2 ICT産業のもたらす経済波及効果分析 (1)ICT産業の経済波及効果  第4章第1節で記載しているとおり、平成22年の情報通信産業の市場規模(名目国内生産額)は85.4兆円で全産業の9.2%を占めており、情報通信産業は我が国全産業の中で最大規模の産業として、我が国の経済成長をけん引してきた。  では、ICT産業の成長の源泉はどこにあるのだろうか。また、どのように変遷してきているのだろうか。以下、九州大学大学院経済学研究科 篠崎彰彦教授の協力の下、ICT産業を部門ごとに分解して分析を行った。  ICT産業の経済波及効果を部門ごとに見てみると、ICT産業の経済波及効果の増加要因は情報サービス業、通信業、放送業、インターネット付随サービス業にあることがわかる(図表1-3-2-1)。これらの増加分がハードウェア産業の減少分を上回っている。例えば、ハード産業の経済波及効果はリーマンショック後も減少を続けたが、上位レイヤー及びネットワークインフラ産業の経済波及効果の増加が大きく、ICT産業全体の増加をけん引している。特に、ICTの上位レイヤー関係サービスについては、労働集約的な業態であることとの裏返しでもあるが、雇用誘発力が大きい。 図表1-3-2-1 ICT産業部門の経済波及効果の推移 (出典)総務省「情報通信産業の現状に関する調査研究」(平成24年)  最終需要の推移でみると、通信機械・同関連機器や電子計算機・同付属装置といったハード産業は、リーマンショックの影響で外需(輸出)が大きく減少している(図表1-3-2-3)。加えて、内需(図表1-3-2-2)も減少したため、経済波及効果が減少している。一方、情報サービス業、通信業、放送業、インターネット付随サービス業といったソフト・サービス産業は、外需(輸出)の影響が小さく、内需が堅調に増加したため、経済波及効果も増加している。 図表1-3-2-2 内需(国内最終需要額)の推移 (出典)総務省「情報通信産業の現状に関する調査研究」(平成24年) 図表1-3-2-3 外需(輸出額計)の推移 (出典)総務省「情報通信産業の現状に関する調査研究」(平成24年)