(4)ソーシャルメディアの課題  このように、様々な効用が認められるソーシャルメディアであるが、ソーシャルメディアが持つ課題について、以下、利用者の利用実態や利用に際しての意識調査を基に分析を試みた。 ア ソーシャルメディアを利用して感じる不安 ●ソーシャルメディアの利用者は、「個人情報の漏えい」、「個人情報の不正利用」、「プライバシーの侵害」等個人情報に関する不安を多く感じる。ブログ利用者は、書き込みをしながらも、不安が高い傾向  ソーシャルメディアを現在利用している人が不安に感じていることを調査すると、「個人情報の漏えい」、「個人情報の不正利用」、「プライバシーの侵害」、「自分の個人情報が消せない」「自分の個人情報や使用履歴を使っておすすめ情報が届く」等、個人情報に関連する不安を抱える人が多いことがわかった。特に、ブログ利用者に不安が高い傾向が見られ、書き込みが多いという利用傾向がある一方で、多くの不安を有していることがわかった(図表3-2-3-20)。 図表3-2-3-20 ソーシャルメディアを現在利用している人の不安 (出典)総務省「次世代ICT社会の実現がもたらす可能性に関する調査」(平成23年) イ ソーシャルメディアを利用しない理由 ●ソーシャルメディアを利用しない人は、興味がないのほか、個人情報を知られたくない、プロフィールを悪用される可能性があるから等の不安が理由  ソーシャルメディア未利用者がソーシャルメディアを利用しない理由のうち、最も多かった「興味がないから」を除くと、「個人情報を知られたくないから」(18.2%)、「不特定多数の人に知られたくないから(知人には匿名であっても自分だと特定できるから)」(9.9%)、「自分のプロフィールを悪用される可能性があるから」(7.5%)、「個人が特定されてしまうから」(6.5%)といった個人情報に関連する理由が多かった。「迷惑メールや詐欺メールが来る可能性があるから」(17.9%)との不安や、「参加のきっかけがないから」(15.7%)との理由も多かった(図表3-2-3-21)。  このように、利用していて感じる不安あるいは利用しない理由として、いずれも個人情報の懸念に関する項目が挙げられており、ソーシャルメディアの利用に関する課題と考えられる。そこで、以下では、まず、利用者が自らの個人情報をソーシャルメディアにおいてどのように開示しているかについて概観し、次に、代表的な個人情報である名前(実名)の利用に関する意識を分析する。 図表3-2-3-21 ソーシャルメディアを利用しない理由 (出典)総務省「次世代ICT社会の実現がもたらす可能性に関する調査」(平成23年) ウ 個人情報の開示状況及び実名の利用状況  (ア)自らの個人情報開示の状況 ●SNS利用者は情報を開示し、Twitter、ブログ利用者は開示しない。趣味・嗜好等は多くが開示する一方、電話番号、住所等は限定的。実名は友人等に限っての開示率は高い  ソーシャルメディア利用時の自身の情報の開示範囲について、ネット全体に開示する情報とソーシャルメディア上の友人等に制限して開示する情報とに分けて聞いたところ、ソーシャルメディアの種類別では、SNSの利用者が、住所、自分の写真、自分の勤務先/通っている学校、実名、学歴、職業、生年月日、血液型、出身地等全般的に情報を開示する傾向があった。一方、Twitterやブログの利用者は、全般的に情報を開示しない傾向があった。ただし、ブログ利用者については、家族構成、メールアドレス、趣味・嗜好については開示率が高かった。  開示する情報としては、ネット全体に開示する情報とソーシャルメディア上の友人等に制限して開示する情報のいずれも、「生まれた年」「生まれた月日」「血液型」「出身地」「趣味・嗜好」等が高い開示率となっている。「電話番号」「住所」「家族構成」「自分の写真」「勤務先/通っている学校」は低い開示率となっており、それらのネット全体に対する開示率は10%未満となっている。  「実名」については、ネット全体への開示率は低いものの(12.2%)、ソーシャルメディア上の友人等に制限しての開示率は必ずしも低くなく(39.8%)、両者の開示率の乖離が最も高い結果となっている。特にSNSの利用者については、ソーシャルメディア上の友人等に制限しての開示率は46.7%に上った(図表3-2-3-22)。 図表3-2-3-22 ソーシャルメディア利用時の自身の情報の開示範囲 (出典)総務省「次世代ICT社会の実現がもたらす可能性に関する調査」(平成23年) ●勤務先/学校、学歴、出身地、趣味等は若年層の開示率が高い。電話番号、住所、実名、メールアドレス等は高齢層の開示率が高い。