(3)ソーシャルメディアの効用と可能性  (2)の「利用目的」及び利用した結果として「実現したこと」でみたソーシャルメディアの効用に関して、以下、まずアにおいて、「利用目的」及び利用した結果として「実現したこと」のいずれでも回答率の高かった「知りたい情報の入手」の効用に関する分析を行う。次に、ソーシャルメディアをはじめとするICTの利活用が人と人とのつながりや個人の不安、地域コミュニティの問題の解消等にどのような影響を与えるかを検討するため、イにおいて、「オフラインコミュニケーションの補完」、「ソーシャルメディアを契機とする新たなコミュニケーション」の効用について分析を行い、ウにおいて「身近な不安・問題の解決」、「社会・地域コミュニティの問題解決等」の効用について分析し、最後にエにおいて上記を踏まえた考察を行う。 ア 「知りたい情報の入手」の効用に関する分析 ●ソーシャルメディアは「友人・知人の情報」「趣味・嗜好に関する情報」の入手についての重要な情報源。友人・知人の情報はSNSを、趣味・嗜好関係の情報はSNS、掲示板等を多く利用  まず、「利用目的」及び利用した結果として「実現したこと」のいずれでも回答率が高かった知りたい情報の入手のためのソーシャルメディア利用に関して、ソーシャルメディアの利用者が、それ以外のメディアを含め、どのようなメディアを利用し情報を入手しているかについて、情報の種類ごとに分け回答を得た14。  ソーシャルメディアは、「友人・知人の情報」の入手に関して24.6%の人が最もよく使うメディアと回答し(うちSNSが16.5%)、「趣味・嗜好に関する情報」で21.2%(うちSNSが6.4%、ネット上の掲示板が5.2%)、「ボランティア・社会活動に関する情報」で7.6%(うち地域SNSが2.4%)、「共有(シェア)・レンタルに関する情報」で6.5%(うちSNSが1.8%)という結果であり、ソーシャルメディアがこれらの情報の重要な情報入手先とされていた。特にSNSが多くの情報で高い回答率であった(図表3-2-3-11)。 図表3-2-3-11 ソーシャルメディア利用者における情報の入手先のメディア (出典)総務省「次世代ICT社会の実現がもたらす可能性に関する調査」(平成23年) イ 「オフラインコミュニケーションの補完」、「ソーシャルメディアを契機とする新たなコミュニケーション」の効用に関する分析  ソーシャルメディアの「利用目的」及び利用した結果として「実現したこと」のいずれでも「オフラインコミュニケーションの補完」、「ソーシャルメディアを契機とする新たなコミュニケーション」に関する回答が多かったが、以下では、コミュニケーションへの活用について、まず、(ア)ソーシャルメディアの利用者がどのようなコミュニティやグループに参加しているかの結果を分析する。次に、(イ)コミュニケーション方法(閲覧か書き込みか)を分析し、最後に、(ウ)ソーシャルメディア上でのコミュニケーションが、「オフラインコミュニケーションの補完」や「ソーシャルメディアを契機とする新たなコミュニケーション」にどのように貢献をしているかを分析する。 (ア) ソーシャルメディア利用者のコミュニティ参加状況 ●最もよく利用しているソーシャルメディア上のコミュニティは、3分の2以上の人が「趣味や遊び仲間のグループ」、次いで「学校の同窓会関係のグループ」、「仕事を離れたつきあいのある職場仲間のグループ」等  利用者がよく利用するソーシャルメディア上のコミュニティ15をよく使う順に3つまで回答を得たところ、図表3-2-3-12のとおりの結果となり、最もよく利用しているソーシャルメディア上のコミュニティとしては、「趣味や遊び仲間のグループ」(66.5%)が顕著に高く、次いで「学校の同窓会関係のグループ」(11.8%)、「仕事を離れたつきあいのある職場仲間のグループ」(5.7%)、「習い事や学習のグループ」(5.1%)、「ボランティア活動に関するグループ」(2.6%)であった。 ●学校の同窓会関係ではSNSを、ボランティア活動や町内会関係では地域SNS等を利用  最もよく利用するコミュニティとして回答の多かった上位6つのコミュニティについて、利用するソーシャルメディアの種類を聞いたところ、学校の同窓会関係ではSNSが特に多く使われ、ボランティア活動や町内会・自治会活動関係では地域SNSが比較的多く使われているという結果が得られた(図表3-2-3-12)。 