる仕組みとなっている。米国と欧州におけるエンジェルネットワーク数は、堅調に増加しており、2005年時点でそれぞれ200以上のネットワークが形成されていると見られる(図表1-2-3-13)。エンジェルネットワークの形成が拡大してきた背景には、欧米ともに政府機関による強力な支援があったことが指摘できる。例えば、米国における先駆的なエンジェルネットワークは政府の支援によって生まれており、欧州においてもEUが積極的にエンジェルネットワーク形成のための認知度向上キャンペーン等を実施してきている(図表1-2-3-14)。一方、日本におけるエンジェルネットワークの数は、現状では少数であると見られ、政府においても、本格的な支援に関する検討が行われている段階にとどまっている。 図表1-2-3-13 欧米におけるエンジェルネットワーク数 図表1-2-3-14 欧米におけるエンジェルネットワーク発展経緯 B ベンチャーキャピタルによる資金供給  ベンチャーキャピタルによる投資のGDP比率を見てみると、日本は他のOECD諸国に比べて非常に低い水準にある。GDPに対するベンチャーキャピタル投資の比率はOECD平均で0.12%程度であるが、日本では0.03%程度となっている(図表1-2-3-15)。 図表1-2-3-15 ベンチャーキャピタル投資のGDP比(2005年)  ただし、ベンチャーキャピタルによる投資は、通常、ファンドの形態を採ることが多いため、リスクに見合うリターンが求められることが多い。このため、ベンチャーキャピタルが、先行きが不透明な創業期よりも投資回収の確実性が高い時期にある企業に対して投資を行う傾向にあるのは、各国とも同じである。  米国におけるベンチャー企業を投資元の別に見てみると、エンジェル投資を受けている企業数は、ベンチャーキャピタルによる投資を受けている企業数の10倍から20倍近くあると見られている(図表1-2-3-16)。米国では、エンジェル投資が創業時資金の供給者としての役割を担い、ベンチャーキャピタルの投資の対象となる段階までの企業育成に必要な資金供給を支えているといえる。 図表1-2-3-16 米国における投資元別ベンチャー企業数 C 公的ファンドの充実  また、企業が大きく成長するには、公的資金の投入による企業支援も重要であると考えられる。諸外国においては、公的ベンチャーファンドや中小企業向け投資制度が各種整備されている(図表1-2-3-17)。日本においても、中小企業等における研究開発から事業化までを一貫して支援する制度として、米国のSBIR(Small Business Innovation Research)制度を手本とした公的中小企業支援制度等が実施されている。日本でSBIR制度が実施されたのは平成11年と制度創設後まだ間もないこともあり、平成16年(2004年)における日本の利用額は、米国の1/8程度にとどまっている13ものの、我が国においても、今後、利用の拡大が期待される。 図表1-2-3-17 海外における公的ベンチャーファンド事例 ウ 人材育成環境 (ア)日米新興ICT企業創業者の経歴  我が国の主なICTベンチャー企業と米国のICT関連企業の創業者について、主要学歴、専攻内容について調査したところ、米国の創業者の場合は、計算機科学等の工学系の専門課程を経た人材が多いのに対し、我が国の創業者は、経済・経営学部等の文科系の出身者が多いという特徴が挙げられる(図表1-2-3-18)。 図表1-2-3-18 日米における主要な新興系ICT企業の創業者経歴  このように、米国では、理工系人材がイノベーションを創出し、優れたマネジメントを行う中核的人材として活躍しているのに対し、我が国ではこのような動きがほとんど見られない。そこで、以下では、我が国と諸外国のICT人材を取り巻く環境の違いについて考察する。 (イ)我が国の人材育成環境に関する課題と諸外国の対応 A 理工系人材の不足  我が国の理工系人材の修士課程から博士課程への進学率は、2007年度で理学系19.5%、工学系6.3%と減少傾向で推移しており、進学者数を見ても、近年は減少傾向にあることが分かる(図表1-2-3-19、図表1-2-3-20)。このような理工系人材の減少傾向には、(ア)で見たような、我が国における理工学系人材のプレゼンスの低さも一定の影響を及ぼしているのではないかと推察される。 図表1-2-3-19 理工系修士の博士進学率 図表1-2-3-20 理工系修士から博士への進学者数  これに対し、欧米諸国では、イノベーションの創出を担う理工系人材の教育の重要性に着目し、米国では理工学分野における研究開発の活性化やそれを担う理数工学系の学生・研究者の育成に積極的に取り組んでいる14。  