中年層は低い開示率  また、ソーシャルメディア利用時の自身の情報のネット全体への開示範囲を世代別で見てみると、「勤務先/通っている学校」「学歴」「職業」「生年月日」「血液型」「出身地」「趣味・嗜好」等の情報は若年層の開示率が高く、中年・高齢層の開示率が低かった。逆に、「電話番号」「住所」「実名」「メールアドレス」等の情報は、若年層は開示率が低く、高齢層の開示率が高かった。高齢層が、1対1でのコミュニケーションを志向しこれらの情報をより開示しているのではないかとも考え得る。  なお、中年層については「上記のいずれも開示していない」が33.8%と他の世代より高い等、全般的に開示率が低かった(図表3-2-3-23)。 図表3-2-3-23 ソーシャルメディア利用時の自身の情報のネット全体への開示範囲(世代別) (出典)総務省「次世代ICT社会の実現がもたらす可能性に関する調査」(平成23年) (イ)実名利用の状況 ●SNS、地域SNSは相対的に高い実名利用率。掲示板利用者の約3分の2、ブログ、Twitter利用者の過半数が、現実世界の自分と結びつかないハンドルネームを利用  ソーシャルメディアの利用時、実名、現実世界の自分と結びついているハンドルネーム、現実世界の自分と結びついていないハンドルネームの何れを利用しているかについて、ソーシャルメディアの種類別に調査23したところ、実名の利用率は、SNSが20.9%、ブログが5.5%、Twitterが7.2%、ネット上の掲示板が4.0%、地域SNSが17.5%、ミニブログが9.6%であり、SNS、地域SNSについては相対的に高い実名利用率であった。また、現実世界の自分と結びついていないハンドルネームの利用率は、ネット上の掲示板が68.4%と顕著に高い結果となったほか、ブログ、Twitterについても半数以上という結果であった(図表3-2-3-24)。 図表3-2-3-24 ソーシャルメディアでの実名・ハンドルネーム利用率(ソーシャルメディアの種類別) (出典)総務省「次世代ICT社会の実現がもたらす可能性に関する調査」(平成23年) ●男性の実名利用が多い。また、高齢層は実名や現実世界の自分と結びついたハンドルネームの利用率が最も高く、中年層の約半数は現実世界の自分と結びつかないハンドルネームを利用  性別でみると、実名利用は男性の方が多かった(13.1%)。  世代別では、高齢層が実名、現実世界の自分と結びついているハンドルネームともに利用率が世代別で最も高く、現実世界の自分と結びつかないハンドルネームの利用率は低い結果であった。逆に、中年層は、実名、現実世界の自分と結びついているハンドルネームともに利用率が世代別で最も低く、また、約半数が現実世界の自分と結びつかないハンドルネームを利用するという結果であった(図表3-2-3-25)。 図表3-2-3-25 ソーシャルメディアでの実名・ハンドルネーム利用率(性別、世代別) (出典)総務省「次世代ICT社会の実現がもたらす可能性に関する調査」(平成23年) エ ネットと現実における意識・行動 ●ネット上のほうが現実世界よりいいたいことが言えるとの回答が6割の反面、4分の3はネット上の匿名での行動、発言でも現実の自分と関係があると認識  ネットと現実における意識や行動の違いについて見てみると、「ネット上での付き合いのほうが現実世界より関係の遮断が容易である」(63.6%)、「ネット上のほうが現実世界より、いいたいことが言える」(60.3%)、「ネット上のほうが現実世界より、年齢・職業等に関係ないフラットな付き合いができている」(58.3%)と、ネットと現実について異なる意識や行動がうかがえる結果があった反面、「ネット上のほうが現実世界より、その場の雰囲気で行動(発言)することが多い」(48.3%)、「ネット上のほうが現実世界ほど深く考えずに行動(発言)している」(48.2%)、「ネット上で匿名で行動(発言)している限り、現実の自分とは関係が無い」(24.8%)のように、実社会での自分への影響等を意識した上でネット上の行動(発言)をしていることをうかがわせる結果が得られた。特に、「ネット上で匿名で行動(発言)している限り、現実の自分とは関係が無い」と回答している人は4分の1に過ぎず、4分の3の回答者は、ネット上で匿名で行動(発言)していても、ネット上での自らの行動(発言)が現実の自分と関係が有ると認識している結果となった(図表3-2-3-26)。 図表3-2-3-26 ネット上での意識・行動 (出典)総務省「次世代ICT社会の実現がもたらす可能性に関する調査」(平成23年) 23 SNS、ブログ、Twitter、ネット上の掲示板、地域SNS、ミニブログの6種類について質問をした。また、複数の種類のソーシャルメディアを利用している場合には、利用するソーシャルメディアの種類ごとに、実名等の回答を得た