トピック 情報通信メディアの利用時間と情報行動 ワイヤレス・ブロードバンドやスマートフォンの急速な普及により、ソーシャルメディア等のネットワークサービスへのアクセスが飛躍的に容易になり、個人の情報通信メディアの利用動向やメディアに対する意識が変化しつつある。総務省情報通信政策研究所は、東京大学大学院情報学環教授 橋元良明氏ほかの協力を得て、情報通信メディアの利用時間とその時間帯等について調査を行った 4 。以下、その概要を紹介する。 1 平日の主なメディアの利用時間、利用率の比較 利用時間はテレビが最も長い。利用者の割合は、10代、20代ではインターネットの方が高い。 「テレビ(リアルタイム)視聴」 5 、「ネット利用」 6 、「新聞閲読」、「ラジオ聴取」 7 を比較する。 全体の平均利用時間は「テレビ(リアルタイム)視聴」が184.7分と最も長く、しかも、年代が上がるほど時間が長くなった(図表1)。「ネット利用」はそれに次ぎ、10代が108.9分、20代が112.5分で「テレビ(リアルタイム)視聴」とほぼ拮抗しているが、それ以上の年代では、年代が上になるほど利用時間が短くなった。次いで「ラジオ聴取」、「新聞閲読」の順だが、両者とも16分前後とあまり差はない。 図表1 主なメディアの平均利用時間と行為者率 各メディアを利用した人の割合である行為者率は、全体では高いほうから「テレビ(リアルタイム)視聴」、「ネット利用」、「新聞閲読」、「ラジオ聴取」となり、新聞とラジオが逆転した。年代別に見ると、利用時間とは異なり、新聞とラジオの差は年代が上になるほど大きい。「ネット利用」の行為者率は10代と20代は80%を上回っており「テレビ(リアルタイム)視聴」はこれより低かった。 2 主なメディアの利用時間帯と並行利用 テレビとインターネットは1日3回利用者の割合が上昇。新聞は朝の利用が中心。 「テレビ(リアルタイム)視聴」、「ネット利用」、「新聞閲読」、「ラジオ聴取」について、一日のどの時間帯にどのぐらいの割合の人が利用したか、行為者率の推移を示したものが次のグラフ(図表2)である。 図表2 主なメディアの時間帯別行為者率 「テレビ(リアルタイム)視聴」は、7時台、12時台、21時台の3回のピークが発生している。最も高いピークは21時台で44.9%であり、19時台から22時台までは昼のピーク値はもとより朝のピーク値である34.9%をも上回っている。 「ネット利用」も朝昼夜3回のピークがあるが、朝と夜の行為者率は「テレビ(リアルタイム)視聴」に及んでいない。一方、9時台から17時台の日中は、職場や移動中の利用が一定割合あることから、自宅での視聴が多いテレビより行為者率が高くなった。 「新聞閲読」は、6時台の10.7%がピークであり、朝に朝刊を読むことを反映していると考えられる。一方、「ラジオ聴取」は、最も高い7時台でも2.8%であった。 20時から22時台の10代、20代のテレビ視聴者のうち、3割から4割はインターネットとのながら視聴。 次のグラフ(図表3)は「テレビ(リアルタイム)視聴」の行為者率が高まる19時台から22時台までの「テレビ(リアルタイム)視聴」者に占めるネットとの「ながら視聴」の割合である。 図表3 「テレビ(リアルタイム)視聴」にネットの「ながら視聴」が占める割合」 若年層ほど「ながら視聴」の割合が高い傾向があり、10代では30%から40%超、20代についても30%弱から40%超がインターネットとの「ながら視聴」をしていることがわかる。 3 機器・手段別のインターネット利用時間、利用割合 インターネット利用は携帯電話中心。10代、20代に顕著。 機器毎のネット利用時間を示したのが次の図(図表4)である。平均利用時間は、全体で携帯電話(スマートフォン含む)による利用時間がパソコンより長く、年代別に見ても10代及び20代でその差が顕著であった。ただし、40代以上はパソコンによる利用時間のほうが長かった。 