1 情報通信利活用促進にあたっての重点は「横展開」と「縦展開」 (1)「弱み」を克服するための「横展開」と「強み」を伸ばすための「縦展開」 ●利用の遅れた公的サービス等への「横展開」と先進分野の利用をさらに高度化する「縦展開」  第2章第2節でみた7か国の国際比較では、日本における情報通信の利活用はデンマーク、スウェーデン、シンガポール、韓国のICT先進国に比べて大きく見劣りしており、特に「医療・福祉」「教育・人材」「雇用・労務」「行政サービス」等の公的サービスを中心に利用が低迷している状況が明らかになった。総務省の推進するu-Japan政策では、少子高齢化社会に向けて山積する社会的課題の解決に積極的に貢献するために、「課題解決型のICT利活用」にシフトすることを理念として掲げているが、国民的関心が高く生活に直結するような社会保障や教育等のテーマについて、情報通信の利用が進んでいない状況は憂慮すべき事態である。したがって、これらの情報通信利用が遅れている「弱み」の分野を重点対象としてとりあげ、抜本的な底上げを図って利活用の対象分野を横断的に広げていくことが重要である。  一方、「交通・物流」や「電子商取引」等の分野は、ICT先進国と比較しても見劣りしない利用率を示しており、光ファイバ等のブロードバンド環境や非接触ICカード等の普及もあいまって、国内で高度な利活用が展開されているものである。これらの「強み」の分野はさらに利用率を引き上げるとともに、利用の内容を深化させて厚みを増し、国際的な競争力につなげていくことが必要である。  したがって、情報通信利活用の促進にあたっての重点ポイントは、図表3-2-1-1に示すとおり、利用の遅れた「弱み」を底上げするための「横展開」と、利用の進んだ「強み」を後押しするための「縦展開」の二点と考えられる。 図表3-2-1-1 情報通信利活用促進の「横展開」と「縦展開」  日本にとっては、「横展開」によって「弱み」を克服し、デンマーク等のICT先進国にキャッチアップすることを優先すべきなのか、「縦展開」によって「強み」を伸ばし、得意分野で世界をけん引していくことを優先すべきか、どちらの道を選択すべきであろうか。ここでは、その答えは、国民の意向を十分に勘案して判断すべきであると考える。そこで、以下では、あらためて今日の国民的課題を真しに問い直すとともに、そのような課題の解決に向けて、日本の情報通信が国民の期待に十分に応えられているかの検証を行う。