10 ICT分野における地球温暖化問題への対応  近年、地球温暖化問題が深刻さを増す中で、ICTは安全・安心な社会の実現や、利便性の向上、地域経済の活性化に大きく寄与するとともに、業務の効率化を通じて、地球温暖化問題への取組にも貢献できると期待されているが、その一方で、ICT機器の増加・高機能化等による電力消費量の増加に伴う地球温暖化への配慮が求められているところである。  このような状況を踏まえ、総務省では、平成19年9月から地球温暖化問題への対応に資するICT政策について検討することを目的として、「地球温暖化問題への対応に向けたICT政策に関する研究会」を開催し、平成20年4月に報告書を取りまとめた。  報告書では、ICTと地球温暖化との関係を定量的に把握するため、我が国における2012年までのICT使用によるCO2排出量(主に電力消費量の伸び)とICT利活用によるCO2排出削減効果について推計を行った。  まず、ICT使用によるCO2排出については、2012年における我が国のICT分野全体の電力消費量は730億kWh、これにより3,000万トンのCO2が排出されると推計された。  次に、七つの分野及び19のICT利活用シーンを評価対象として推計した2012年度(平成24年度)のCO2排出削減量は、6,800万トンであり、差し引き3,800万トンのCO2の排出が削減されるとしている(図表3-4-10-1)。これは1990年度の日本のCO2総排出量の3.0%に相当し、ICTには非常に大きな潜在力があると考えられる。 図表3-4-10-1 ICT分野全体のCO2排出量とICT利活用によるCO2削減効果  また、ICTによる更なるCO2排出削減方策として、データセンタ、ASP・SaaSに関する環境配慮対策や、情報管理の省エネ化の推進のほか、ICTによる環境に配慮した取組の促進として、 [1] 企業・家庭に対するICT利活用の促進 [2] 社会システムのICT化の促進 [3] CO2排出削減効果の簡易な評価手法の確立 [4] 普及啓発の推進 等の取組が有効であると指摘されている。  本研究会の提言として、第一に「経済成長と利便性の向上を追求しつつ地球温暖化問題へ積極的に貢献できるICT」というコンセプトを国内外に積極的に発信し、その認知度の向上を目指すべきことが挙げられている。  また、ICTによるCO2排出削減効果の評価手法を国際的なレベルで確立し、標準化を進めること、ICT利活用によるCO2排出削減を発展途上国のCDM(Clean Development Mechanism)へ活用することも挙げられ、そのような取組についても検討を開始すべきとされた。  総務省では、平成20年4月15日から16日までの間、京都にて国際電気通信連合(ITU)と共催で、「ICTと気候変動」に関するシンポジウムを開催した。本シンポジウムには、総務省から本研究会の結果をインプットし、ITUにおいて、今後ICTによるCO2排出削減効果の評価手法の標準化活動を行うこと等を盛り込んだ議長報告が取りまとめられた。今後は、ITUにおいて、産業界等からも幅広く参加を求めて検討グループを設立し、標準化策定作業が開始される予定である。  総務省としては、これらの提言を踏まえ、ICTによるCO2排出削減効果について実効ある評価を行うための国際的な指標の確立に向け、ITU等での国際的な基準作りに貢献するとともに、国民や企業、家庭における環境に配慮した取組を一層促進するための支援策等について検討を進める予定である。