(2)コンテンツ消費におけるICT利活用の進展 インターネットの普及は、動画視聴等のコンテンツ消費のあり方も大きく変えつつある。インターネット普及以前、家庭で動画を視聴する方法は、テレビ放送のリアルタイム又は録画での視聴と、レンタル又は購入したビデオパッケージの視聴に限られていた。2000年代半ば以降FTTH等の超高速ブロードバンドが普及すると、インターネット経由での動画視聴が現実的になり、今日では若い年代を中心に利用が広がりつつある(図表2-1-1-6)。 図表2-1-1-6 動画系メディア利用の行為者率 4 (出典)「日本人の情報行動」2005年調査、2012年調査より作成 5 また、YouTube等の動画投稿サイトの利用も広がりつつある。2005年にサービスが開始されたYouTubeは、2013年時点で国内約2,800万人が利用している(図表2-1-1-7)。2006年にサービスが開始されたニコニコ動画の有料会員数は年々増加を続け、2014年12月には、ニコニコ動画を含めた「niconico」サービス全体で241万人に達している(図表2-1-1-8)。 電子書籍の利用も広がっている。電子書籍の市場規模は2002年度には10億円だったが、2013年度には936億円に達した。2000年代後半に市場の拡大を牽引していたのはフィーチャーフォン向けの電子書籍だったが、2010年代に入ってからは、スマートフォン、タブレット、電子書籍専用端末といった新たなプラットフォーム向けの電子書籍が急速に成長した。2012年度にこれらの新たなプラットフォーム向け電子書籍市場がフィーチャーフォン向け電子書籍市場を逆転し、2013年度では電子書籍市場全体の大半を占めている。 インターネットを通じた音楽配信も拡大した。一般社団法人日本レコード協会の調査によると、インターネットでの有料音楽配信の売上実績は、2005年には約350億円だったが、フィーチャーフォン向けの音楽配信が市場をけん引し、2008年には900億円を超えるまでに成長した。 しかし、2010年から市場は全体として縮小に転じ、2014年には約440億円となっている(図表2-1-1-10)。同協会では、スマートフォンの普及に伴い、フィーチャーフォンで利用していた音楽配信サービスの代わりにYouTube等の無料動画配信サービスを通じて音楽を聴く層が増えたことが、市場縮小の一因であると分析している 6 。同協会が2013年に行った別の調査によると、音楽の最終的な入手手段として、無料動画配信サービスを通じて音楽を聴く人の割合は、自分の好きなアーティスト(ファンである等)の楽曲(新曲等)では13.4%である。しかし、自分が知っているアーティストだが新たに知って気になった楽曲(新曲や、友人・知人に教えてもらった曲等)では23.9%に上がり、自分が全く知らないアーティストだが新しく知って気になった楽曲(テレビ、お店や街中などで聴いた曲等)では29.7%に達する(図表2-1-1-11)。 ゲーム(コンピューターゲーム)利用の在り方も、インターネットの普及と高度化に伴って変化してきた。オンラインで対戦する囲碁や将棋等のゲームは、80年代後半のパソコン通信時代から存在したが、90年代後半以降、インターネットの普及を背景として、多数のプレイヤーが同一のサーバーに接続して世界観を共有するMMO(Massively Multiplayer Online)型のオンラインゲームが登場し、一部のユーザー層に普及していった。また、ウェブブラウザ上で動作するブラウザゲームも登場し、「iモード」等の携帯電話インターネットの普及とともに利用が広がった。その後2010年代に入りスマートフォンの普及が進むと、スマートフォン上でプレイするゲームが幅広いユーザー層へと急速に普及した。スマートフォンゲームは「アイテム課金」 7 等の課金方法により高い市場性・収益性を実現しており、一般財団法人デジタルコンテンツ協会の集計によると、2013年時点でゲーム市場 8 全体の半分近くをオンラインゲームが占めている(図表2-1-1-12)。 4 利用率の一種。調査の2日間の1日ごとに、ある情報行動をした人の比率を求め、2日間の平均をとった数値。 5 ネット系動画の行為者率は2012年調査のみ 6 一般社団法人日本レコード協会『The Record』2012年4月号 7 ユーザーがゲーム内で利用できる追加のアイテムを入手するために料金を支払う課金制度。 8 ここで計算されているのはソフトウェアとしてのゲームの市場規模であり、ゲーム機の販売額は含まれない。