図表3-2-3-12 ソーシャルメディア上で参加しているコミュニティ (出典)総務省「次世代ICT社会の実現がもたらす可能性に関する調査」(平成23年) (イ)閲覧と書き込み ●ブログ利用者、Twitter利用者は閲覧、書き込みの両方をする利用者が多い。ブログの利用者は、主に書き込みのみをする利用者も比較的多い  ソーシャルメディアの利用方法に関し、閲覧、書き込みをするか聞き、ソーシャルメディアの種類別に分析したところ、「閲覧と書き込みの両方」との回答はブログ(67.2%)、Twitter(65.3%)の利用者に多かった。また、ブログの利用者は、「主に書き込みのみ」(4.9%)の回答が他のソーシャルメディアより高く、「主に閲覧のみ」(27.9%)の回答は他のソーシャルメディアより低いというように、自分のブログの更新や他人のブログへの書き込み等によって書き込みを行っていることが推測される等、種類別の利用傾向に明確な違いが見られた。(図表3-2-3-13)16。 図表3-2-3-13 ソーシャルメディア利用者の閲覧、書き込みに関する状況 (出典)総務省「次世代ICT社会の実現がもたらす可能性に関する調査」(平成23年) ●書き込みの目的は、SNSは「知人・友人に読んでもらいたい」、ブログは「同じ関心や興味のある人と知り合いになりたい」、「多くの人に広く読んでもらいたい」、Twitterは「暇つぶし」「自分と異なる意見や新たな情報を知りたい」  自分の意見を書き込みする目的を複数選択可で聞いたところ、「知人・友人に読んでもらいたいから」はSNS利用者の回答が高く、「同じ関心や興味のある人と知り合いになりたいから」、「多くの人に広く読んでもらいたいから」はブログ利用者の回答が高い。また、「暇つぶし」「自分と異なる意見や新たな情報を知りたいから」はTwitterの利用者の回答が高かった(図表3-2-3-14)。 図表3-2-3-14 ソーシャルメディアに書き込みをする利用者の書き込みの目的 (出典)総務省「次世代ICT社会の実現がもたらす可能性に関する調査」(平成23年) (ウ)「オフラインコミュニケーションの補完」、「ソーシャルメディアを契機とする新たなコミュニケーション」 ●ソーシャルメディアは、「オフラインコミュニケーションの補完」、「ソーシャルメディアを契機とする新たなコミュニケーション」の何れにも効用が認められる  これまで、ソーシャルメディアの多くの利用者が、「同じ趣味・嗜好を持つ人と交流ができた」「疎遠になっていた人と再び交流するようになった」等様々な交流を実現したことを確認し、また、参加コミュニティや書き込み等交流の実態を確認したが、そのような交流の結果、絆が深まったどうかについて、「家族・親戚の絆」等9項目についてそれぞれ回答を得た17。その結果、「遠方の友人・知人との絆」を深めたとの回答が69.6%と最も高く、次いで、「学校の友人・知人との絆」、「近くに住む友人・知人との絆」、「年齢の離れた知人との絆」、「家族・親戚の絆」が続いており、実社会での既存の知り合いとの絆をソーシャルメディアでの交流により深め、ソーシャルメディアが「オフラインコミュニケーションの補完」の効果を発揮していた。  また、「ネット上で出会った人との絆」が深まったとの回答も64.3%あり、ソーシャルメディアを契機として新たなコミュニケーションが生まれるという効果を発揮していた。  なお、ソーシャルメディアの種類でみると、ブログ利用者については、絆が深まったとの回答が少ない傾向が見られた(図表3-2-3-15)。 図表3-2-3-15 ソーシャルメディア利用による絆の深まり (出典)総務省「次世代ICT社会の実現がもたらす可能性に関する調査」(平成23年) ●ソーシャルメディア利用者の約4分の3がソーシャルメディアで知り合いを作り、その人数は「1〜5人」が最大で31.4%  また、現実の対面はなく、ソーシャルメディアで初めて知り合った人数18について回答を得たところ、1人以上と回答した人の合計は75.1%で、その人数は「1〜5人」が31.4%と最大であった。また、利用するソーシャルメディアの違いにより、回答に顕著な傾向の差はみられなかった(図表3-2-3-16)。 図表3-2-3-16 ソーシャルメディアで初めて知り合った人数(ソーシャルメディア別) (出典)総務省「次世代ICT社会の実現がもたらす可能性に関する調査」(平成23年) ●約半数がソーシャルメディアで初めて知り合った人に実際に会う。