1 依然として残る情報格差 ●情報通信機器・サービスの面で日本は普及率に遅れ  情報通信機器・サービスの普及率の国際比較を確認しておこう。前出の7か国比較で用いたインターネット2、ブロードバンド、携帯電話に加え、パソコンを含めたそれぞれの普及率を世界の国々と比較すると、日本の順位は、それぞれ順に18位、32位、76位3、16位となっている。しかし、普及率データで単純に比較すると、小国に有利となったり、国によってはデータの信頼性が低い可能性もあるため、OECD諸国に絞って普及率を比較したものが図表3-1-1-1である。日本の順位はインターネットで14位、ブロードバンドで17位、携帯電話で26位、パソコンで12位となる。OECD諸国との比較でみても、情報通信機器やサービスの国民・企業への普及という意味では、日本はやや遅れていると評価される。 図表3-1-1-1 情報通信機器・サービスの普及率の国際比較(OECD諸国) ITU "World Telecommunication/ICT Indicators Database 2008"により作成 http://www.itu.int/ITU-D/ict/publications/world/world.html ●高齢層や低所得層の情報格差がやや拡大  それでは、普及が遅れている利用者層はどこであろうか。これまでの情報通信白書でも情報格差の現状を明らかにしているが、直感的にも理解できるとおり、情報通信の利用率が低いのは、高齢者、低所得層、地方の3つの属性が典型的である。図表3-1-1-2は、インターネットの利用率4を年齢、世帯年収、都市規模の別に示したものであるが、その通りの傾向を示している。しかし、注目したいのは、70歳以上や年収200万円未満、町村地域では、平成19年末に比べて平成20年末のインターネット利用率が減少している点である。インターネット利用率の全国平均は75.3%に上昇し、国民の4人に3人が利用するようになっている(第4章第1節を参照)一方で、情報格差はむしろ拡大し、世界的な経済危機の中で、高齢者、低所得世帯、地方がインターネットから取り残されることが懸念される。 図表3-1-1-2 属性別のインターネット利用状況 (出典)総務省「平成20年通信利用動向調査」 http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05.html ●企業でも規模や業種によって情報格差が存在  企業の情報通信利用にも格差が存在する。まず、企業のインターネット利用率は全体で99.0%に達し、従業者が500人以上の企業では100%であるのに対し、300人未満では97.8%と差は存在するが、インターネット利用は中小企業にまで浸透しているといえる。しかし、高速大容量の通信網利用となると話は別である。図表3-1-1-3は企業の規模別の高速通信網の利用状況だが、大企業になるほどブロードバンド又は専用線を利用する比率が高くなり、特に専用線比率が顕著に上昇する傾向がある。 図表3-1-1-3 企業規模別の高速通信網の利用状況 (出典)総務省「平成20年通信利用動向調査」 http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05.html  光ファイバ等のブロードバンド環境が整っているか否かで、全国または世界へ向けた販路が確保できるか否かが決まることになり、地方の中小企業にとってはまさに死活問題となりうる。ブロードバンドの世帯カバー率は98.6%、光ファイバの世帯カバー率も89.5%(いずれも2008年9月末)に達したが、2010年度を照準としたブロードバンド・ゼロ地域の解消に向け、情報通信基盤への投資を着実に進める必要がある。 2 ここでは、インターネット利用者数(パソコン等の何らかの手段によりインターネットを利用している人の数)を使用した 3 携帯電話の普及率については、プリペイドの扱いやSIMカード(契約者情報を記録したICカード)の互換性への対応が各国で異なることから、人口普及率が100%を超える国が数多く存在し、単純な比較は難しい 4 インターネット利用率とは、過去1年間に、(1)パソコン(2)携帯電話(PHS、携帯情報端末を含む)(3)その他(ゲーム機、テレビなど)の手段により、インターネットを利用したことがある6歳以上の人口の比率である