(3)電気通信事業者間等の紛争処理 ア 概況 (ア)電気通信事業紛争処理委員会の機能等  電気通信事業紛争処理委員会1(以下「委員会」という。)は、電気通信事業者間の紛争を処理する専門組織として、平成13年11月30日に創設された。平成19年11月30日に総務大臣により委員5名及び特別委員8名が任命され、3期目の活動を開始している。  委員会は、[1]あっせん及び仲裁手続の実施、[2]総務大臣の命令及び裁定等について諮問を受けて審議・答申を行うこと、[3]その権限に属せられた事項に関しルール整備等について総務大臣に必要な勧告を行うという三つの機能を有している(図表3-2-1-3)。 図表3-2-1-3 電気通信事業紛争処理委員会の機能の概要  また、委員会事務局に「電気通信事業者」相談窓口を設けて、接続その他電気通信事業者間のトラブル等に関する問い合わせ・相談等に対応している。 (イ)無線局の開設等に係るあっせん・仲裁制度の開始  周波数がひっ迫している中で、無線局の開設等に当たり、無線局の開設希望者等と既存無線局の免許人等との間の混信その他の妨害を防止するための協議が、1年以上の長期にわたる事例も生じている。そこで、これらの協議が円滑に進むようにするため、平成20年4月1日から委員会は、無線局の開設等に係るあっせん・仲裁手続を開始した。 イ 電気通信事業紛争処理委員会が果たしている役割  委員会は、これまで、大きく四つの役割を果たしてきた。 [1] 専門性を生かした迅速な紛争の解決   あっせん事案では、これまで48件の事案を扱い、平均して約1箇月半で処理を終え、約6割の事案を解決している。 [2] 紛争の発生の未然防止   「電気通信事業者」相談窓口の助言により本格的に紛争化する前段階で解決した事例もある。また、過去の事例を委員会のウェブサイト等で積極的に公開し、類似の紛争防止に努めている。 [3] セイフティネットの機能   電気通信事業者は他事業者との協議に当たり、紛争化した場合であっても、委員会という公正中立な第三者機関の場で自己の考え方を対等に主張できる機会が保障されている。 [4] 総務大臣への勧告を通じた競争ルールの改善   勧告を通じ、我が国のブロードバンドサービスの競争促進や固定発携帯電話料金の低廉化等にも貢献してきた。 ウ 電気通信事業紛争処理委員会の機能強化に向けた取組  委員会では、MVNOやNGN等の電気通信事業の展開を踏まえ、新たな紛争に適切に対応していくため、平成19年度に次のとおり委員会の機能強化に向けた取組を行った。 (ア)紛争処理に関係する情報収集等の強化  最近の競争政策等に関する有識者及び政策担当者からのヒアリングや視察、「電気通信の現状」、「電気通信紛争処理用語集」の基礎資料の整備・公開を行った。 (イ)委員会の認知度・利便性の向上  電気通信事業紛争処理マニュアルの改訂、広報用パンフレットの作成・配布、委員会ウェブサイトの刷新(図表3-2-1-4)、電気通信事業者に対するヒアリング及びアンケート等を実施した。 図表3-2-1-4 電気通信事業紛争処理委員会ウェブサイト (ウ)委員会の知見の情報発信の強化  平成19年11月22日、接続料金の算定の在り方等、MVNOとMNOとの間の円滑な協議に資する措置について、総務大臣に勧告を行った。 (エ)紛争処理機能の強化・制度整備への対応  平成20年4月1日に電気通信事業紛争処理委員会運営規程の改正、「無線局紛争処理マニュアル」を公表した。 エ 紛争処理等の状況 (ア)処理件数  委員会は、平成19年度末までに、あっせん事案を48件、仲裁事案を3件、諮問・答申を6件、勧告を3件実施している(図表3-2-1-5)。 図表3-2-1-5 紛争処理等の年度別件数 (イ)平成19年度中における紛争処理の状況 A あっせん・仲裁 (A)あっせん  あっせんは、専門家3名程度から成るあっせん委員が両当事者の間に入り、相互の歩み寄りにより、紛争の迅速な解決を図るものである。委員会は、平成19年度に2件のあっせん申請に係る事件の処理を行った。両事件とも、相手方からあっせんに応ずる考えはない旨の通知を受けたため、電気通信事業法第154条第2項等の規定に基づき、あっせんをしないものとした。 (B)仲裁  仲裁は、委員会の仲裁委員(3名)が仲裁判断を行うことにより紛争の解決を図る制度である。平成19年度中の仲裁申請に係る事件はなかった。 B 総務大臣への答申  平成19年度には、総務大臣から、MVNOとMNO間の接続に関する裁定に係る諮問1件があり、委員会は審議を行い、総務大臣への答申を行った。 C 総務大臣への勧告  委員会は、平成19年度に総務大臣への勧告を1件行った。この勧告は、上記B(総務大臣への答申)の答申と併せて行った。 D 「電気通信事業者」相談窓口における相談等  平成19年度に34件の相談、問い合わせ等を受けた。相談内容ごとの受付件数は、接続に関する費用負担が24件と7割を占めている。 1 関連サイト:電気通信事業紛争処理委員会(http://www.soumu.go.jp/hunso/index.html)