また、欧米では、経営に関わる教育を理工学教育に取り込み、起業意識を育成するような取組が行われている(図表1-2-3-21)。中でも米国のカリフォルニア大学サン・ディエゴ校の1機関としてスタートした「CONNECT UCSD」は、ハイテク分野及びライフサイエンス分野等の理工系起業家への支援機関として有名であり、1985年の設立以来の支援企業数は800社から900社にも上るといわれている15。 図表1-2-3-21 諸外国における理工系人材への経営教育に関する取組 B 企業内ICT人材の不足 現在、我が国には高度ICT人材16が約43.1万人、それ以外の人材が約55.6万人存在するものの、企業におけるICT人材は、約50万人不足していると推計されている(図表1-2-3-22)。 図表1-2-3-22 国内におけるICT人材数  日本と諸外国を比較すると、米国、EU諸国では、全従業者に占めるICTの技能を有する人材の割合が、それぞれ3.7%、3.0%であるのに対し、我が国では、1.4%となっており、我が国の企業内ICT人材の不足は、深刻な状況であるといえる(図表1-2-3-23)。 図表1-2-3-23 全就業者数に占めるICT人材の割合の国際比較  諸外国では、米国のCIO大学のように、国と産業界が連携して高度ICT人材育成機関を設立し、人材育成に取り組んでいる国が多い。また、オフショア開発拠点を目指すインド、中国等の新興国においても、教育機関と産業界とが連携して、非常に積極的な取組を行っている(図表1-2-3-24)。 図表1-2-3-24 諸外国における高度ICT人材育成機関 C 海外人材受入れの少なさ  日本、米国、イギリスにおけるコンピュータ関連の就労者の2005年における新規受入数は、それぞれ4,097人、11万3,867人、1万5,616人となっている。海外からの人材の受入れについては、各国個別の事情もあり単純な比較はできないが、日本におけるコンピュータ関連の就労者の受入数は、米国やイギリスよりも少なくなっている。さらに、出身国別に見ても、アジア諸国の人材は、日本よりも欧米で働いている人数の方が多くなっている(図表1-2-3-25)。 図表1-2-3-25 日米英における外国人就労者の新規受入数(2005年)  企業が成長していくに当たっては、米国のシリコンバレーや大学に見られるように、国内の人材のみならず、世界から優れた人材を受け入れ、イノベーションを創出する視点が重要である。そのためには、日本の情報関連資格と外国の資格・試験の相互認証による人材の円滑な移動の確保、雇用機会や雇用条件の見直し等の制度面における環境整備、優秀な留学生の受入れや日本での就業につなげるための奨学金制度の整備といった支援制度の充実が必要である。  また、海外の優秀な人材を日本に呼び込むためには、日本の優れた市場環境や研究開発環境を世界的にPRするという視点も重要である。我が国の高度なICTインフラを活用し、オープンなテストベッドとして市場を開放することで、新しい技術者や最先端の技術が、世界各地から集積してくることが想定される。2004年から2007年のICT関係の主要な国際イベントの開催状況を見ると、日本における開催状況は、ドイツや米国、中国等の諸外国に比べて、規模、回数ともに劣っている(図表1-2-3-26)。今後は、我が国においても、ICTに関する大規模見本市・展示会の開催等を積極的に手掛け、人材交流を促進するなどの地道な取組を進めていく必要があるといえる。 図表1-2-3-26 情報通信関連見本市・展示会開催数と規模の国際比較 エ 研究開発環境 (ア)ICT分野における我が国の研究開発費  我が国の研究開発費の総額を見ると、対GDP比、研究者1人当たりとも欧米と比較して見劣りしない水準にあり、我が国の研究開発への取組は国全体としては欧米と比較して見劣りしない水準にあるといえる(図表1-2-3-27)。しかしながら、1997年から2006年までの主要ICTベンダーの売上高研究開発費比率を比較すると、北米、西欧が8%台であるのに対し、我が国は5.6%と約3ポイントもの差がついており、その研究開発への取組は欧米と比較して劣っている。これが我が国ICT分野の国際競争力低下の一因であると考えられる(図表1-2-3-28)。以下では研究開発に関する企業の役割、大学の役割、政府の役割について我が国と諸外国の環境の違いについて考察する。 