(4)韓国の情報通信政策の動向 ア 情報通信規制機関の再編  韓国では通信と放送の規制機関が二つに分かれていたため、規制機関間の管轄争いでIPTV等の通信・放送融合サービス導入に遅延が生じていた。李明博政権成立に伴う省庁再編で、通信規制機関の情報通信部と放送規制機関の放送委員会が統合され、2008年2月末に大統領直属の放送通信委員会に再編されたことで、通信・放送融合時代に対応した政策が迅速化すると期待されている。 イ ニューIT戦略  省庁再編により、IT業界振興機能は基本的に旧情報通信部から知識経済部に移管された。そのため、国家IT戦略の主幹官庁も知識経済部に移り、2004年の情報通信部時代に策定されたIT839戦略は廃止され、2008年7月に知識経済部が策定したニューIT戦略が新たな国家IT戦略となった。ニューIT戦略の3大戦略分野は、[1]全産業とITの融合、[2]ITによる経済社会問題解決、[3]中核IT産業の高度化、とされ、2012年までの5年間でIT産業に総額3兆5,000億ウォンを集中投資する計画である。従来のIT戦略が情報通信分野主体のサービスとネットワーク、機器の統合に焦点を合わせていたのに対し、ニューIT戦略では、自動車や造船等全産業とITとの融合を強調している。また、エネルギー問題や少子高齢化等の社会問題解決のためにITを積極活用する方向性を打ち出している。この一環として、2009年1月に知識経済部は環境に配慮した低炭素社会を目指す「グリーンIT戦略」を発表し、エネルギー・気候変動問題解決のためのIT分野活用を掲げている。 ウ 国家情報化基本計画  2008年12月には、情報化推進委員会と行政安全部より「国家情報化基本計画」が公表され、2012年に向けた「創意と信頼の先進知識情報社会」のビジョンを実現すべく、[1]創意的ソフトパワー、[2]先端デジタル融合インフラ、を2大エンジンとし、[3]信頼の情報社会、[4]仕事のできる知識政府、[5]デジタルで快適に暮らす国民、の3大分野を目標領域として定めている。 エ 放送通信網高度化基本計画  2009年1月には、放送通信委員会より「放送通信網高度化基本計画」が公表され、2013年までの5年間に官民で総額34.1兆ウォンを投入することで、超高速の有線・無線通信インターネット網を構築していく方針が示された。 オ IPTV法の成立と本格的IPTVサービスの開始  2007年末に「インターネット・マルチメディア放送事業法(IPTV法)」が成立し、4年以上にわたったIPTV定義問題に終止符が打たれ、地上波再送信を含むリアルタイム放送が可能なIPTVサービス開始のための法的根拠が整備された。これにより、本格的IPTVの商用化を待っていた固定通信3社は2008年11月以降順次、リアルタイム放送を伴ったIPTVサービスを開始した。IPTVは、停滞傾向の続く情報通信市場の新たな成長動力及び雇用創出の機会として大きく期待され、官民を挙げてサービス活性化に力を入れている。政府はIPTVを公教育や行政サービス等の公共サービスにも積極的に活用する方針を示している。