本編 第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋 第1章 成長戦略の要となるICTとグローバル展開 第1節 ICTが導く成長への道筋  東日本大震災の発生は、持続的成長の確保が課題となっていた我が国の社会経済に大きな影響を与えた。我が国は既に人口減少・高齢化の進展など様々な課題に直面しており、今後、日本再生という課題に対応していくには国民一体となった取組が求められている。  このような中、我が国は、ICT分野を成長への重点分野の一つとして政策を展開してきた。その結果、ブロードバンドゼロ地域は解消し、地上デジタル放送への完全移行を達成し、インターネットや携帯電話は広範に普及し、新たにスマートフォン等もクリティカルマスを超え普及を伸ばした。もはやICTは当たり前のものになり、ICT分野で日本は先導してきたというのは広く定着した認識であるようにもみえる。  その一方で、ICTをめぐる国際指標における日本の評価は停滞している。また、ICT産業の一角を占める携帯電話端末製造事業やテレビ製造事業は、大きく売り上げを落とし、それらへの依存度が高かった電機メーカーは軒並み厳しい平成23年度決算を計上した。  我が国が最先端のICT国家となることを目指した高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)成立から10年以上が経過し、世界最先端のICTインフラ構築を成し遂げたが、それ以降、ICTの浸透は様々な課題に直面している。他方、例えば、韓国では、IMFショック以降、ICTを国家の発展の中心に据え、スマートフォンをはじめICTの分野で世界をリードしつつある。ICT分野には、日本を成長に導く力があるのだろうか。それとも、我が国にとって、ICT分野の取組は十分進めたので、この分野に注力することによる成長けん引力はさほど残されていないのだろうか。