(2)ネットワークの高度化等 ア ネットワークの高度化の推進 (ア)IPv6の推進  ネットワークに接続されるコンピュータ等を識別する「IPアドレス」については、これまでIPv4(Internet Protocol Version4)が利用されてきているが、平成23年初頭にも想定されるIPv4アドレス在庫の枯渇に対応するため、IPv6(Internet Protocol Version6)への移行が求められているところである。  総務省においては、「インターネットの円滑なIPv6移行に関する調査研究会」を開催し、IPv6への移行に向けて、インターネットに関わる各プレーヤーがそれぞれ連携して対応を進めていくことが重要である等の提言を、平成20年6月に取りまとめた1。  その提言を受け、総務省において、平成21年度に、技術者によるIPv6技術の修得を目的としたテストベッドを整備するほか、総務省及びインターネット関連団体による「IPv4アドレスの枯渇対応タスクフォース」を中心として、官民一体となったIPv4アドレス在庫枯渇への対応を実施しているところである。  さらに総務省では、IPv4アドレスの在庫枯渇までに必要な施策を改めて検討するため、平成21年2月より、「IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会」を開催し、IPv6サービスの利用促進のため、「インターネットサービス等のIPv6対応に係る基本指針」を策定した。 (イ)ネットワークのオールIP化に向けた技術基準の見直し  我が国は、技術革新やこれまでの競争政策等の推進により、世界で最も安くて速いブロードバンド環境を実現した。その結果、インターネット上で提供されるIP電話等の新しいサービスが急速に普及・拡大しており、国内外の主要な電気通信事業者による、ネットワークのIP化に向けた動きが活発化している。  このような状況の下、総務省は、平成19年1月、「0AB〜J番号を使用するIP電話の基本的事項に関する技術的条件」について、平成20年3月、「050-IP電話等の基本的事項に関する技術的条件」について、それぞれ情報通信審議会から一部答申を受け、関係規定の整備を行った。  また、平成21年2月より情報通信審議会IPネットワーク設備委員会において、IP電話の端末設備が具備すべき機能やその認証の在り方について検討を行っている。 (ウ)新世代ネットワークの推進  ネットワークのIP化やホームネットワーク、ユビキタスネットワークの進展等の大きな変化を踏まえ、総務省では、次世代ネットワークの次の世代を見据えた新たなネットワークの検討を行うことを目的として、平成19年1月から「ネットワークアーキテクチャに関する調査研究会」を開催し、同年8月に報告書の取りまとめを行った。  同報告書では、新世代ネットワークを世界に先駆けて実現し国際競争力を確保するため、新世代ネットワークの研究開発の推進、産学官連携のためのフォーラム設立の必要性が示された。  これを受け、総務省は新世代ネットワーク基盤技術に関する研究開発を最重要のテーマとして中長期的な視点で推進している。また、産学官の連携による「新世代ネットワーク推進フォーラム」(平成19年11月設立)等を通じて我が国の英知を結集し、新世代ネットワーク実現に向けた取組を戦略的・統合的に実施している(図表5-2-1-2)。 図表5-2-1-2 新世代ネットワークの推進 イ 電気通信番号に係る規定の整備 (ア)BWA等の新たなサービス導入に向けた取組  携帯電話などの端末を国際的に一意に識別し、契約者の認証を行うための電気通信番号IMSI(International Mobile Subscription Identity)については、従来、「電気通信番号規則」第8条において、「携帯電話に係る端末設備を識別するための電気通信番号(移動電話端末を識別するための電気通信番号を規定する国際電気通信連合条約に基づく勧告に準拠したものに限る。)」と規定され、携帯電話事業者に指定されていた。  平成20年5月のITU-T勧告E. 212の改定により、IMSIの使用条件が緩和され、移動端末や移動体サービスへの使用に限定せず、電気通信サービスを提供する公衆電気通信網において広く使用できることとなった。また、我が国においても、新たに広帯域移動無線アクセスシステム(BWA:Broadband Wireless Access)のXGP(eXented Global Platform。いわゆる次世代PHS)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)等での使用が想定されている。  総務省では、ITU-T勧告E. 212の改定や新たなサービスへの利用要望を踏まえ、平成20年12月に「電気通信番号規則」におけるIMSIに係る規定を改正した。