コラム 将来性豊かな中東地域をターゲットとする国際展開  総務省では、日本の情報通信産業の国際競争力強化に向けた総合戦略を検討する場として、産官学のトップが結集する「ICT国際競争力会議」を平成19年5月より開催している。平成21年6月には、今後3年程度を展望した行動計画として「ICT国際競争力強化プログラム2009」を策定し、日本企業の海外展開を支援するために優先的に取り組むべき地域を「ターゲット地域」と位置付け、地域ごとの国際展開戦略を初めて策定した。  具体的には、中国、インド、東南アジア(ベトナム、インドネシア、タイ等)、中南米(ブラジル等)、ロシア及び中東(アラブ首長国連邦(UAE)、カタール等)をターゲット地域に選定した。今後は、ターゲット地域ごとの「地域別戦略パッケージ」に基づいて施策を展開し、具体的なプロジェクトを官民あげて重点的に推進することとなる。  市場が急拡大し、高い経済成長が期待される中東地域を例に、「地域別戦略パッケージ」の例を紹介しよう。  図表1は、UAEとカタールの通信サービスの普及率の推移を示したものである。両国は資源依存型の経済からの脱却を目指して、ICT産業をはじめ金融や観光等のサービス産業の戦略的な育成を図っている。図表1からは携帯電話を中心とする移動通信市場が急成長していることが分かる(2003〜2007年においてUAEは年率24%、カタールは年率31%で成長)。 図表1 UAE及びカタールにおける通信サービスの普及率(百人当たり加入者数)の推移 ITU“ICT Statistics Database”により作成 http://www.itu.int/ITU-D/ICTEYE/Indicators/Indicators.aspx#  日本は両国からの資源輸入の依存度が高く、経済安全保障上、資源のみでない重層的な経済関係を発展させ、より強固な友好関係を構築する必要性が高い。その要請に応えるとともに、上記のように急成長し将来性豊かな中東地域のICT市場でビジネスを展開することを目指して、総務省は中東をターゲット地域とする「ICT中東展開戦略パッケージ」を取りまとめた。主な内容は次の通りである。 (1)総務省のこれまでの取組  平成20年5月に、中東に副大臣を団長とする初の官民ミッションを派遣し、UAE、カタール政府との間で今後ICT分野において官民合同の定期的な協議の場を持つことで合意した。その後、同年6月及び11月に実務レベルのミッションを派遣し、平成21年4月には日本のICTサービスを紹介するユビキタス・ビジネス・セミナーを開催した。 (2)基本戦略  ICT分野における中東地域との緊密な戦略パートナーシップ関係の構築を目指す。現在主眼としているUAE・カタール以外の第3国への面的展開を考慮するほか、セミナー開催等による相手国のニーズ把握、協力関係のフレームワーク作成から案件の実施、及びフォローアップまで、ステップを踏んで協力関係を構築する。 (3)目標  現地企業又は政府とのMoU(覚書)の締結やパイロットプロジェクトの実施について合意を目指す。中長期的には現地の官学と連携し、人材育成、研究開発分野における協力スキームを検討する。 (4)アクションプラン  中東地域におけるモデル事業を着実に実施するとともに新たなパイロットプロジェクトを形成するべく働きかけを行う。民間からの要望に基づくオーダーメイド型ミッションの形成や、メールマガジンによる日本のICT関連情報の配信を行う。