(2)ブリティッシュテレコム社(英国 通信事業)の事例 ●データセンターの徹底した省エネルギー化、顧客へのグリーンICTコンサルティング等により、英国の温室効果ガス削減に貢献  ブリティッシュテレコム社は、環境負荷削減の取組が自社の企業活動におけるコスト削減に大いに貢献するといった強い認識の下、グリーンICTを推進している。 ア ブリティッシュテレコム社によるグリーンICTの取組の概要 (ア)CRSBによる全社的、国際的なグリーンICT推進  CRSB(Committee for Responsible and Sustainable Business)と呼ばれる統括組織により、ブリティッシュテレコムグループ全体におけるグリーンICT関連の取組内容、およびそのビジネス化戦略が作成されている。また、こうした一連の取組に関してISO140014を取得し、英国のみならず、ドイツ、オランダ等の海外所在地においても、標準化された取組として進める手段を整備している。 (イ)徹底的なICT自体のグリーン化(Green of ICT)の実現  ICT自体のグリーン化(Green of ICT)の取組としては、社内で使用する待機サーバーの廃止、サーバーへの仮想化技術適用、グリッドコンピューティング技術を適用した使用サーバーの効率化等によるサーバーの年間消費電力量の大幅削減(5.3GWh削減)、外気冷却システム5の導入によるデータセンターにおける消費電力量の大幅削減(29.6GWh削減)等があげられる。 (ウ)従業員のエコカー通勤を支援  自社社員の通勤手段として、電気自動車やバイオディーゼル自動車を提供している。これにより、2000年には従業員が1回の通勤に使用する自動車のCO2排出量が1kmあたり208.6gであったものが、2008年現在では150.5gにまで削減できている。 (エ)グリーンICTコンサルティングの提供 A 中小企業向けグリーンICT教育プログラム  BT BESTとよばれるグリーンICT関連の教育プログラムを実施している。その中で、現在の事業活動が環境に与えるインパクトや、ICTにおける日々の小さな取組の繰り返しにより個社の消費電力が削減できること、具体的には各企業におけるPeople(従業員数、従業員の通勤手段等)、Place(事業所面積、事業所にかかる家賃)、Policies(企業において環境対策に関わる規定等)についての情報を収集し、そのデータに基づいた対策を講じること等について助言している。 B 大企業向けグリーンICTコンサルティングサービス  Carbon Impact Assessment Consultancyと呼ばれる、環境負荷低減のためのコンサルティングサービスを提供している。具体的には、およそ6〜10週間かけ、目標設定のためのワークショップ、社内のICTで使用するネットワークの評価を行い、対象となる企業に適した対策を助言している。主には、在宅勤務や、データセンターで使用するサーバーの仮想化、シンクライアントの利用、共有作業ツールの利用などを推奨している。 C 個人の省エネ活動を後押し  個人顧客に対しては、英国のガス大手British Gasと共同で、従来の電話端末機より消費エネルギー量を50%削減する電話端末機BT Graphiteを開発し、提供している。その他、Live Litelyと呼ばれるホームページにおいて、消費電力節約のためのアイディアを提供している。また、消費者が実際にそうしたアイディアを実現できるよう、「Pledge(約束)」をホームページ上で行い、自分の取組状況を個人がモニターできる仕組を提供している。 イ ブリティッシュテレコム社によるグリーンICT の取組の効果  ブリティッシュテレコム社は欧州最大のデータセンター事業者であり、英国全体の2%の電力を消費している。そのため、同社の省エネルギー化は社会的な影響が大きく、外気冷却システムの導入でデータセンターにおける消費電力量の60%削減するなどにより、2008年時点で温室効果ガスの1997年比58%の削減を達成した。さらに同社は、2020年までには1997年比80%を削減するという目標を打ち立てている。  また、これに伴い自社で消費するエネルギーにかかるコストの削減も実現した。具体的には2005時点での環境対策によるコスト削減額が総計で約1億9,990万ポンドであったのに対し、2009年時点では約4億4,180万ポンドと、2倍以上の削減額を達成した。  そして、グリーンICTに不可欠なセンサー技術をヘルスケアの領域に展開し、高齢者や体の不自由な人が自由にコミュニケーションできる環境を整備することで、結果的に地域の絆の深化に貢献している。具体例として、英国リバプール市と共同で、高齢者や体の不自由な人をモニタリングし、家庭内での転倒、強盗、ガス漏れ、火事、水害等があった際にリアルタイムで検知し、通報するシステムを開発中であり、地域の住民が安心して生活できる環境の構築を支援しているといった例が存在する。 4 企業や行政機関等の組織に対して、環境に負荷をかけない事業活動の継続を要求する国際規格 5 データセンターで使用する冷却装置にセンサーをつけ、ホットスポットにのみ冷却風をあてることで効率的な冷却を実現するシステム