(2)放送の高度化の推進 ア 地上デジタル放送の推進 (ア)地上デジタル放送の現状  地上デジタル放送は、平成15年12月に関東・中京・近畿の三大都市圏において放送が開始され、その後、順次放送エリアが拡大され、平成18年12月には、全県庁所在地等で放送が開始されている。平成20年3月末現在、約4,360万世帯(全世帯の約93%)において視聴可能となっている(図表3-2-2-1)。 図表3-2-2-1 地上デジタル放送の普及目標と現況  また、地上デジタル放送対応受信機の出荷台数は、平成20年3月末時点で3,370万台となっている。  現在の地上アナログテレビジョン放送については、平成23年7月24日までとされており、それまでにデジタル化を完了する必要があることから、総務省では、以下のように様々な取組を行っているところである。 (イ)地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割の検討  幅広い分野における地上デジタル放送の利活用の在り方や、平成23年までのデジタル放送への全面移行の確実な実現に向けた課題と解決方策について検討するため、総務省は、平成16年1月に「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」について情報通信審議会に諮問し、同審議会から、[1]中間答申(平成16年7月)、[2]第2次中間答申(平成17年7月)、[3]第3次中間答申(平成18年8月)を経て、平成19年8月に第4次中間答申がなされている。  この第4次中間答申では、送信側の課題として中継局の整備と補完措置を、受信側の課題として受信機の普及と利便性の向上、共聴施設の改修が挙げられ、それぞれについて提言が行われているほか、地上デジタル放送の普及促進のための周知広報や公共分野への利活用、アナログ放送の終了に当たっての課題について提言が行われており、総務省としては、これに基づいて、必要な施策の一層の展開を図っていくこととしている。 (ウ)地上デジタル放送推進のための体制整備  平成15年5月に、地上デジタル放送の普及に関し、分野横断的かつ国民運動的に推進を図るための組織として、放送事業者・メーカー・販売店・消費者団体・地方公共団体・マスコミ・経済団体等幅広い分野のトップリーダー及び総務省等の関係省庁からなる「地上デジタル推進全国会議」が設置された。平成19年11月、同会議において、「デジタル放送推進のための行動計画(第8次)」が策定され、関係者における今後の取り組むべき課題が明確にされ、総務省では、放送事業者、メーカーその他関係機関と連携しつつ、計画の具体化を図り、平成23年のアナログ放送終了、デジタル放送への完全移行に取り組んでいくこととしている。  また、総務省として総合的・計画的な取組の推進を図ることを目的として平成19年9月に地上デジタル放送総合対策本部を設置し、さらに関係省庁の緊密な連携を図り、デジタル放送への円滑な移行を推進することを目的として、デジタル放送への移行完了のための関係省庁連絡会議が内閣官房に設置された。 (エ)地上デジタル放送施設の整備に対する支援措置  地上デジタル放送のための施設整備を促進するため、「高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法」(平成11年法律第63号)に基づく実施計画の認定を受けた放送事業者(平成18年末までに127社認定)に対し、金融及び税制上の支援を行っているほか、デジタル中継局や視聴者の負担が高額になる一部の辺地共聴施設についても、平成19年度からその改修経費の一定割合を国庫から補助することとしている(図表3-2-2-2)。 図表3-2-2-2 支援措置の主な内容 (オ)携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する検討  平成19年6月、情報通信審議会において、2011年の地上テレビジョン放送のデジタル化による空き周波数帯の有効利用のための技術的条件(「VHF/UHF帯における電波の有効利用のための技術的条件」)について一部答申が取りまとめられ、携帯端末向けマルチメディア放送に供するための周波数帯域が提言された。これを踏まえ、総務省では、携帯端末向けマルチメディア放送の事業化に向けたビジネスモデルや社会的役割の在り方、それを踏まえた制度的・技術的課題についての検討を行い、平成23年以降速やかにサービスが提供されるよう制度環境の整備に資することを目的として、平成19年8月から「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」を開催している。  同懇談会では、[1]マルチメディア放送の海外動向、[2]マルチメディア放送のビジネスモデルや市場競争の在り方、期待される社会的役割、[3]事業主体、サービス形態、放送方式及びネットワークの在り方等、制度的・技術的課題に関する検討を行っているところである。 イ 衛星放送政策の展開 (ア)衛星放送の現状  我が国の衛星放送については、多彩な専門放送サービスの提供、テレビジョン放送の高精細度化をはじめ、放送の高機能化に先べんを付けてきたところであり、BSデジタルテレビ放送受信機出荷台数(累計)が約3,493万台(平成20年3月末現在)、CSデジタル放送の加入件数が約468万件(同年同月末現在)となった。