(3)企業におけるテレワークの導入状況 就業者がテレワークでの勤務を希望しても、勤務先にテレワークを可能にする制度や仕組みがないため、テレワークが実施できないケースがあると考えられる。そこで次に、テレワークを可能にするための制度や仕組みを導入しているかどうかを企業に尋ねた。 ア 企業の約4割が「テレワークに適した職種がない」と認識 テレワークのための制度や仕組みを「導入している」と回答した企業は7.9%であり、「検討している」及び「関心がある」と回答した企業を加えても2割程度である。これに対し、「テレワークに適した職種がない」と回答した企業が約4割を占め、そもそもテレワークを導入することができないと考えている企業が多いことがわかる(図表4-3-3-10)。従業員規模別にみると、規模が大きいほど導入率が上がる傾向がある(図表4-3-3-11)。 イ テレワーク導入率は情報通信業で高く、医療・福祉等で低い 業種別にみると、情報通信業での導入が進んでおり、「導入している」企業が2割強、導入を「検討している・関心がある」企業を加えると過半数を超えている。一方、医療、福祉に関しては、「導入している」企業と「検討している・関心がある」企業を合わせても1割に届かず、「テレワークに適した職種がない」という回答が6割を超えており、業種によって大きく状況や認識が違うことがうかがえる(図表4-3-3-12)。 ウ 営業、研究、システム関係での導入率が高い テレワークを「導入している」企業に対しては実際に導入している職種を、導入を「検討している・関心がある」企業に対しては導入が可能と考えている職種をそれぞれ尋ねた。「導入している」企業では、「営業」の導入率が5割を超えて最も多く、次いで「研究・開発・設計」、「システム開発」、「システム運用」の順となっている。これに対し、「製造管理」や「人事・労務・総務」、「経理・管理」での導入率は低い。導入を「検討している・関心がある」企業についてもほぼ同様の傾向がみられた。 大半の職種で、テレワークの導入を「検討している、関心がある」企業の導入可能と考える比率より、「導入している」企業の導入率の方が高くなっており、テレワークを実際に導入できる職種の範囲は導入していない企業が考えるよりも広い可能性を示唆している(図表4-3-3-13)。 エ テレワーク導入企業の半数以上が生産性・業務効率の向上を実現 テレワークを「導入している」企業に対してはテレワークにより実現した効果を、導入を「検討している・関心がある」企業に対しては実現を期待する効果をそれぞれ尋ねた。テレワークを導入した企業の半数以上で生産性・業務効率の向上を実現している。これに対し「社員のワークライフ・バランス」を実現したとする企業は約3割であった。 「生産性・業務効率の向上」については、テレワークを「検討している・関心がある」企業の実現期待率より、「導入している」企業の実現率の方が高くなっており、テレワークが企業の予想以上に生産性や業務効率の向上につながっていることを示唆している(図表4-3-3-14)。 オ 企業からみたテレワーク導入の最大の課題は「情報セキュリティの確保」 テレワークを「導入している」企業に対してテレワーク導入時に課題となった事柄を、導入を「検討している・関心がある」企業に対してテレワークを導入した場合に課題となると考える事柄をそれぞれ尋ねた。テレワークを導入した企業の7割弱、導入を「検討している・関心がある」の7割強が「情報セキュリティの確保」を課題と考えており、情報セキュリティの確保が企業にとっての最大の課題であることが改めて確認できた。 全体に、テレワークを実際に導入している企業よりも、テレワークの導入を「検討している・関心がある」企業の方が、導入に際しての課題を多く挙げる傾向がある。特に乖離が大きいのは「テレワークに対応した社内制度作り」「適正な人事評価」「適正な労務管理」「社員同士のコミュニケーション」である(図表4-3-3-15)。これらの点については、企業が前もって懸念するほどには、テレワーク導入の実際の障害とはなっていないことが示唆される 9 。 9 他方、これらの課題があまり問題にならない企業から導入に踏み切ることができていると見ることもできる。