(2)我が国ICT産業のグローバル展開の意義 本章冒頭で見たように、少子高齢化と人口減少が進む中で我が国が持続的な経済成長を実現していくためには、供給面での生産性向上等に加えて、需要面において、新興国を中心に拡大が見込まれる海外需要を取り込んでいくことが必要である。海外需要を地域別でみると、今後は新興国地域、とりわけ南西アジアやアフリカにおいて人口が大きく増加することが見込まれ、また消費支出も堅調に成長することが予想されている(図表5-2-1-3)。我が国の主要産業であるICT産業 3 のグローバル展開は、このような地域を含め、今後成長する海外需要について、直接的(たとえばサービスや製品の提供)にあるいは間接的(たとえばインフラ輸出におけるICT利活用)に取り込める可能性を秘めており、重要な意義を持つ。 我が国ICT産業のグローバル展開を海外売上高の増加から捉えた場合、その経路としては、「輸出の増加」と「海外現地法人の売上高増加」の二つが挙げられる。このうち輸出の増加は、我が国のGDP成長に直接寄与する 4 。また、海外現地法人の売上高増加は、それが我が国企業の投資収益の向上につながる場合には、国民総所得(GNI)を増加させ、国民一人ひとりの実質的な豊かさの向上に貢献し得る 5 (図表5-2-1-4)。 図表5-2-1-4 ICT産業のグローバル展開の意義(出典)総務省「グローバルICT産業の構造変化及び将来展望等に関する調査研究」(平成27年) ただし、海外現地法人の売上高増加は、ICT製造業(通信機器・端末レイヤー)については、国内生産拠点の海外移転の結果として生じている場合がある。この場合、少なくとも短期的かつ局所的には、国内雇用の減少(いわゆる「空洞化」)が生じると考えられるが、中長期的あるいは日本全体としては、国内雇用はむしろ増加するとの見方もある 6 。 いずれにせよ、モジュール化やコモディティ化、国際水平分業の進んだICT製造業において生産拠点のある程度の海外シフトは不可避であり、輸出と海外現地生産のベストミックスを模索していく必要がある 7 。 なお、総務省が2013年3月に実施したアンケート調査 8 によれば、自社の今後の海外展開について「拡大する」との見通しを持つICT企業は、2020年時点での国内投資や国内雇用についても「縮小する」よりは「拡大する」との見通しを持つ傾向があり、ICT企業のグローバル展開が、国内投資や国内雇用の増加につながる可能性を示唆している (図表5-2-1-5)。 3 2013年におけるICT産業の実質GDPは51.5兆円であり、全産業の10.8%を占める。 4 輸出の拡大には、需要面への貢献に加えて、企業がグローバルな競争環境の中で創意工夫を行うことによる生産性押し上げ効果も期待される。 5 より具体的には、我が国企業の対外投資収益の向上は、国内株主への還元や国内従業員への配分、国内設備投資の増加等を通じて、我が国経済の成長に貢献し得る。 6 中間財の輸出誘発を通じて新たな雇用を創出する可能性や、企業の業績改善を通じて雇用増加につながる可能性が指摘されている。 7 たとえば、既に多くの日本企業が実施しているように、コモディティ化により付加価値が低下した製品・部品については生産コストの安い海外に生産拠点を移し、国内生産拠点はビジネスの核となる高付加価値製品・部品の供給に注力する等の方向性が考えられる。 8 「ICT産業のグローバル戦略に係る成功要因及び今後の方向性に関する調査研究」(平成26年3月)にて実施。