CSデジタル放送のハイビジョン化も進みつつあり、また、平成20年4月からは、いわゆるプラットフォーム事業者の業務の適正かつ確実な運営の確保に資するため、有料放送管理業務が制度化されるなど、今後、ますますの発展が期待されているところである。 (イ)BS放送のデジタル化の推進  現在、我が国には、BS放送用周波数として、12周波数が割り当てられているが、これらのうち現在使用されているのは8周波数(BSデジタル放送用5、BSアナログ放送用3)であり、残りの4周波数については、平成19年7月の電波監理審議会答申を受け、平成23年以降、BSデジタル放送のために使用を開始することが決定された。また、BSアナログ放送用の上記3周波数についても、放送普及基本計画等において平成23年7月24日までに終了することとし、終了後はBSデジタル放送のために使用することが決定されたところである。  そして、これら合計7周波数の新たなBSデジタル放送の受託放送事業者として、平成19年11月、株式会社放送衛星システムに対し、予備免許が交付されたところであり、今後、総務省では、委託放送事業者の担い手の決定に向け、手続を進めていくこととしている。 (ウ)映像国際放送の強化  近年のグローバル化の進展を踏まえ、対外情報発信力の強化が重要な課題となっている。「通信・放送の在り方に関する政府与党合意」においても、外国人向けの映像国際放送の早期開始が提言されており、これを受けて、総務省では、平成18年8月、情報通信審議会に対し、「外国人向けの映像による国際放送」の在り方とその推進方策を諮問し、平成19年8月に答申を受けた(図表3-2-2-3)。 図表3-2-2-3「外国人向けの映像による国際放送」の在り方とその推進方策答申の概要  同答申においては、[1]映像国際放送強化の具体的方向性、[2]映像国際放送の事業主体及び財源の在り方等について提言がなされ、総務省では、放送法改正により、番組制作等の新法人への委託等の新制度を導入するとともに、投入国費の大幅な拡充(平成20年度:15.2億円)等の施策を講じたところである。  平成20年4月の改正法施行後は、NHKからの業務委託を受ける子会社が設立され、平成21年初頭の外国人向け新放送の開始を目指した取組が進められている。 (エ)NHKの衛星放送の保有チャンネル数の在り方の検討  平成18年6月に取りまとめられた「通信・放送の在り方に関する政府与党合意」において、NHKの保有チャンネルの削減について、「難視聴解消のためのチャンネル以外の衛星放送を対象に、削減後のチャンネルがこれまで以上に有効活用されるよう、十分詰めた検討を行う」こととされたことを受け、総務省では、平成19年8月から、公共放送の保有チャンネル数等に係る内外の状況を踏まえつつ、NHKの衛星放送の保有チャンネル数の在り方について検討することを目的に、「NHKの衛星放送の保有チャンネル数の在り方に関する研究会」を開催し、平成20年6月に最終報告書を取りまとめた。同報告書では、現在の3チャンネルを、平成23年以降、ハイビジョン放送2チャンネルに再編成するという考え方について、更なる検討は必要であるが、直ちに合理性を欠くものではないとした上で、NHKにおいてチャンネル再編成案のより一層の具体化を行うことを求めている。今後、総務省において、最終的な結論に向けて検討が進められる予定である。 ウ ケーブルテレビの高度化 (ア)ケーブルテレビのデジタル化の現状  我が国のケーブルテレビは、発足から50年が経過し、最近では多チャンネル放送、地域に密着したコミュニティチャンネルに加え、インターネットサービス、IP電話等の通信サービスの提供にも活用されており、ケーブルテレビは地域の総合情報通信基盤に成長しているところである。  ケーブルテレビのデジタル化も、地上デジタル放送の放送区域の拡大に伴って進展してきており、ケーブルテレビによる地上デジタル放送視聴可能世帯数(平成19年9月末現在)は、約1,980万世帯となっている(図表3-2-2-4)。 (イ)有線放送による再送信に関する検討  近年、放送のデジタル化の進展や大容量ネットワークの広域化等の有線放送を取り巻く環境の変化により、今後の有線放送による放送の再送信の在り方が改めて問われており、また、平成19年8月、情報通信審議会からも、再送信同意に関する裁定申請に対する答申において、再送信制度の在り方について幅広く検証すべき旨の指摘があったところである。  このような状況を受けて、総務省では、有線放送による放送の再送信の現状を把握し、課題を整理するとともに、今後のあるべき方策について検討することを目的として、平成19年9月から「有線放送による放送の再送信に関する研究会」を開催し、平成20年3月に最終取りまとめを公表した。  最終とりまとめでは、有線テレビジョン放送や受信者を取り巻く環境の変化を踏まえ、有線テレビジョン放送法に基づく裁定の基準の見直し等とともに、有線テレビジョン放送事業者と放送事業者等の再送信の同意に係る協議を促進するため、当該協議に係る手続の具体的内容及び有線テレビジョン放送法第13条第5項の「正当な理由」の解釈について、総務省がガイドラインを公表することが適当とされた。これを受け、総務省では、「有線テレビジョン放送事業者による放送事業者等の放送等の再送信の同意に係る協議手続及び裁定における「正当な理由」の解釈に関するガイドライン」を策定し、平成20年4月に公表した。 図表3-2-2-4 ケーブルテレビによる地上デジタル放送の普及目標