(4)ICTを地域活性化に結び付けるための要素 ●「熱意ある中心人物」「異主体・異業種の連携・協働」「多様な外部人材との連携」「積極的な情報発信・交流」と、これらを支える「ICTによる緩やかなネットワーク」が地域活性化の鍵  ICTそれ自体はツールであり、インフラやシステムを整備するだけでは地域活性化を実現することは難しい。米国の社会学者リチャード・フロリダは、イノベーションを創造できる、あるいはリードできるナレッジ・ワーカーを「クリエイティブクラス」と位置付け、このような人びとにとって魅力的な都市の要素として「知識」「技術」「多様性」を挙げるとともに、当該地域における「ゆるい絆」14が重要だと分析している。「脱工業化社会」の次の段階である「知識集約型社会」を目指す我が国において、人口減、高齢化が深刻化する地方の地域活性化を達成するためには、各地域においてこのような多様な人材が参加することができる「緩やかなネットワーク」15が構築されていることが非常に重要と考えられる。また、このようなネットワークをICTで構築する場合には、わかりやすいインタフェースや普段から使い慣れている情報端末などの利用など、ICTに不慣れな人でも簡単に利活用できるような工夫も重要である。  前述した各種地域活性化の成功事例には、それぞれ独自の要因があり一概にはいえないが、共通する要素として「熱意ある中心人物」の活動を契機として、「住民・企業・NPO・自治体・地元マスコミなどの異主体・異業種の連携・協働」や「多様な外部の人材との連携」が図られ16、地域資源の地域内外への「積極的な情報発信と交流」を行っており、そしてこれらの活動を「ICTによる緩やかなネットワーク」が支えている、あるいは、地域活性化のためには関係者の連携・協働や情報発信・交流を支えるICTが不可欠であるともいえるだろう(図表1-1-2-7)。 図表1-1-2-7 ICTによる地域活性化の5つの鍵 (出典)総務省「我が国のICT利活用の先進事例に関する調査研究」(平成22年)  このような先進事例に学び、地域の豊かな資源をICTを活用して地域活性化に結び付け、地域住民の生活の質を向上させるための取組がどんどん広がる仕組を各地域においてプロデュースしていくことが今後ますます重要になっていくと考えられる。 14 Florida(2002)参照。Putnum(2000)は、社会関係資本の社会ネットワークについて「結束型」と「橋渡し型」があると分析し、フロリダの「ゆるい絆」は「橋渡し型」に当たると考えられる 15 Granovetter(1973)は社会ネットワークにおいて「弱い紐帯」が重要であるとし、実際に顔を合わせる機会が少ない知り合い関係が情報収集や転職活動など個人が機会を手に入れる上で重要な役割と果たすとともに、異なるコミュニティ間をつなぐ「ブリッジ」の機能も果たし、個人がコミュニティに統合される上で、不可欠なものと分析している 16 同様の分析として、柳田公市(1999/02/06 木更津 産学官民シンポNPOの役割)、丸田(2007,pp.20-21)がある