コラム インターネットを利用した消費者と企業の橋渡しビジネス「ドロップシッピング」  「ドロップシッピング」と呼ばれる新たな電子商取引が、日本でも拡大の兆しを見せている。ドロップシッピングとは、直訳すると「商品直送」であり、消費者が、一般のホームページ所有者等がインターネット上で開設した店舗(ネットショップ)を通じて商品を注文すると、注文内容が自動的にメーカー等の商品提供者に届き、そこから商品が消費者に直送される仕組みのことをいう(図表)。 図表 ドロップシッピングとネットショップの比較  このような仕組みを利用してネットショップを開設する際には、ドロップシッピングサービスプロバイダと呼ばれる、商品の受発注や決済のためのプラットフォームを提供する事業者のサービスを利用するのが一般的であり、日本においても、ドロップシッピングサービスの利用が徐々に増えつつある。例えば、ドロップシッピングサービスプロバイダの大手である株式会社もしもが運営する「もしもドロップシッピング」は、サービス開始後の約1年半で、同社のサービスを利用する登録加盟店数が13万店を突破するなど、新たな電子商取引の形として広がりを見せている。  ドロップシッピング拡大の要因の一つとして、一般のホームページ所有者でも在庫リスクなしで店舗運営が可能であることが挙げられる。ドロップシッピングは、従来型のネットショップ運営と異なり自ら商品の仕入れや発送を行う必要がないため、通常の電子商取引に比べて圧倒的に手間がかからないことが大きな特長である。  また、近年急速に普及したネットビジネスの一つであるアフィリエイトでは、販売する商品の価格を変更することができず、その報酬額は、いわば「紹介料」のような形で商品売上高の数%程度にとどまるといわれているが、ドロップシッピングでは、ネットショップを開設して商品を販売する売り手が自由に価格を設定できる。つまり、商品が売れた場合には、販売価格から原価を差し引いた粗利を得ることができるため、大きな利幅を稼ぐことも可能となる。  さらに、ドロップシッピングでは、既存商品を選んで販売するケースと、売り手のオリジナル商品を販売するケースとがあり、後者の場合には、例えば自らデザインしたTシャツ等のオリジナル商品を販売することも可能となる。したがって、従来、仕入れ等のためのまとまった資金を持たないために起業することができなかった個人の起業を促すことも期待される。  また、商品を提供する側からすれば、インターネット上に自分の商品を取り扱う店舗が増えれば、売上増につながることが期待される。これは、1回当たりの発注量が小さくても、多くの販路を持てば大きな利益につながる可能性があるという点で、「ロングテール」の発想に近いものといえる。つまり、ドロップシッピングのビジネスモデルは、豊富な資金力がなくても多様で小規模な需要にも対応することができ、今後はこれまで需要が小さかった各地の特産品や伝統的な商品等の販路拡大に寄与することも期待されるなど、インターネットを利用して消費者と企業の橋渡しを行う新たなビジネスモデルとして、今後の動向が注目される。