(3)電波利用環境の整備 ア 電波の人体・医療機器に与える影響に関する取組  総務省では、電波の人体に対する影響に関し、人体の防護のため、電波の人体への影響に関する調査を行うとともに、この調査結果と国際ガイドライン1を参考に、我が国に適用される電波の安全基準を定めている。さらに、平成9年度から18年度までの10年間にわたり、「生体電磁環境研究推進委員会」を開催し、電波の人体への影響を科学的に解明するための研究を推進するとともに、平成19年4月に、当該委員会の活動の成果について報告書を取りまとめ、公表した。この報告書において、現時点では電波の安全基準を超えない強さの電波により、非熱効果を含めて健康に悪影響を及ぼすという確固たる証拠は認められないという考えを示しているとともに、今後も科学的データの信頼性の向上を図り、電波の安全性評価に関する研究を進めていくことが重要であるとしていることを踏まえ、現在も引き続き、電波の安全性評価に関する研究を進めている。  一方、近年、携帯電話サービスをはじめとする電波利用の拡大等により、電波利用が急速に発展し、日常生活に必要不可欠なものとなってきており、心臓ペースメーカー等の植え込み型医療機器への影響に対する関心が高まってきていることから、総務省は、平成12年度から「電波の医療機器等への影響に関する調査」を実施している。平成19年度は、1.7GHz帯W-CDMA方式及び2GHz帯CDMA方式の携帯電話端末が植え込み型心臓ペースメーカー等の植え込み型医療機器に与える影響に関する調査を実施し、その結果、どちらの携帯電話端末も「各種電波利用機器の電波が植込み型医療用機器へ及ぼす影響を防止するための指針」(平成17年8月制定、平成19年4月改訂)の範囲内であれば特段問題は無いことを確認した。 イ 不要電波対策  各種電気・電子機器等の普及に伴い、無線利用が各種機器・設備から発せられる不要電波による電磁的な妨害を受けることが大きな問題となっている。  総務省では、情報通信審議会の中に、CISPR委員会を設置し、CISPR(国際無線障害特別委員会)における国際規格の審議に寄与するとともに、国内における規格化の審議を行いEMC(電磁両立性)規格を策定している。 ウ 適切な電波の監視・監理及び正しい無線局運用の徹底 (ア)重要無線通信妨害への対応  近年、電波利用の拡大とともに、電波の不適正な利用も増大し、電波利用に与える障害が多発している。  このような状況を受け、総務省では、重要無線通信と位置付けられている電気通信事業用、放送業務用、人命・財産の保護用、治安維持用、気象業務用、電気事業用及び鉄道事業用の無線通信に対して、不法無線局等による電波障害が発生した場合には、これを排除するため直ちに不法無線局の探査等を行っている。 (イ)不法・違法無線局への対応  総務省では、電波利用環境の維持に向けて、免許が必要な無線局でありながら免許を取得しないで開設、運用している不法無線局に対しては、これを探査し、告発するなど必要な措置を講じているほか、合法な無線局に対しては、発射する電波の質や無線局の運用が電波法令に適合しているか否かを監査し、違反があった無線局に対しては是正措置等を講じている。 (ウ)電波利用環境保護のための周知・啓発活動  近年、不法無線局に使用されるおそれのある無線機が、一般国民にとって身近な販売店及びインターネットオークション等において流通・販売され、無線通信に妨害を与えるケースが増加していることから、平成18年度から、無線利用機器を販売していると考えられる販売業者団体20社・団体に対して技術基準に適合した無線機器を取り扱うよう周知・啓発するとともに、インターネットバナー広告等を活用し、電波利用には免許が必要であること、無線機には技適マークが必要であること等の周知広告を実施している。 1 国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)等の国際機関が策定しており、世界保健機関(WHO)では、この国際ガイドライン以下の電波により、健康に悪影響が発生する証拠はない旨の見解を示している