(2)コミュニティ参加を反映した「つながり力」指標 ●オフライン・オンラインの双方のコミュニティによる紐帯を定量化する「つながり力」指標の作成  社会関係資本に関する先行研究では、「信頼」「互酬性の規範」「ネットワーク」といった定性的な社会関係資本を計測して指標化し、インターネット等の情報通信利用との関係を分析する試みが数多く存在する9。これらを参考として、オフライン・オンラインの双方のコミュニティによる紐帯を一種の社会関係資本とみなし、双方のコミュニティへの参加状況の違いから生まれる個人の「つながり力」を定量化した指標を作成し、その「つながり力」と情報通信利用への不安との関係を分析することとした。  「つながり力」指標の作成は、おおむね以下の考え方に沿って行った10。 [1] 回答者のコミュニティ意識の把握  社会関係資本を構成する「信頼」と「互酬性の規範」に関する回答者の意識を把握するために、オフラインとオンラインの人間関係について信頼関係や助け合いについての質問を尋ねた。この回答結果から、回答者のオフライン・オンラインの双方におけるコミュニティ意識の高低を把握する。 [2] 各コミュニティの「紐帯」を評価  回答者の各コミュニティへの参加状況を尋ね、コミュニティ毎に参加者のコミュニティ意識を平均することで、各コミュニティの「紐帯」の高低を評価する。 [3] 各個人の「つながり力」を得点化  回答者毎に参加しているコミュニティの「紐帯」の水準を合計することで、各個人の「つながり力」指標とする。  この方法で作成された「つながり力」指標には、参加しているコミュニティの数11と、それぞれのコミュニティの紐帯の強さが反映されている。前述のとおり、利用者層によってコミュニティへの参加状況は大きく異なるが、紐帯の強いコミュニティにより多く参加している人ほど、「つながり力」指標は高くなる。このような形で、オフライン・オンライン双方のコミュニティへの参加状況を踏まえた「つながり力」を、定量的に表現することが可能となる。 ●オフライン・オンライン双方のコミュニティにバランス良く参加している人は「つながり力」が高い  新たに作成した「つながり力」指標について、オフライン・オンライン双方のコミュニティへの参加状況と具体的にどのような関係があるのか確認するために、コミュニティへの参加数が同一の回答者を抽出し、その参加状況の違いと「つながり力」指標との関係を図示してみよう。図表3-3-4-1でみたとおり、コミュニティへの参加数が3個の人が最も多いため、まず、参加数3個の回答者を抽出した。  図表3-3-4-3はその結果を示したものである。オンラインとオフラインのどちらか一方のコミュニティのみに参加している人(「オフラインのみに3個参加している人」と「オンラインのみに3個参加している人」)に比べて、オンラインとオフラインの両方のコミュニティに参加している人(「オフラインに2個、オンラインに1個参加している人」と「オフラインに1個、オンラインに2個参加している人」)の方が「つながり力」の値が高い結果となった。 図表3-3-4-3 コミュニティ総参加数3個のつながり力 (出典)総務省「ユビキタスネット社会における安心・安全なICT利用に関する調査」(平成21年)  同様に、コミュニティへの総参加数が2個、4個、5個の回答者を抽出したものが図表3-3-4-4である。全てにおいて、山型のグラフとなり、オフライン・オンライン双方のコミュニティにバランス良く参加している人の方が「つながり力」が高い結果となった。なお、総参加数が6個以上の回答者については、サンプル数の制約上の問題があるが、ほぼ同様の傾向が得られる結果となった。 図表3-3-4-4 コミュニティ総参加数別のつながり力 (出典)総務省「ユビキタスネット社会における安心・安全なICT利用に関する調査」(平成21年) 9 宮田(2007)、ノリス(2004)等の先行研究を参考とした 10 指標の作成方法の詳細は付注14を参照 11 参加しているコミュニティの数も考慮することで、社会関係資本を構成する「ネットワーク」も包含した指標とみなすことができる