(1)ICTを活用した「街づくり」に係る地方自治体調査 地方自治体がICTを活用した街づくりについてどのように考えているか実態を把握し、ICTを活用した街づくりの推進における課題を明らかにするため、地方自治体を対象としたアンケート調査 1 を実施した。同調査の結果を紹介する。 ア ICTを活用した街づくりの認知度 まず、「ICTを活用した街づくり」の取組が、どの程度、地方自治体に浸透しているかについて尋ねたところ、「聞いたことがある程度で、内容はあまり知らなかった」との回答が5割近くを占めた(図表2-2-1-1)。続いて、地方自治体の規模別に見ていくと、都道府県は市区町村に比べると「ICTを活用した街づくり」の認知度が高いとの結果が出た(図表2-2-1-2)。 図表2-2-1-1 ICTを活用した街づくりの認知度 (出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状等に関する調査研究」(平成25年) 図表2-2-1-2 ICTを活用した街づくりの認知度(自治体規模別) (出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状等に関する調査研究」(平成25年) イ 街づくりの観点から地方自治体が抱える課題 ICTを活用した街づくりを検討する前提として、街づくりの観点から地方自治体が抱える課題について尋ねたところ、少子高齢化が75.9%と最も高く、次いで産業・雇用創出(62.9%)、安全・安心な街づくり(55.5%)、社会インフラの老朽化(41.1%)の順となった。昨年の結果と比較すると、「安全・安心な街づくり」及び「公共サービスが利用困難な『弱者』の増大・地域間格差の拡大」が課題であると回答した地方自治体が大幅に増加しているほか、全般的に課題であるとの回答が増えており、地域が直面する課題が一層深刻化していることがうかがえる(図表2-2-1-3)。 図表2-2-1-3 街づくりにおける課題 (出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状等に関する調査研究」(平成25年) ウ ICTを活用した街づくりへの取組状況 それでは、実際に自治体が「ICTを活用した街づくり」にどの程度取り組んでいるかについて尋ねたところ、全般的な傾向は昨年と変わらず、取組を進めているまたは取組を進める方向で検討している地方自治体は9.3%にとどまっている。他方、関心を有しない自治体は前年より大きく減少しており、地方自治体の関心が以前より高まってきていることがうかがえる(図表2-2-1-4)。 図表2-2-1-4 ICTを活用した街づくりの取組状況 (出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状等に関する調査研究」(平成25年) また、地方自治体の規模別でみていくと、ICTを活用した街づくりへの関心度は、都道府県>市・特別区>町村の順となっている(図表2-2-1-5)。 図表2-2-1-5 ICTを活用した街づくりの取組状況(地方自治体規模別) (出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状等に関する調査研究」(平成25年) エ ICTを活用した街づくりへの期待と課題 「ICTを活用した街づくり」で期待する分野について尋ねたところ、「安心・安全分野」(49.8%)、「医療・介護・福祉・教育等の生活分野」(40.8%)の順となったのは、昨年と同じ傾向であるが、昨年の調査では選択肢を設けていなかった「個別分野にとらわれず、共通の方針として実施したい」に34.5%が回答するなどなど、ICTを総合的に街づくりにおいて活用したいとの意識が垣間見える(図表2-2-1-6)。 図表2-2-1-6 ICTを活用した街づくりの期待分野 (出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状等に関する調査研究」(平成25年) 「ICTを活用した街づくり」に期待する成果について尋ねたところ、安心・安全面の強化が64.6%、公的なサービスの維持・充実が59.4%を占め、ここでも他を大きく引き離している。この結果から、地方自治体は経済的な効果を狙うことよりも住民生活の維持・向上のためにICTを活用したいとの意向が強いことが見えてくる(図表2-2-1-7)。 図表2-2-1-7 ICTを活用した街づくりに期待する成果 (出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状等に関する調査研究」(平成25年) 地方自治体がICTを活用した街づくりを進める際に、どのような点を課題・障害として考えているのかについて尋ねたところ、「財政的に厳しい」との回答が7割近くあったが、「具体的な利用イメージ・用途が明確でない」や「効果・メリットが明確でない」といった回答が続いて並んでおり、これらの「見える化」を図っていくことが、今後、「ICTを活用した街づくり」を推進する上で重要な課題であることが見えてきた。また、「部門・地域毎で共通利用できるシステムの整備が進んでいない」との回答も半数近くに上っており、財政面や人材面での制約から、システムの共通利用に活路を見いだそうとする地方自治体の存在もうかがえる回答となっている(図表2-2-1-8)。 図表2-2-1-8 ICTを活用した街づくりの課題・障害 (出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状等に関する調査研究」(平成25年) オ ICTを活用した街づくりの推進体制 実際にICTを活用した街づくりに取り組んでいる地方自治体及び検討中の地方自治体を対象に、どのような体制でICTを活用した街づくりを推進しているかについて尋ねた。体制については、「庁内での横断的な組織」が最も多かったが、「個別事業の内容ごとに各担当部門が専ら検討」という分業的な体制を回答する地方自治体も多く、おおむね二分されていると言えよう。