(1)地域別の雇用状況とICT 最初に、地域別の雇用状況について確認を行う 14 。図表3-2-2-1には、三大都市圏の政令指定都市、三大都市圏以外の政令指定都市、政令指定都市以外の市町村のそれぞれにおける就業者数の推移を示した 15 。また、図表3-2-2-2には、それぞれの年率換算増減率の推移を示した。1995年までは各地域で就業者数は増加しているが、2000年以降は、全ての地域で就業者数は減少している。また、政令指定都市以外の市町村においては、2005年、2010年で、三大都市圏の政令指定都市、三大都市圏以外の政令指定都市と比べて減少のペースが拡大している。 図表3-2-2-3には、専門的・技術的職業従事者、事務従事者、生産工程・労務作業者及び運輸・通信事業者における就業者に占める割合を地域別に示した。いずれの地域においても就業者に占める専門的・技術的職業従事者の割合は高まっている。就業者に占める事務従事者の割合は、三大都市圏以外の政令指定都市で1990年以降低下しており、三大都市圏の政令指定都市では増減を繰り返し2010年には低下している。また、政令指定都市以外の市町村においても2005年以前は増加の傾向にあるが2010年には低下している。就業者に占める生産工程・労務作業者及び運輸・通信従事者の割合は、いずれの地域においても低下の傾向がみられる 16、17 。 図表3-2-2-4には、地域別の全就業者に占める情報サービス業の就業者の割合を示した 18 、19。三大都市圏の政令指定都市では、全就業者に占める情報サービス業の就業者の割合が上昇し、2010年には4.0%となっている一方で、三大都市圏以外の政令指定都市及び政令指定都市以外の市町村では、全就業者に占める情報サービス業の就業者の割合は三大都市圏の政令指定都市ほどの上昇はみられない。前項の分析でICT供給側の産業の雇用は増加していることが確認できたが、ICT供給側の産業における雇用の増加は、三大都市圏の政令指定都市といった大都市において生じており、三大都市圏以外の政令指定都市や政令指定都市以外の市町村においては、ICT供給側の産業の発展による雇用の増加は限定的であった。 前項で示したビジネスモニターに対する事業所アンケート調査の結果について、三大都市圏の政令指定都市と三大都市圏以外の政令指定都市、政令指定都市以外の市町村に分けて集計した結果をみると、ICTの進展度が平均より高いグループの割合は、三大都市圏の政令指定都市において46.4%と高く、次いで、三大都市圏以外の政令指定都市において41.0%、政令指定都市以外の市町村においては34.1%である。政令指定都市以外の市町村は、三大都市圏の政令指定都市と比べると12.3ポイント、三大都市圏以外の政令指定都市と比べると6.9ポイント低い。前項における分析結果を踏まえると、政令指定都市以外の市町村においては、ICTの進展度合いが低いことから、既存事業の成長、新規事業の創出に伴う雇用創出効果が弱いことがうかがえる(図表3-2-2-5)。 また、図表3-2-2-6に、テレワーク、サテライトオフィス、クラウドソーシングの地域別の利用率を示した。これによれば、大都市圏においてはテレワークやサテライトオフィスが利活用され、在宅や遠隔等の勤務地の制約の緩和が進みつつあるともいえるが、今後とも時間や場所にとらわれない働き方の普及・促進に取り組むことが必要である。加えて地方においては、企業や雇用の地方への流れを促進する観点から、「いつもの仕事をどこにいてもできるテレワーク」(ふるさとテレワーク)を推進していくことも重要であるといえる。 14 以下本項では、地方の雇用創出のためには、地方の中核都市が重要な役割を果たすと考えられることから、地域分類を、三大都市圏の政令指定都市、三大都市圏以外の政令指定都市、政令指定都市以外の市町村とした。なお、東京都の特別区は、三大都市圏の政令指定都市に含めた。 15 時系列で比較できるように、2005年以前の就業者については、2010年の政令指定都市の区分に合わせて市町村の就業者数を集計した。 16 総務省「国勢調査」を時系列で比較できるように、職種分類の大分類を集計した。 17 総務省「国勢調査」における生産工程・労務作業者及び運輸・通信従事者は、総務省「産業連関表」雇用マトリクスの分類の運輸・通信従事者、製造・制作作業者、定置機関運転・建設機械運転・電気作業者、採掘・建設・労務作業者に対応する。前項の分析では、これらの職種は、ICTと代替的な関係が検証された。 18 総務省「国勢調査」において、時系列で産業分類が揃うように集計を行った。1985年、1995年は、情報サービス・調査・広告業を用い、1995年、2000年は、情報サービス・調査業と広告業を合計したものを用い、2005年、2010年は情報サービス業と広告業を合計したものを用いた。 19 データの制約のため、2000年以前の三大都市圏の政令指定都市には合併後にさいたま市となる浦和市、大宮市、与野市、岩槻市のうちの浦和市、大宮市、岩槻市のデータのみが含まれる(与野市は政令指定都市以外の市町村に含まれる)。また、2005年以前の就業者数については、2010年の政令指定都市の区分と同じになるように、政令指定都市へ合併された市町村の就業者数を合計する必要があるが、データの制約のため、合併された市町村の就業者数は考慮されていない。