図表4 主な機器によるインターネット利用時間と行為者率 一方、利用した人の割合である行為者率は、若年層のみならず全年代で携帯電話(スマートフォン含む)が最も高かった。ただし、携帯電話と二位のパソコンとの差は、10代及び20代では50%近いが、それより上の年代になるほど小さくなった。 主なコミュニケーション手段は通話よりメール、若年層はソーシャルメディアも。10代は通話もネット通話が中心。 主なコミュニケーション手段の内容と時間、利用者の割合を示したものが次のグラフ(図表5)である。 図表5 主なコミュニケーション手段の利用時間と行為者率 利用時間で見ると、全年代で「メール・SMS」が一位となり、「携帯通話」との差は年代が若いほど大きかった。また、10代は「ネット通話」が16.6分と「携帯通話」の2.5分より長く、他の年代よりも無料通話アプリを活用していると考えられる。二位は10代及び20代で「ソーシャルメディア」であり、それ以上の年代は「携帯通話」である。 行為者率も、全年代の一位は「メール・SMS」であり、二位以下も利用時間と同様の傾向にある。 利用者全体の平均で見ると、ネット利用時間はスマートフォンによるものがフィーチャーフォンの2倍以上。若年層ほど利用時間の差が大きい。 「携帯電話(スマートフォン含む)」のネット利用について、スマートフォンとフィーチャーフォンに分けてみる。それぞれの機器を「利用している」と回答した人の平均利用時間を比較すると、すべての項目でスマートフォンのネット利用時間がフィーチャーフォンのネット利用時間の2倍以上になる(図表6)。 図表6 スマートフォンとフィーチャーフォンのネット利用項目別比較 さらに年代別に見ていくと、特に、10代の「ソーシャルメディアを見る・書く」においてスマートフォンとフィーチャーフォンの利用時間の差が大きく、50分以上の開きがあった(図表7)。次に差が大きいのが「メールを読む・書く」、「ブログ・ウェブサイトを見る・書く」、「ネット通話を使う」である。 図表7 スマートフォンとフィーチャーフォンのネット利用項目別比較(10代) 20代についても、10代ほどの差はないが、同様の傾向が見られた(図表8)。 図表8 スマートフォンとフィーチャーフォンのネット利用項目別比較(20代) 特にソーシャルメディアについては、スマートフォンの普及に伴い、若年層の利用時間がさらに伸びることも想定され、今後の推移が注目される。 また、「ネット通話を使う」については、10代、20代ともに、ほとんどがスマートフォンによる利用となっているが、これはフィーチャーフォンで使える無料通話アプリが限定されていること、Wi-Fiによる利用が中心となること等が原因だと考えられる。 このように、全体的にはスマートフォンによるネット利用時間の方が長い傾向が見られるが、10代、20代では、「オンラインゲーム・ソーシャルゲームをする」についてはスマートフォン、フィーチャーフォンで大きな利用時間差がなく利用されていた。オンラインゲーム・ソーシャルゲームは、スマートフォンが普及する以前から、そもそもフィーチャーフォン向けサービスとして発達してきており、人気のゲームがどちらの端末により対応しているかといった事情も影響していると考えられる。 4 平成24年9月20日から10月11日にかけて13歳から69歳までの男女1,500人を対象(性別・年齢10歳刻みで2012年3月住民基本台帳の実勢比例)に、全国125地点、ランダムロケーションクォータサンプリングによる訪問留置調査で実施。 5 テレビ(リアルタイム)視聴:機器を問わず、インターネット放送以外のすべてのテレビ放送の視聴を指し、所有する機器によって録画したテレビ番組の視聴を除く。 6 ネット利用:機器を問わず、メール、ウェブサイト閲覧、動画サイト閲覧、オンラインゲーム等、インターネットに接続することで成り立つサービスの利用を指す。 7 ラジオ聴取:ネットラジオを除く。