また、「民間企業・市民など外部の関係者や有識者を含む横断的な検討組織」との回答は1割程度にとどまり、庁内での検討が主流であることがうかがえる(図表2-2-1-9)。 図表2-2-1-9 ICTを活用した街づくりの推進体制 (出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状等に関する調査研究」(平成25年) また、意思決定に際して、誰の意見が強く反映されるかについて尋ねたところ、「首長・副首長」が43.5%と最も高く、次いで「個別事業の内容ごとに、各担当部門」が25.4%との回答になった。当然の結果とも言えるが、街づくりには地方自治体トップの意向が強く反映されるようである(図表2-2-1-10)。 図表2-2-1-10 ICTを活用した街づくりにおいて、誰の意見が強く反映されるか (出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状等に関する調査研究」(平成25年) 続いて、民間事業者(ICTベンダー、デベロッパー等)の街づくりへの参画について尋ねた。まず、民間事業者がどの段階から参画するのが望ましいかを地方自治体に尋ねたところ、「構想・計画づくり段階」との回答が約6割を占めるなど、アイデアやモノ・カネ等の方式を検討する段階から参画してほしいとの意向が高いようである(図表2-2-1-11)。 図表2-2-1-11 望ましい民間事業者の参画段階 (出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状等に関する調査研究」(平成25年) 他方、民間事業者と協力して進める場合の問題点を尋ねたところ、「継続性での不安」が最も高く5割を超える回答であった。その理由としては、事業採算の悪化時に、民間は経営面から事業の縮小・撤退を検討するのに対し、行政は住民への継続的なサービス提供の観点から、縮小・撤退に即時に踏み切れないとのジレンマによるものと考えられる。なお、その次には「何から進めていいかわからない」、「魅力的な案件がない」といった民間との協力以前の問題点が並ぶ結果となった(図表2-2-1-12)。 図表2-2-1-12 民間事業者と協力して進める場合の問題点 (出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状等に関する調査研究」(平成25年) カ 共通ICT基盤に関する地方自治体の意識・意向 後述するICTスマートタウン先行モデルに向けた実証プロジェクトでは、システム・サービスの効率化を図る観点から、複数の地方自治体が情報共有の基盤として共同運用を行う「共通ICT基盤」の構築・実証が主要目的の一つとなっている。この「共通ICT基盤」について、地方自治体の意識・意向を尋ねた。 共通ICT基盤を整備することへの関心について聞いたところ、約8割の地方自治体は関心を有しているものの、既に取組を始めたり、情報収集に動いたりしている地方自治体は合計で2割弱にとどまっており、関心はあっても動いていない地方自治体が6割強を占める状況にある(図表2-2-1-13)。また、複数の団体と「共通ICT基盤」に関するICTシステムの共同運用の検討についても、同様の結果が示された(図表2-2-1-14)。 図表2-2-1-13 「共通ICT基盤」の整備への関心 (出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状等に関する調査研究」(平成25年) 図表2-2-1-14 複数の団体と「共通ICT基盤」に関するICTシステムの共同運用 (出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状等に関する調査研究」(平成25年) なお、「ICTを活用した街づくり」に積極的な地方自治体であれば、「共通ICT基盤」の構築に関心を有しているかについて調べたところ、情報収集まで含めると5割を超える結果となった(図表2-2-1-15)。 図表2-2-1-15 「共通ICT基盤」の整備への関心(「ICTを活用した街づくり」に積極的な自治体の場合) (出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状等に関する調査研究」(平成25年) 分野別に「共通ICT基盤」による共同運用の意向(希望も含む)について尋ねたところ、「防災・防犯分野」が最も高く、次いで「医療・介護・福祉分野」、「行政サービス・市民サービス分野」が続く結果となった。また、個別分野にとらわれず、「地理空間情報一般」を回答する地方自治体も2割強存在した(図表2-2-1-16)。 図表2-2-1-16 「共通ICT基盤」で共同運用する(したい)分野 (出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状等に関する調査研究」(平成25年) 共通ICT基盤の共同運用における課題について聞いたところ、「財政が厳しい」が62.0%と最も高かったが、次いで「具体的な利用イメージ・用途が明確でない」、「効果・メリットが明確でない」といった回答が続いている。実証プロジェクトを通じてこれらの点を明らかにできれば、共通ICT基盤構築への地方自治体の期待も高まるものと思われる。 また、実際に構築する際の課題である「各団体のニーズ等がまとまりにくい」、「国全体の標準化等が進んでいない」、「主導する団体等が不在」といった回答も目に付く(図表2-2-1-17)。 図表2-2-1-17 共通ICT基盤の共同運用における課題 (出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状等に関する調査研究」(平成25年) 1 調査概要は第1章第1節第2項(3)(地方自治体におけるG空間情報の利活用に関する意識)を参照のこと。