これにより、IMSIを携帯電話以外のサービスについても使用可能となり、また、基地局の無線局免許を有さない電気通信事業者であっても、電気通信回線設備に接続する端末設備を識別する設備を設置すればIMSIを使用可能となった2。  なお、BWAについては、第5章第2節3(2)ア(イ)にも記載している。 (イ)信書の送達サービス受付用にも115番を使用可能にするための取組  電話番号115番は、現在、東・西NTTが提供する電報の受付用として使用されている。一方で、「民間事業者による信書の送達に関する法律」(平成15年4月施行)に基づき、電話で受け付けたメッセージを印刷して送達するなどの電報に類似したサービスの提供が始まっている。  このような状況の下、電報に類似したサービスを提供する特定信書便事業者から、115番を信書の送達サービス受付用にも使用したい旨の要望が示され、総務省では、平成20年4月より「信書の送達サービス受付用への115番の使用に関する検討会」を開催し、115番を電報受付用に加え、信書の送達サービス受付用にも使用することについて検討を行った。検討の結果、検討会報告書(平成20年10月)3において、電気通信事業者が115番を信書の送達サービス受付用にも使用することについて、 [1]115番で受付を行う電報と遜色のないサービスの受付であること [2]特定信書便事業として許可を受けた特定信書便役務であるサービスの受付であること 等の一定の条件を満たす場合には、問題はないとの結論が得られた。  これを踏まえ、総務省では、電気通信事業者が、115番を信書の送達サービス受付用にも使用可能とするため、平成21年6月に告示(電気通信番号規則の細目を定めた件)の一部を改正した4。 ウ IPアドレス・ドメイン名の適切な管理  インターネット利用に必要不可欠なIPアドレスやドメイン名については、重複割当の防止等全世界的な管理・調整を適切に行うことが極めて重要である。現在、インターネット資源の国際的管理・調整は、民間の非営利組織であるICANN(The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)が行っており、総務省は、ICANNの政府諮問委員会(各国政府の代表者等から構成)の正式登録メンバーとして、国際的な協力体制の確立に取り組んでいる。また、国別トップレベルドメインとして我が国に割り当てられている「.jp」ドメインについて、「.jp」ドメインを管理している株式会社日本レジストリサービス(JPRS)と連携して、政府機関のドメインであることが保証されるドメイン名の利用環境整備に取り組んでいる。  ドメイン名については、平成13年に、トップレベルドメインを除く部分の他国文字化(日本語化等)が実現し、例えば、「総務省.jp」等のドメイン名の使用が可能となったところである。平成20年6月から、ICANNにおいて、「多国文字による国別トップレベルドメイン」の具体的な導入策についての検討が開始され、早ければ平成21年末頃からの導入が可能となるとなる見込みである5。  これを受け、情報通信審議会情報通信政策部会インターネット基盤委員会6において、我が国における新たなトップレベルドメインの導入について検討している。 1 参考:「インターネットの円滑なIPv6移行に関する調査研究会」報告書(案)に関する意見募集の結果及び報告書の公表:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/2008/080617_2.html 2 参考:電気通信番号規則の一部を改正する省令案に対する情報通信行政・郵政行政審議会の答申−端末設備を識別するための電気通信番号(IMSI)を携帯電話以外のサービスについても使用可能とするための措置について:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/2008/081125_1.html 3 参考:「信書の送達サービス受付用への115番の使用に関する検討会」報告書:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/2008/081029_2.html 4 参考:「電気通信番号規則の細目を定めた件」の改正にあたっての基本的な考え方の公表について〜115番を電報類似サービス受付用にも使用可能とする措置に係る基本的な考え方〜:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02kiban06_000007.html 5 参考:新たな「国別トップレベルドメイン」の導入についての検討開始:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/2008/081105_2.html 6 参考:情報通信審議会情報通信政策部会インターネット基盤委員会:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/kiban.html