3 電波政策の展開 (1)電波政策概況 ア 電波開放戦略の推進  今日、我が国では、電波利用は質的にも量的にも著しく拡大しており、さらに、電波に対する国民のニーズは、ICT分野における技術革新を背景にますます広帯域化・多様化する方向にある。  このような状況を受け、総務省では、平成15年7月の答申において示された「電波政策ビジョン」を基に、ユビキタスネット社会構築の鍵となる「ワイヤレスブロードバンドサービス」の実現に向け、大胆に電波を開放するための仕組みを作り、新たな分野へ周波数を割り当てていくための政策として「電波開放戦略」を推進している(図表3-2-3-1)。 図表3-2-3-1 電波開放戦略の推進 (ア)周波数再編の推進  世界最先端のワイヤレスブロードバンド環境の構築には、その中核を担う移動通信システムや無線アクセスシステム等の導入に必要な周波数を迅速かつ円滑に確保する必要があることから、総務省では、周波数の再編を円滑かつ着実にフォローアップするための行動計画として、「周波数再編アクションプラン」を平成16年8月に策定しており、毎年度実施する電波の利用状況調査の評価結果及び電波利用環境の変化等を踏まえ、逐次見直しを行っている。  平成18年度の評価結果(平成19年3月公表)を受けて平成19年11月に改定したアクションプランでは、以下の見直しを行っている。 [1] 平成18年度電波の利用状況調査(3.4GHz超の周波数帯を対象)の評価結果を踏まえた、3.4〜4.4GHz帯、4.4〜5.85GHz帯、13.25〜21.2GHz帯及び36GHz超の周波数区分のアクションプラン見直し [2] 平成15年度電波の利用状況調査(3.4GHz超の周波数帯を対象)、平成16年度電波の利用状況調査(770MHz超3.4GHz以下の周波数帯を対象)及び平成17年度電波の利用状況調査(770MHz以下の周波数帯を対象)の評価結果に基づく規定のアクションプランについて、その進捗状況を踏まえ現行化を実施 (イ)地上テレビジョン放送のデジタル化完了後の空き周波数の有効利用方策の検討  総務省では、平成23年7月24日に地上アナログテレビジョン放送を停波し、放送のデジタル化により空き周波数帯となるVHF帯及びUHF帯を有効かつ効率的に再配分することにより、今後拡大する電波利用システムへの需要増に対応するため、平成18年3月、情報通信審議会に「電波の有効利用のための技術的条件」を諮問した。平成19年6月に同審議会から「VHF/UHF帯における電波の有効利用のための技術的条件」に関して答申を受け、その答申に基づき平成19年9月に電波監理審議会に対して周波数割当計画の一部変更案について諮問し、同年11月に答申が得られたことから、同年12月に周波数割当計画の一部変更が公布・施行となった。  総務省では、今後、具体的な技術的条件の検討や制度整備を行うこととしている。 イ 電波利用料制度の見直し  総務省では、平成20年度から22年度の期間に係る電波利用料制度の在り方について検討するため、平成19年4月から「電波利用料制度に関する研究会」を開催し、同年7月、同研究会は、電波利用料の使途や料額の見直し等に関する提言を取りまとめた。  総務省では、この提言や、前回の電波利用料制度見直しにおける第163回国会での附帯決議等を踏まえ、次の措置を内容とする「電波法の一部を改正する法律案」を第169回国会に提出したところである。 (ア)電波利用料の使途の拡大 [1] 携帯電話や地上デジタル放送等に係る無線システム普及支援事業の補助対象等の拡大 [2] 無線通信分野での国際標準化に関する国際機関等との連絡調整事務の追加 (イ)電波利用料の料額の見直し [1] 平成20年度から22年度に見込まれる費用の試算に基づき、料額について所要の見直し [2] 地上テレビジョン放送に係る料額について、使用する周波数帯域幅に応じた水準へ段階的に引上げ [3] 国等の無線局について、一定の要件に該当するものを除き、電波利用料を徴収 (ウ)納付委託制度の整備  コンビニエンスストア等で電波利用料の納付を可能とする規定を整備 ウ 電波利用をより迅速かつ柔軟に行うための手続の創設  「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」の検討の中で、通信・放送共通のインフラである電波の利用をより迅速かつ柔軟に行うための手続の創設が平成19年1月に提言された(報告書「通信・放送の新展開に対応した電波法制の在り方 ワイヤレス・イノベーションの加速に向けて」)。  これを踏まえ、次の措置を内容とする電波法及び電気通信事業法の一部改正が行われ、平成20年4月1日(下記[4]については、平成19年12月28日)から施行された。 [1] 実験無線局制度の拡大 [2] 無線局の開設等に係るあっせん・仲裁制度の導入 [3] 無線局の運用者の変更制度の導入 [4] 電波監理審議会への諮問対象の見直し  また、免許人の立入りが容易ではない高層ビル、マンション、住宅内や地下街等の携帯電話の不感エリアの解消のために、近年、フェムトセル方式の超小型基地局が開発されている。総務省では、このような携帯電話の超小型基地局等について、ビル管理者や利用者等に復旧や移設のための運用を行わせることを可能とする制度を創設する「電波法の一部を改正する法律案」を第169回国会に提出したところである。 図表3-2-3-2 周波数割当計画の変更