(2)シェアリング・エコノミー型サービスへのニーズ このように海外では、様々なシェアリング・エコノミー型サービスが登場し、普及しつつある。それでは、このようなサービスに対し、日本の消費者はどのような利用意向をもっているのだろうか。以下、アンケート調査 10 の結果に基づき分析する。 ア 海外シェアリング・エコノミー型サービスの利用意向 海外で普及しつつある以上のようなシェアリング・エコノミー型サービスについて、サービス種類別に日本の消費者の利用意向を尋ねた。その結果をみると、「一般のドライバーの自家用車に乗って目的地まで移動できるサービス」について「利用したい」あるいは「利用を検討してもよい」と答えた人は22.9%、「旅行先で個人宅の空き部屋などに宿泊できるサービス」について「利用したい」あるいは「利用を検討してもよい」と答えた人は26.4%となり、いずれも「利用したくない」あるいは「あまり利用したくない」と答えた人を下回った(図表4-2-1-9)。現段階では日本の消費者の多くはこれらのサービスの利用に対して慎重であることがわかる。 利用意向を年代別に見ると、「一般のドライバーの自家用車に乗って目的地まで移動できるサービス」と「旅行先で個人宅の空き部屋などに宿泊できるサービス」のいずれについても、20代以下の利用意向が最も高く、年代が上がるにつれて利用意向が低くなる傾向がある。(図表4-2-1-10)。 イ 海外シェアリング・エコノミー型サービスを利用したくない理由 シェアリング・エコノミー型サービスを利用したくないと回答した人(「あまり利用したくない」又は「利用したくない」と回答した人)にその理由を尋ねたところ、「事故やトラブル時の対応に不安があるから」を挙げた人が約6割で最も多かった。未知のサービスであるため、事故やトラブル時の対応に漠然とした不安を感じる人が多く、信頼性の向上が課題となっていることがわかる。他方、「利用者の口コミによるサービス評価には限界があるから」や「企業が責任をもって提供するサービスの方が信頼できるから」を理由に挙げた人はそれぞれ1割、2割程度にとどまり、必ずしも多くない(図表4-2-1-11)。C2Cサービスの品質を口コミ評価によって担保するというシェアリング・エコノミー型サービスの基本的な仕組み自体は、広く受け入れられる余地があることがうかがえる。 利用したくない理由を年代別にみると、両サービスとも「事故やトラブル時の対応に不安があるから」が各年代で共通に高く、「利用者の口コミによるサービス評価には限界があるから」が各年代共通で低い。利用したくない理由には年代によって大きな違いがないことがわかる。ただし、「企業が責任をもって提供するサービスの方が信頼できるから」を理由に挙げた人は20代以下が他の年代に比べてやや多い(図表4-2-1-12)。 ウ 国内におけるシェアリング・エコノミー型サービスの例 海外におけるシェアリング・エコノミー型サービスの急速な普及に触発され、国内でもシェアリング・エコノミー型と位置付け得るサービスが提供され始めている。以下、そのいくつかを紹介する。 (ア)駐車場シェアリング・エコノミー型サービス「akippa」 「akippa」は、契約の埋まっていない月極駐車場や使っていない自宅の駐車スペースを持っている人と、外出先で一時的に駐車場を利用したい人とをインターネット上で仲介するサービスである。akippa株式会社が2014年4月からサービスを提供している(図表4-2-1-13、図表4-2-1-14)。駐車場の利用者は、同社が提供するスマートフォンの専用アプリを利用して、どこからでも簡単に空き駐車場の検索や予約を行うことができる。 図表4-2-1-13 akippaの仕組み、及び駐車場予約画面(出典)akippa株式会社提供資料 図表4-2-1-14 利用風景(出典)akippa株式会社提供資料 駐車場の貸し借りは、現在のところ、1日単位で行っている。同社によると、料金は駐車スペースの貸主が自由に設定できるが、おおむね周囲のコインパーキングの7割程度の金額に設定されており、1日あたり500円から1,000円程度となっている。利用料金の6割程度が貸主への報酬として支払われる。現在は東京都と大阪府を中心に駐車場を4.7万台分確保しており、同社では、2016年末までに10万台以上確保することを目標としている。利用者は20代から40代が多く、利用目的は通勤、イベント、旅行の際の利用など多岐にわたっている。2014年2〜8月期と2014年9月〜2015年3月期の登録ユーザー数を比較すると約11倍に伸びており、本サービスへの注目度が上がっていることがうかがえる。 知らない人同士をつなぐというシェアリング・エコノミー型サービスの特性を踏まえ、同社では、利用者が安心してサービスを利用できるよう、様々な工夫を行っている。例えば、駐車スペースの持ち主が新たに駐車場を登録する際には、同社が事前審査を行い、登録内容に間違いがないかを確認している。また、利用者が間違えた場所に駐車しないよう、Googleマップ上での駐車場の表示位置にずれがないかも確認している。