第5章 情報通信政策の動向 第1節 総合的戦略の推進 1 国家戦略の推進  政府は、情報通信技術の活用により世界的規模で生じている急激かつ大幅な社会経済構造の変化に的確に対応することの緊要性にかんがみ、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進することを目的に、平成13年1月に、「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」を施行するとともに、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)1を設置した。  その後、「我が国が5年以内に世界最先端のIT国家になること」を目指した「e-Japan戦略」(平成13年1月)、「『IT利活用により、元気・安心・感動・便利社会』を目指す」こととした、「e-Japan戦略II」(平成15年7月)等を策定した。  「e-Japan戦略」策定後の5年間に様々な施策が講じられた結果、我が国は、ICTの利用環境整備等やICT利用者のレベルにおいても、世界最高水準を達成し、最先端のインフラ、マーケット、技術環境を有する「世界最先端のIT国家」となった。  一方、行政サービスや、医療、教育分野等におけるICT利活用についての国民満足度の向上、地域や世代間等における情報活用における格差の是正等、依然として課題が存在しているのも事実であり、国民・利用者の視点に立って、ICTの特性を生かしつつ有効活用し、国民生活及び産業競争力の向上に努めるとともに、我が国が抱える様々な社会的課題の改革に取り組んでいくことが求められていたところである。  そこで、2010年に「いつでも、どこでも、誰にでもITの恩恵を実感できる社会の実現」という目標に向け、構造改革による飛躍、利用者・生活者重視、国際貢献・国際競争力強化という理念の下、15分野において取組を推進することとした「IT新改革戦略」(平成18年1月)を策定した。その中でも、国民生活者の視点の重視と、新たな成長戦略を進める観点から、取組の強化が特に必要な3分野を抽出し、今後の取組の方向性と具体的段取り(工程表)を明確化した「IT政策ロードマップ」(平成20年6月)を策定し、各種の施策が推進されているところである。  しかし、現下の世界的な金融危機に伴う我が国経済の失速、クラウドコンピューティングといった革命的新技術の登場など、「IT新改革戦略」策定時には想定しなかった状況にかんがみ、現行の「IT新改革戦略」の期限を待たずに、2015年に向けた新たな中長期戦略について平成21年6月末までに策定することを決定した。また、現下の経済危機を克服するため、平成21年4月に「デジタル新時代に向けた新たな戦略(三か年緊急プラン)」を策定した(図表5-1-1-1)。 図表5-1-1-1 デジタル新時代に向けた新たな戦略(三か年緊急プランの概要) 1 参考:IT戦略本部:http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/