図表1-2-3-27 研究費の実額比較 図表1-2-3-28 世界の主要ICTベンダーの売上高研究開発費比率 (イ)我が国研究開発環境に関する課題と諸外国の対応 A 大企業とベンチャー企業との関係  一口に研究開発といっても、必要となる資金や人材は少ないものの高い投資リスクを伴うものから、投資リスクは高くはないが多くの資金と豊富な人材が重要なものまで、その形態は様々である。資金や人材の豊富さでは大企業が有利である一方、投資リスクの高い研究開発については、大企業では、投資のための意思決定が難しく、なかなか手がつけられないという状況もしばしば生じる。  米国では、ベンチャー企業がそのような高いリスクを伴う研究開発に挑戦し、成果が出た際には、大企業がその企業を買収するというケースが頻繁に見られ、これが、ICT産業全体としてのイノベーション促進につながっているとの指摘がある。このような一連の流れは、大企業にとっては、研究開発リスクの軽減、また、ベンチャー企業にとっては、投資回収手段の多様化が図られることから、資金供給者であるベンチャーキャピタル等の安心材料となり、更なる投資の促進につながりやすいと、それぞれにとってメリットのある環境を生み出しているといえる。実際、米国のOracle、Cisco、Google、Microsoft、EMCの2005年から2007年における企業買収件数を見ると、それぞれ37社、31社、31社、26社、18社となっており、合計143社である(図表1-2-3-29)。これは、日本で2004年から2006年の3年間に新規上場を果たしたICTベンチャーの企業数よりも多くなっている17。 図表1-2-3-29 米国ICTベンダーによるICTベンチャー企業の買収件数  また、米国では中小企業庁による2006年から「Business Matchmaking18」という施策があり、政府や大企業と中小企業とのマッチングに対する支援も行っている。 B 大学研究成果の活用  産業化には直接つながりにくい基礎研究開発を行うという面では、大学の役割も重要である。大学における研究成果の活用状況を見るために、保有特許の未利用割合を国内全体と大学とで比べると、国内全体では51.6%となっているのに対し、大学等(技術移転機関等の保有特許を含む)では77.6%となっており、大学等の未利用割合が高くなっている(図表1-2-3-30)。 図表1-2-3-30 国内保有特許の利用割合(平成18年)  また、米国と日本における大学からの技術移転による収入を見ると、米国では1,524億円となっているのに対し、日本では11億円と、100倍以上の開きがあり、米国では、大学から企業への技術移転が積極的に行われていることが分かる(図表1-2-3-31)。ただし、日本と米国の差は、技術移転の歴史の長さによる影響も大きい。米国では1970年代ごろから1990年代にかけて、大学での研究成果を特許化しそれを企業へ技術移転するためのTLO(Technology Licensing Organization)といわれる技術移転機関を設置し、技術移転プログラムを推進してきた。これに対し、日本では、「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律(平成10年5月6日法律第52号)」に基づきTLOが初めて承認されたのが1998年(平成10年)であり、その活動は、まだ緒についたばかりであるといえる(図表1-2-3-32)。今後、先行する外国の仕組み等を参考に、一層の取組を加速させる必要があると考えられる。 図表1-2-3-31 TLOのライセンス収入 図表1-2-3-32 日米におけるTLO数の推移 C 政府の研究開発負担  (ア)に述べたとおり、我が国研究開発費の総額を見ると、対GDP比、研究者1人当たりとも、欧米と比較して見劣りしない水準にあり、我が国の研究開発への取組は国全体としては欧米と比較して見劣りしない水準にあるといえる。しかしながら、主体別の負担割合を見ると、民間の負担割合は、日本、米国、欧州においてそれぞれ82.6%、69.1%、55.7%と、我が国では、民間企業の負担割合が高く、政府の負担割合が比較的低くなっている(図表1-2-3-33)。 図表1-2-3-33 研究費の負担割合  また、米国では、2006年に、大統領による「米国競争力イニシアティブ」が発表され、民間による研究開発投資を促進するとともに、NSF、DOE科学局、NISTの予算を10年間で2倍にすることがうたわれているなど、政府のリーダーシップの下、国を挙げて研究開発に積極的に取り組む姿勢がうかがえる。