理由は、趣味・嗜好が合う、オフ会開催、専門家や経験者に相談・質問、ボランティア活動を一緒に行うなど  また、「ソーシャルメディアで初めて知り合った人と実際に会ったことがある」と回答した人の割合は47.7%と高かった。世代別では、中年層は53.5%、高齢層は36.8%、ソーシャルメディア別では、SNS利用者は51.1%、ブログ利用者は40.2%とそれぞれ差がみられた(図表3-2-3-17)。 図表3-2-3-17 ソーシャルメディアで初めて知り合った人と実際に会った人の割合(世代別、ソーシャルメディア種類別) (出典)総務省「次世代ICT社会の実現がもたらす可能性に関する調査」(平成23年)  実際に会った理由としては「趣味・嗜好が合うから」(69.0%)、「オフ会をやることになったから」(37.4%)との回答が多かった。また、「専門家や経験者に相談・質問するため」、「ボランティア活動等社会的な活動を一緒に行うため」というように、身近な問題の解決や実社会での協働のために、実際に会うとの回答もみられた(図表3-2-3-18)。  このように、多くの人がネットで新たな人と知り合い、その多くの人が、同じ趣味・嗜好を持つ人との交流のため、また、身近な問題の解決や実社会での協働のために、実際に会っているという結果が得られた。 図表3-2-3-18 ソーシャルメディアで初めて知り合った人と実際に会うことになった理由 (出典)総務省「次世代ICT社会の実現がもたらす可能性に関する調査」(平成23年) ウ 「身近な不安・問題の解決」、「社会・地域コミュニティの問題解決等」の効用に関する分析 ●SNS、Twitter上のコミュニティでの交流頻度が高い人ほど、身近な不安・問題の解決、社会・地域コミュニティの問題解決等を実現した度合いが高い傾向  ソーシャルメディア上のコミュニティでの交流頻度19と、ソーシャルメディアを利用して身近な不安・問題の解決や社会・地域コミュニティの問題解決をどの程度実現したか20について両者の関係を分析21したところ、SNS及びTwitterのそれぞれについて、ソーシャルメディア上のコミュニティでの交流頻度と、ソーシャルメディアの利用による身近な不安・問題等の解決の実現度合いとの間に相関関係が認められた22(図表3-2-3-19)。 図表3-2-3-19 ソーシャルメディア上のコミュニティでの交流頻度と身近な不安・問題、社会・地域コミュニティの問題解決等の実現度合いの関係(SNS・Twitter別) (出典)総務省「次世代ICT社会の実現がもたらす可能性に関する調査」(平成23年) エ ソーシャルメディアの可能性  これまでの分析で様々な効用を確認できたソーシャルメディアであるが、これらを踏まえ、その可能性についてどのようなことが言えるかについて、以下の通り整理した。 ●「オフラインコミュニケーションの補完」「ソーシャルメディアを契機とする新たなコミュニケーション」に効果  ソーシャルメディアの利用者は、利用を通じて、既存の人間関係について絆を深めたり(図表3-2-3-15)、様々な人とコミュニケーションをとったり(図表3-2-3-10)、ソーシャルメディアによって初めて知り合った人と実際に会う(図表3-2-3-17)などにより新たな人間関係について絆を深めている。このように、地縁、血縁が薄れゆく中で、ソーシャルメディアが「オフラインコミュニケーションの補完」「ソーシャルメディアを契機とする新たなコミュニケーション」に効果を発揮していることがわかった。 ●身近な不安・問題の解決を実現  また、ソーシャルメディアの利用者の多くが「自分や家族の進学・就職・結婚・育児等の問題が解消した」、「自分や家族・親戚の健康上の不安・問題が解消した」、「老後のくらしに希望が持てるようになった」等身近な不安・問題の解決を実現していた(図表3-2-3-10)。さらに、ソーシャルメディアの利用者がソーシャルメディアによって初めて知り合った人と実際に会う理由として「専門家や経験者に相談・質問するため」に代表されるように、「問題の解決」を理由に挙げる人もいた(図表3-2-3-18)。加えて、SNS、Twitter上のコミュニティでの交流頻度が高い人ほど、ソーシャルメディアを利用して身近な不安・問題の解決等を実現している度合いが高いとの結果も得られた(図表3-2-3-19)。 ●人と人との絆を深め、身近な不安や問題を解決し、人と人とが支え合うためのツールとして活用。