第11節 海外の動向 1 海外の情報通信政策の動向 (1)米国の情報通信政策の動向 米国では、従来から実施しているブロードバンド普及促進策や個人情報保護、サイバーセキュリティ対策政策について、政策の内実を拡充しているところである。 ブロードバンド普及促進については、これまで2010年3月の「国家ブロードバンド計画(National Broadband Plan)」に基づき、連邦通信委員会(FCC)は、遠隔地における固定ブロードバンド敷設に対する補助金交付を実施したほか、モバイル・ブロードバンドの普及に向けた周波数の割当てを進めてきた。こうした普及促進策に加えて、敷設したブロードバンドを活用したアプリケーション開発にも力を入れているところであり、2012年6月には、次世代ブロードバンド網普及促進策として「US Ignite」イニシアティブを発表、多数の機関や組織が同イニシアティブに参加している。個人情報の保護についても、2012年2月に発表した政策大綱「ネットワーク社会における消費者データプライバシー(Consumer Data Privacy in a Networked World)」に基づいて、具体的な取組が実施されている。 なお、オバマ政権でFCC委員長を務めたジュリアス・ジェナカウスキー委員長は、2012年3月に任期を残しつつ辞任することを発表した。2013年5月には、オバマ大統領は、次期FCC委員長にトム・ウィーラーを指名した。FCCでは、ネット中立性規則は裁判所の判決待ちの状態であるほか、メディア所有規制の見直しを実施しているところである。また、周波数帯の効率的な利用に向けたインセンティブ・オークションの実施も控えており、次期FCC委員長の手腕が注目されている。 ア 次世代ブロードバンド網普及促進策「US Ignite」 大統領府科学技術政策局(OSTP)及び国立科学財団(NSF)の発案により2012年6月13日に公表された、ギガビット級の超高速ブロードバンド政策である「US Ignite」イニシアティブは、@「行政命令13616号」による連邦政府が所有する土地・建物上にブロードバンド網を構築する際の手続きの整備と、A超高速ネットワークとそのネットワーク向けの次世代アプリケーション開発を支援する団体「US Ignite Partnership」の立ち上げの二つで構成されている。「US Ignite Partnership」では、今後5年間で主要な六つの公共分野(教育と人材開発、高度製造業、ヘルス分野、交通、公衆安全、クリーン・エネルギー)における60の次世代アプリケーションの開発を達成することが目標となっている。 イ モバイル・アプリのプライバシー保護 スマートフォンやタブレット端末上から利用されるモバイル・アプリが収集する個人情報をどのように保護していくかについて具体的な検討が行われている。その契機となったのは、2012年2月に発表、オバマ大統領が署名した政策大綱「ネットワーク社会における消費者データプライバシー」である。米国では、同文書を受けて、国家電気通信情報庁(NTIA)が主催する会合の場において、2012年7月から、モバイル・アプリのプライバシー保護対策として、事業者における行動規範(Code of Conduct)の開発のため、関係事業者を一同に介した協議がもたれている。 また、連邦取引委員会(FTC)では、2012年9月に、モバイル・アプリ開発事業者向けのガイドラインとして、「モバイル・アプリのマーケティング(Marketing Your Mobile App: Get It Right from the Start)」を公表している。同ガイドラインでは、アプリの提供開始時点から、誇大広告を行わず、真実に基づいた情報提供を行うことや、プライバシーに配慮することが重要だとしている。また、プライバシー設定等、消費者に選択肢を用意することや、提示したプライバシー保護対策を忠実に実施すること、子供のプライバシーに配慮することを挙げている。その他、医療情報や金融情報、正確な位置情報等、センシティブな個人情報を収集する際には、利用者から同意を取得しなければならないことや、データのセキュリティに配慮することが必要であるとしている。