リスクの低い研究開発であれば、民間でもリスクを取って取り組むことが可能であるが、民間が取り組むにはリスクが高いような研究開発については、支援策等を講じることによって、民間が取り組みやすい環境を作り出すことができるといえる。 D 研究開発と知的財産戦略の一体的推進  2007年のWIPO(World Intellectual Property Organization)におけるPCT(Patent Cooperation Treaty)国際出願の申請件数19の上位企業を見ると、1位の松下電器産業を筆頭に、20社中6社を日本企業が占めており、うち5社はICTベンダーである20(図表1-2-3-34)。しかしながら、ICT分野の先端的研究開発課題21について、領域別に2002年から2007年のWIPOへの特許出願件数のシェアを見ると、日本は「高精細映像等の放送」、「応用ネットワーク」、「半導体」、「認識・認証」の分野において10%以上を占めているが、その他の分野におけるシェアは10%以下である(図表1-2-3-35)。全技術分野における日本の特許数のシェアは16.6%22であるが、この値と比較しても、ICT分野の先端領域における特許出願は、全般的に低調であるといえる。先端領域の研究開発は、将来の競争力への影響が大きいと考えられることから、将来のICT分野における日本の競争力の低下が懸念される。 図表1-2-3-34 WIPOへの特許出願件数の上位企業(2007年) 図表1-2-3-35 ICT関連のWIPOへの特許出願件数の地域別シェア(2002〜2007年)  2002年から2007年のIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)における論文数のシェアを見ると、日本は「高精細映像等の放送」、「認識・認証」、「高速伝送・ルーティング」といった技術分野において20%以上を占めている(図表1-2-3-36)。さらに、国内専門家による技術力に対する評価23では、「高精細映像等の放送」、「高速伝送・ルーティング」、「移動体通信」といった分野で日本が最も高く評価されている(図表1-2-3-37)。 図表1-2-3-36 ICT関連のIEEEにおける論文発表数の地域別シェア(2002〜2007年) 図表1-2-3-37 ICT分野で最も技術力の高い地域に関する専門家評価  一方、北米は、「高精細映像等の放送」以外の分野で特許数の占有率がいずれも最も高くなっており、専門家による技術力評価においても「次世代無線・応用」、「ブロードバンド無線」、「ネットワーク制御」、「ネットワークセキュリティ」、「応用ネットワーク」、「インターネット・ウェブサービス」、「情報の蓄積・検索・解析」、「半導体」、「認識・認証」といった分野で最も評価が高くなっている。  日本と北米について論文数シェアと特許数シェアとの関係を見てみると、日本は多くの分野において特許数のシェアよりも論文数のシェアの方が高い傾向にあるが、北米においては特許数のシェアの方が論文数のシェアよりも高い傾向にある(図表1-2-3-38、図表1-2-3-39)。 図表1-2-3-38 日本のIEEE論文発表数シェアとWIPO特許出願数シェアの関係 図表1-2-3-39 北米のIEEE論文発表数シェアとWIPO特許出願数シェアの関係  研究開発成果をグローバル市場における製品・サービスの提供につなげ、利益を得るためには、研究開発と知的財産戦略の一体的な取組が不可欠である。今後、より一層の知的財産戦略の強化が必要と考えられる。 13 社団法人経済同友会「ベンチャー企業による市場の活性化と個人再生」(2007年4月) 14 2007年8月には「The America COMPETES ACT(通称)」が法律化され、数学・科学分野の教育強化に言及されている 15 関西TLO資料 16 ICT人材のうち、マネジメント系スキル及び技術系スキルが中級以上かつ少なくとも片方のスキルが上級の人材を高度人材と定義している 17 日本の2004年、2005年、2006年の上場ICTベンチャー企業数は、それぞれ28、34、42社で、合計104社(平成19年版情報通信白書) 18 米国各地で開催されるイベントやオンラインでの情報提供により、政府や大企業からの調達案件の紹介等を行う。HP、American Airline、FedEX等の大企業がスポンサーとなっている 19 以下、WIPOへの特許出願件数又は特許出願件数と略記 20 上位20社の出願件数に占める日本企業の特許出願数シェアは29.4% 21 調査対象とした技術課題は付注7を参照 22 WIPO資料 23 ICT分野の国内専門家31名による評価