さらに、トラブル発生時に利用者や貸主が同社とすぐに連絡が取れるよう、24時間対応の電話窓口を設置している。 (イ)家事代行仲介サービス「Any+Times」 「Any+Times」は、部屋や水回りの掃除、難しい家具の組立て、忙しい時のペットの世話などを、他人に依頼できるウェブ上のサービスである。株式会社エニタイムズが2013年9月からサービス提供を開始した。 日常生活に関わる課題を抱える依頼者が、依頼内容と価格をAny+Timesのサイトに記載すると、該当するスキルを有する登録者(同社では、依頼者の課題を解決する登録者のことを「サポーター」と呼んでいる)が依頼者に見積りや交渉を行う。登録者と依頼者の交渉がまとまると、依頼者は、Any+Timesに支払を行う。その後、登録者が仕事を行い、依頼者はその仕事の結果に対して評価を行う。Any+Timesは登録者に手数料を除いた額の支払を行う(図表4-2-1-15)。 図表4-2-1-15 Any+Timesの仕組み(出典)株式会社エニタイムズ提供資料 家事代行が主要なサービスのため登録者は40代から60代の主婦であることが多いが、サービスの新規性に着目した比較的感度の高い20代の女性や大学生も登録しているケースがある。家事以外の依頼についても登録可能であり、依頼内容によって登録者の属性は異なる。 同社では、他の家事代行サービスと比較した場合の本サービスの強みとして、C2Cサービスであるため比較的安い価格でサービスを提供できることを挙げている。同社ではまた、C2Cサービスがまだ世の中に浸透していないため初回利用時のハードルは高いが、一度利用されれば費用対効果の高さからリピート利用につながっていると分析している。 同社では本サービスを、隠れていた個人の多様なスキルを顕在化させるものと考えており、今後、本サービスを個人の様々なスキルをシェアするプラットフォームに発展させたいと考えている。同社ではまた、近所の課題を解決するという本サービスの利用を通じ、地域内での個人と個人のネットワークが可視化されれば、地域活性化にもつながると期待している。 (ウ)その他 その他、国内でも様々なシェアリング・エコノミー型サービスが提供され始めている 11 。 エ 国内シェアリング・エコノミー型サービスの利用意向 以上のような国内で提供されているシェアリング・エコノミー型サービスを念頭に置いて、アンケート調査で消費者の利用意向等を尋ねた。その結果をみると、「車で外出した際に、空いている月極駐車場や個人所有の駐車スペースに一時的に駐車できるサービス」(駐車サービス)について「利用したい」あるいは「利用を検討してもよい」と答えた人は5割を超えた 12 。一方、「インターネットを通じて、他人の使っていないモノ(楽器、自転車等)をレンタルできるサービス」(レンタルサービス)について「利用したい」あるいは「利用を検討してもよい」と答えた人は3割強、「インターネットを通じて、家事やペットの世話などの仕事を個人に直接依頼できるサービス」(家事依頼サービス)について「利用したい」あるいは「利用を検討してもよい」と答えた人は26.5%となった(図表4-2-1-17)。 年代別に利用意向をみると、各サービス共通して60代以上の利用意向が他の年代に比べて低い(図表4-2-1-18)。海外のシェアリング・エコノミー型サービスの場合と同様、シニア層に受け入れられにくい結果となった。 オ 国内シェアリング・エコノミー型サービスを利用したくない理由 以上のシェアリング・エコノミー型サービスについて、「あまり利用したくない」あるいは「利用したくない」と答えた人にその理由を尋ねた。 利用したくない理由は各サービスともに「事故やトラブル時の対応に不安があるから」が5割から6割で最も高く、次に「個人情報の事前登録などの手続がわずらわしいから」が約3割で続く。他方、「利用者の口コミによるサービス評価には限界があるから」や「企業が責任をもって提供するサービスの方が信頼できるから」を理由に挙げた人はそれぞれ1割未満、2割程度にとどまり、必ずしも多くない(図表4-2-1-19)。海外のサービスの場合と同様、C2Cサービスの品質を口コミ評価によって担保するというシェアリング・エコノミー型サービスの基本的な仕組み自体に抵抗を感じる人は少なく、サービスを実装していく上での信頼性の確保や利便性の向上が課題であることがわかる。 利用したくない理由を年代別にみると、海外のサービスの場合と同様、年代によって大きな違いがないことがわかる。ただし、「企業が責任をもって提供するサービスの方が信頼できるから」を理由に挙げた人は20代以下が他の年代に比べてやや多い(図表4-2-1-20)。 10 調査仕様の詳細は巻末の付注5を参照されたい。 11 各社ホームページより作成。 12 「車で外出した際に、空いている月極駐車場や個人所有の駐車スペースに一時的に駐車できるサービス」については、「自動車免許を現在持っておらず、将来持つ予定もない」と答えた人を集計対象から除いている。