(5)情報に対する考え方とメディアの評価  ユビキタスネット社会においては、いつでも、どこでも、誰でも、何でもネットワークに簡単につながり、一方的に流れてくる情報を受けるだけでなく、自ら必要な情報を探し出したり、自分で情報を発信することができる。情報の流れは非常に複雑化し、情報を伝達するメディアの態様も多様化が進む。そして、ユビキタスネット社会の進展により、人々の「情報」に対する価値観や意識にも大きな変化が生じ、その変化がメディアの多様化に一層拍車をかけると考えられる。  そこで、以下では、価値観や意識等、人々の「情報」に対する考え方について、世代間の差異を明らかにすることにより、それが(4)で示したメディアの評価に対して、どのような影響を及ぼしているかを考察する(図表1-3-2-6)。 図表1-3-2-6 情報に対する考え方(各項目について、「当てはまる」と回答した人の割合) ア 情報全般に対しての考え方  情報に対しての考え方について、「情報量が多いほうが良い(以下「多量性選好」という。)」、「情報が正確であるほうが良い(以下「正確性選好」という。)」、「いち早く情報を入手したい(以下「速報性選好」という。)」の三つの点について、それぞれ自分の考えに当てはまるかを尋ねたところ、すべての世代において正確性選好に対する回答が最も多かった。(4)で見たとおり、正確性に対しては、すべての世代で新聞を最も高く評価していることと併せると、正確な情報の提供に対する新聞の役割には、引き続き非常に高い期待が集まると考えられる。  年代別に見ると、多量性選好、正確性選好に対する回答については、若年層で最も多く、それぞれ61.2%、98.0%であった。多量性について、(4)の回答結果では、若年層はパソコンに最も高い評価を与えている。さらに、(1)の回答結果から、若年層では他の世代と比較してパソコンの利用頻度が多く、1日当たり平均時間も長くなっている。このことは、若年層がパソコンを多用する背景の一つとして、情報量が多いほうが良いという考え方があることを裏付ける結果ではないかと考えられる。また、速報性選好に対する回答については、若年層で最も少なく55.1%、家庭生活者層で最も多く61.5%であった。 イ 情報の探求に対しての考え方  情報の探求に対しての考え方について、「知りたいことは、自分の納得がいくまで探す」、「人が知らないことは知りたいと思う」との回答は、若年層で最も多く、それぞれ63.3%、36.7%であった。また、「話題になっていることは、知りたいと思う」の回答についても59.2%と家庭生活者層に次いで多いことから、若年層は情報に対する探求心が強い傾向にあることが分かる。既に述べたとおり、若年層では、パソコンや携帯電話の情報の多量性に対する評価が高くなっているが、これは、これらのメディアがより多くの情報の中から必要な情報を探すことのできる特性を有していることから、同世代の情報に対する強い探究心を充足させている結果であると考えることができる。 ウ 情報リテラシーの有無  情報リテラシーについて、「多くの情報の中から、確かな情報や必要な情報を選ぶことができる」、「企業が発信している情報は、率直には信用しない」、「個人が発信している情報は、率直には信用しない」の三つの点について、それぞれ自分に当てはまるかを尋ねた。「多くの情報の中から、確かな情報や必要な情報を選ぶことができる」の回答は、勤労者層で最も多く、次いで、若年層、高齢者層、家庭生活者層の順になっているが、世代間で大きな差は見られなかった。一方、「企業が発信している情報は、率直には信用しない」、「個人が発信している情報は、率直には信用しない」の回答は、勤労者層、家庭生活者層、高齢者層では、企業が発信する情報と比較して、個人が発信する情報に対する信用が低い傾向にあるが、これに対し、若年層では、両者に大きな差はなく、かつ、企業、個人を問わず、「情報は、率直には信用しない」という回答が最も少ないという結果となっている。これは、若年層が、他の世代と比べて、インターネットや携帯サイト等、個人が情報を発信するメディアに対する接触率が高く、また、評価も高いことと関連があると考えることができる。 エ 情報の受発信に対する責任  最後に、情報の受発信に対する責任についての考えについて尋ねた。ユビキタスネットワークが進展し、誰もが簡単に情報を受信したり発信したりすることができるようになったことにより、ネットワーク上で流通する多くの情報は、いわば玉石混交の状態にあるといえる。そこで、情報の真偽を判断する責任について、発信者側、受信者側いずれにあるかを尋ねたところ、全体的には、「発信者責任を重視すべき」との回答が多かった。ただし、考え方については、世代間で差があり、その回答をした割合は、若年層で57.1%と最も少なく、高齢者層で67.7%と最も多くなっている。(1)で見たとおり、若年層ではパソコンや携帯電話、高齢者層ではテレビ、新聞、ラジオの利用がそれぞれ多くなっており、能動的なメディアを多用する世代にあっては、「発信者責任を重視すべき」との回答が比較的少ない一方、受動的なメディアを多用する世代にあっては、「発信者責任を重視すべき」との回答が比較的多いと考えることができる。