孤立するおそれのある人が支え合いのネットワークを持つことにも寄与し、ICTの力で国民の幅広い層を包摂することが期待される  ソーシャルメディアには多くの効用があり、多くの人は目的に応じた使い分けをしていると考えられるが、これらの分析から、ソーシャルメディアは、人と人とを結びつけ、その絆を深め、現実社会における身近な不安や問題を解決し、人と人とが支え合うためのツールとしても活用されていることが確認できた。時間と場所の制約の無いソーシャルメディアの利用により、社会の中で孤立するおそれのある人が支え合いのネットワークを持つことにも寄与し、ICTの力で国民の幅広い層を包摂することが期待される。 14 「テレビ」、「ラジオ」、「新聞」、「雑誌・書籍」、「ソーシャルメディア」、「マスコミ・企業・自治体等のHP」等10のメディアを選択肢として提示し、日常的に入手する社会ニュース、政治経済情報等12の情報についてどのメディアを最も良く利用しているかに関して回答を得た。このうち、「友人・知人の情報」「趣味・嗜好に関する情報」「ボランティア・社会活動に関する情報」「共有(シェア)・レンタルに関する情報」「ショッピングに関する情報」「社会ニュース」の6種類の情報について分析を行った 15 具体的には「趣味や遊び仲間のグループ」「学校の同窓会関係のグループ」「仕事を離れたつきあいのある職場仲間のグループ」「習い事や学習のグループ」「ボランティア活動に関するグループ」「町内会・自治会活動に関するグループ」「PTA活動に関するグループ」「生協・消費者団体の活動に関するグループ」「農協や同業者の団体の活動に関するグループ」「労働組合の活動に関するグループ」「住民運動・市民運動の活動に関するグループ」の11のコミュニティを提示し回答を得た 16 グラフ中の「全体」については、「SNS」「ブログ」「Twitter」のほか、「ネット上の掲示板」「地域SNS」「ミニブログ」「その他」を含んだ数値となっている(以下の分析においても、基本的に同様の分析を行っている) 17 「家族・親戚の絆」等9項目について、ソーシャルメディアを利用してそれぞれの絆が「深まった」、「やや深まった」の回答者数の合計を、その絆に関して「ソーシャルメディア上での交流はない」と回答した人を除いた利用者数で除して、それぞれの絆ごとに交流があった人の中で絆が深まった人の比率を算出した 18 具体的には「1〜5人」「6〜10人」「11〜20人」「21〜30人」「31〜50人」「51〜100人」「101〜200人」「201人以上」「出会ったことはない」の選択肢を提示し回答を得た 19 具体的には、「町内会・自治会活動に関するグループ」や「趣味や遊び仲間のグループ」など12のコミュニティを提示し、「あなたがよくソーシャルメディアを利用しているコミュニティから、最もよく利用している順に最大三つまで選択して下さい。」、「お選びいただいたコミュニティごとに、交流頻度についてそれぞれあてはまるものを選択して下さい。」との質問から得られた回答のうち、最もよく利用しているコミュニティの交流頻度を抽出して分析に使用した 20 具体的には、「自分や家族の進学・就職・結婚・育児等の問題が解消した」「自分や家族・親戚の健康上の不安・問題が解消した」「家族・親戚間の人間関係がより良好になった」「勤務先・学校での人間関係や業績・成績が良好になった」「収入や資産に関する不安・問題が解決した」「老後のくらしに希望が持てるようになった」「近隣・地域に関わる不安・問題が解消した」の7項目について、ソーシャルメディアを用いて実現した度合い(選択肢は「あてはまる」「ややあてはまる」「あまりあてはまらない」「あてはまらない」の4段階)について得られた回答を分析に使用した 21 具体的には、身近な不安・問題の解決、社会・地域コミュニティの問題解決等について、脚注20の7項目を主成分分析を用いて得点化した。なお、主成分分析とは、複数個の変数を合成して、1個、又は少数個の総合指標を求める方法である。今回の場合は、7項目への回答から、より多くの情報量を含む成分を1個求め、それを「身近な不安・問題の解決、社会・地域コミュニティの問題解決等」の総合指標とした 22 各人ごとに算出された「身近な不安・問題の解決、社会・地域コミュニティの問題解決等の実現度合い」を、ソーシャルメディアの種類別(SNS、Twitter)に当該ソーシャルメディア上のコミュニティでの交流頻度ごとに中央値を求め、図表3-2-3-19を作成した。詳細な作成手順については付注8参照