(4) クラウドソーシング ア クラウドソーシングとは 昨今利用者が増えつつある働き方の一つとして、クラウドソーシングと呼ばれる仕組みが普及しつつある。クラウドソーシングとは不特定の人(クラウド=群衆)に業務を外部委託(アウトソーシング)するという意味の造語であり、発注者がインターネット上のウェブサイトで受注者を公募し、仕事を発注することができる働き方の仕組みで欧米等を中心に普及が進んでいる。(図表4-1-2-28)。 図表4-1-2-28 クラウドソーシングのイメージ (出典)総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年) 発注者はおもに一般的な企業であり、プラットフォームとなるマッチングサイトにアウトソーシングしたい業務を公募し、受注側は業務内容や得られる収入、求められるスキル等の条件を見ながら、自分が受注したい業務に応募する仕組みが一般的である。発注される業務や成果のやり取り、お互いの連絡等は基本的にインターネット経由で行われるため、受注者側は自分の空いた時間で自宅等にて業務を行う場合も多く、時間や場所に囚われない働き方ができるメリットがある。 イ 我が国のクラウドソーシング動向 わが国におけるクラウドソーシングの利用は2009年頃から本格化したと言われており、矢野経済研究所の調査によると2012年時点でその市場規模は100億円を超えている。国内の市場規模はその後右肩上がりで成長を続け、2017年度には1,473.8億円規模に達する見込みであり、クラウドソーシングの市場活性化に伴いサービス事業者の参画も続いており、既に数十社がサービスを提供している(図表4-1-2-29、図表4-1-2-32)。 図表4-1-2-29 国内クラウドソーシングの市場規模予測 (出典)矢野経済研究所「BPO市場・クラウドソーシング市場に関する調査結果2013」 業務案件の種類としてはプロジェクト形式やコンペ形式、タスク形式等があり、プロジェクト型は一般的に比較的規模の大きい案件であり、時給制もしくは報酬制でスキルが求められるプログラム開発、アプリ開発、ホームページの構築等の案件が一般的である。コンペ形式はロゴやバナーの作成、ネーミングの考案など一定のスキル等が求められ、タスク形式はPCでのデータ入力やアンケート回答など小規模でそこまでのスキルは求められないため受注者のハードルも低く、後者2つについては案件単位で固定給が支払われる報酬制が一般的である(図表4-1-2-30)。 図表4-1-2-30 一般的なクラウドソーシングの案件例 (出典)株式会社クラウドワークス提供資料 業務を受注する側の利用者の年齢層については、女性は30代の子育て層にも人気が出ており、シニア層についてもクラウドソーシングの利用者が増加傾向にあるなど、幅広い性別及び年齢層での利用が進んでいる(図表4-1-2-31)。 図表4-1-2-31 クラウドソーシング登録者における女性とシニア世代((株)クラウドワークスの場合) (出典)株式会社クラウドワークス提供資料 図表4-1-2-32 主な国内のクラウドソーシングサービス事業者 (出典)総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年) (ア)ランサーズ株式会社 ランサーズは2008年に設立されたクラウドソーシング事業を運営している企業である。2014年4月末現在で業務案件は累計約30万件、発注社数は約7万社、登録者数は約30万人となり、デザイン・プログラミング・ライティング等を中心に73種類の業務案件を取り扱い、時間と場所にとらわれない新しい働き方の作り上げていくことを目指している(図表4-1-2-33)。 図表4-1-2-33 ランサーズの事例 (出典)ランサーズ株式会社提供資料 同社では、仕事を完了して初めて報酬を受け取れる成果報酬制度(エスクロー方式 25 )が導入されており、発注者から仕事結果に対して5つ(スピード、品質等)の視点で評価される評価制度を備え、良い評価が集まれば更に仕事の依頼が集まりやすくなる仕組みとなっている。不正ユーザーやトラブル等の対策には、24時間の監視体制を整えているほか、免許・登記簿等による本人確認や機密保持確認を任意で提供し、電話による業務実績まで確認して審査する「認定ランサー」制度の整備も進めている。加えて、プログラム(PHP, ruby等)やデザイン(Adobe Illustrator等)のオンライン試験を導入することで発注者側が登録者(受注側)のスキルを把握できる取組みも行っている。 また、同社は2014年2月に通信事業者のKDDIと業務提携を行い、人材不足や新規顧客開拓などの中小企業が抱える課題の解決に対してもクラウドソーシングの活用を進めている(図表4-1-2-33)。 (イ)株式会社クラウドワークス クラウドワークスは2012年3月に設立されたシステム開発・WEB制作・デザイン・記事執筆など、約70業種を取り扱う総合型のクラウドソーシングサービスの企業であり、2014年4月現在で約15万人が登録している。大手企業を始めとした3万社の企業や地方自治体等も利用しており、岐阜県との地域活性化プログラムでの提携や福島県南相馬市と共同での雇用創出支援プログラムなど、行政組織と連携してのプロジェクトも展開している。 同サービスの流通金額は2012年のサービス開始以来の2年間で40倍近くまで拡大しているが、女性利用者の利用者も多く、2013年に行われた同社調査では女性登録者の最多層は30代前半となっており、53%が子育て中、半数以上がスキルを活かした仕事をしていると回答している。こうした調査結果から、同社はクラウドソーシングが出産・育児に伴って離職した女性にとって、暮らしと収入確保を両立するセーフティネットとしての側面が生まれているとみている。 また、利用者間のコミュニケーション円滑化の仕組みとして、質問への回答者や仕事の成果に対する相手への感謝の気持ちを伝えられる「ありがとうボタン」を設置しており、同ボタンの累計利用回数は60万回にのぼる。同社ではこのボタンを押された回数や、サービス内で利用者同士が質問に答え合う「お仕事相談所」でのやりとりの内容も利用者のプロフィールに掲示しており、仕事の評価に加えて「人柄の良さ」を評価軸としている点が、特徴的なサービスとなっている(図表4-1-2-34)。 図表4-1-2-34 クラウドワークスの事例(右図は「ありがとうボタン)と「お仕事相談所)) (出典)株式会社クラウドワークス提供資料 25 第3者(この場合はランサーズ)が業務発注側から事前に報酬を一時的に預かり、業務完了後に業務受注側に受け渡す方式