(2)人口流出の背景 地方から東京圏への人口流出の状況は、各地域での就業者数の増減状況と表裏一体となっており、人口流出の主要な要因が経済環境、特に雇用環境にあることを示唆している(図表3-1-1-5)。すなわち、若者にとって魅力的な就業機会が地方に不足していることが、地方から東京圏への若者の流出を招いていると考えられる。実際、総務省が全国の地方公共団体を対象に実施したアンケート 4 でも、約9割の団体が、「良質な雇用機会の不足」を人口流出の原因と考えている(図表3-1-1-6)。他方、雇用主である企業の側をみると、地域・業種を問わず多くの企業が人手不足を感じており、その傾向は近時急速に強まっている(図表3-1-1-7、図表3-1-1-8)。 図表3-1-1-5 過去10年間での就業者数の増減(2003年→2013年の増減数)(出典)まちひとしごと創生会議第1回参考資料1-7@ 図表3-1-1-7 企業における雇用人員判断DI(過剰−不足)の推移(出典)日銀短観を基に総務省作成 このような若者側からみた「雇用不足」と企業側からみた「人手不足」という一見矛盾した現象の背後には、地方における「雇用の質」の問題があると考えられる。すなわち地方では、賃金や安定性、やりがい等の点で良質な雇用が不足しているため、若者が相対的に良質な雇用を求めて東京圏に流出するという事態が生じているものと考えられる 5 。 そして、このような若者流出による人口減少は、労働力人口の減少と消費市場の縮小という形で地域経済の供給面と需要面の双方にマイナスの影響を与え、地域経済を「負のスパイラル」へと陥らせている。 4 アンケートの実施条件の詳細については、巻末付注4を参照。 5 このような問題意識から政府は、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(平成26年12月27日閣議決定)において、2020年までの5年間で地方に30 万人の若い世代の安定した雇用を創出することを目標として掲げた。