1 我が国における情報資本の蓄積による成長効果の実証 (1)生産関数分析の推計モデル  まず、ICTが経済成長に対してどのような寄与をしているかについて、マクロレベルで生産関数モデルを基に分析を行った。生産関数モデルは、労働、資本といった生産要素を生産過程に投入することによって、生産物が産出されるという生産構造を想定したモデルである(図表1-4-1-1)。今回の分析では、すべての生産要素の投入をα倍すると、産出量も同様にα倍になるという「規模に関して収穫一定(一次同次性)」を想定した分析を行った。また、情報資本ストック2については、その貢献を明確にするため、そのほかの一般資本ストックと分けた変数で分析を行った。 図表1-4-1-1 生産関数モデルの概念 生産関数モデルとは、生産要素(労働、資本)を生産過程に投入して、生産物を算出 (出典)総務省「ICTが成長に与える効果に関する調査研究」(平成24年)  日本のマクロ経済全体を対象として、1985年(昭和60年)から2010年(平成22年)までの時系列データを用いた分析を行った。ここで用いた生産関数モデルは次のとおりであり、労働生産性の変化が一般資本の装備率要因と資本ストックの構成変化要因(資本設備の情報化要因)で説明されることを意味している。 1 TFP(Total Factor Productivity : 全要素生産性)とは、資本投入や労働投入の伸びでは説明できない経済成長部分であり、一般に技術革新、経営ノウハウ等の知識ストック、企業組織改革、産業構造変化等の要因が含まれると理解されている。 2 ここでは情報資本の範囲について、「コンピュータ関連」(パーソナルコンピュータ、電子計算機本体(除パソコン)、電子計算機付属装置)、「通信機器」(有線電気通信機器、携帯電話機、無線電気通信機器(除携帯電話機)、その他の電気通信機器)、「事務用機器」(複写機、その他の事務用機械)、「通信施設建設」(電気通信施設建設)、「ソフトウェア」(ソフトウェア業)としている。