第4節 ICTをめぐる社会課題の変遷  ICTを巡る社会課題はどのように変化したのだろうか。ここでは、過去の情報通信白書(平成12年以前は通信白書)の特集及び政策動向において取り上げた内容を元に変遷を見ていくこととする。 ●ICTインフラ整備からICT利活用へ  情報通信白書においては、平成10年頃までは、インターネット、マルチメディア化等が多く取り上げられた(図表1-4-1-1)。このころは、インターネットの光の部分が特に注目されていたことが分かる。また、平成10年頃以降は、インターネットの普及段階にあったこともあり、ICTインフラの整備とともに、企業や行政等公共分野におけるICT利活用等が取り上げられた。この後、平成16年には「ユビキタスネットワーク社会」を掲載するなど、国民生活に浸透しつつあったインターネットの状況に併せて、情報通信白書での問題意識も国民生活との関係に焦点をあてた記載が多くなった。特に、平成19年以降は、インターネットが国民にとって一般化する中で、ICTインフラ整備に関する記載が減少するとともに、ICT利活用のテーマも、地域活性化や環境など、比較的国民に近い目線でのテーマへと変遷していった。 図表1-4-1-1 情報通信白書テーマの変遷 (出典)総務省情報通信白書により作成 ●変わらない課題  インターネットが本格的に普及期を迎えた平成10年頃以降、白書では、ICTを取り巻く課題面も取り上げてきた。特に、個人情報保護、違法・有害情報や、不正アクセス、ウィルス、迷惑メール等のネットに潜む課題など、「安心・安全の確保」については、継続的に取り組んでいる内容であり、現在でも重要な課題である。また、情報リテラシー、世代間格差、地域間格差などの「デジタル・ディバイドの解消」についても、インフラ環境の進化等に伴い、内容は変遷しているものの、現在でも変わらない課題として取り上げてきている。  平成13年の『ブロードバンド元年』の宣言以降、インターネットはブロードバンド化によるリッチ化が進み、同時にパーソナル化も促進した。放送もチャンネル数の拡大など、多様化が進んでいった。このような変化は、ライフスタイルに影響を及ぼし大きな変化を引き起こした。情報収集行動や余暇行動では、インターネットが重要な情報源と認識され、就職活動はインターネットなしでは語れないものとなるなど、インターネットが生活に不可欠な存在となってきた。そして、その中で、コミュニケーションの方法が変化し、発信の志向性が強い世代が現れ、電子商取引の利用による購買プロセスの変化も起こった。このように、ICTの普及はライフスタイルに大きな影響を与え、進展をしてきた。しかしながら、その進展の背景には、変わらぬ課題が存在し続けており、その解決を図っていくことが今後も必要とされるところである。