4 ICTサービスレイヤー (1)グローバル市場の動向 ア 市場規模の推移・予測 ICTサービスレイヤーは、主として企業や通信事業者向けのB2Bビジネスとして定義している。よって、その市場規模は、企業のICT支出の規模と一定の関係性があると考えられる。世界のICT支出額 10 は、2014年時点で約1.9兆ドルであり、2019年までに年平均成長率6.9%と堅調に拡大することが見込まれている。市場規模としては北米地域が最も大きく、次いでアジア太平洋地域であり、大規模な事業者が拠点をおく先進国における市場が引き続き牽引すると予想される(図表5-2-4-1)。 図表5-2-4-1 世界のICT支出額の推移と予測(出典)IHS Technology ICTサービスレイヤーにおいて重要なプラットフォームであるクラウドサービスに関しては、2014年実績では約596億ドル規模であったが、2018年には2,000億ドル規模に達すると予想されている。クラウド・コンピューティングは、大きく4つのサービスで構成されている。インターネット経由でソフトウェアパッケージが提供される「SaaS (Software as a Service)」、インターネット経由でハードウェアやICTインフラが提供される「IaaS (Infrastructure as a Service)」、そして、SaaSを開発する環境や運用する環境がインターネット経由で提供される「PaaS (Platform as a Service)」、またクラウドの上でほかのクラウドのサービスを提供するハイブリッド型の「CaaS(Cloud-as-a-Service)」が挙げられる 11 。よって、クラウドの市場においては、システムとしてクラウドを利用するユーザーとシステムを開発・運用するためのユーザーの2種類のユーザーが存在することが分かる。今後は特にCaaS(Cloud-as-a-Service)やPaaS(Platform-as-a-Service)の拡大が期待される。また、特に市場を牽引するのが、北米市場と欧州・中東・アフリカ市場である(図表5-2-4-2)。 次にデータセンター市場について動向をみる。データセンターの市場に関しては、クラウドサービスの他、各種コンテンツの提供・配信基盤であるCDN(コンテンツ配信ネットワーク)や金融分野などにおいて拡大する見込みである。地域別みると、北南米市場が全体の半分以上を占める(図表5-2-4-3)。 イ 市場シェア クラウドサービスの市場シェアを示す。上位5社のシェアを足しても約35%と、比較的競争的な市場である。またICTサービスレイヤーの特徴として、IBMやMicrosoftなどのコンピュータ系事業者、AmazonやGoogle等のインターネット系事業者、DeutscheTelekomやNTTなどの通信事業者、OracleやSAPなどの企業向けソフトウェア事業者など、本節の冒頭において定義したとおり、複数のレイヤーにおける事業者が参入している(図表5-2-4-4)。 図表5-2-4-4 クラウドサービスの市場シェアの推移(上位15社)(出典)IHS Technology 地域別市場をみると、各社とも強みとする地域が異なることがみてとれる。首位のIBMは地域差がなく、全方位的に展開している状況がうかがえる。その他は、米国を中心としたAmazonやSalesforce、欧州地域に強いDeutsche Telecom、アジア地域に強いNTTなどが挙げられる(図表5-2-4-5)。 図表5-2-4-5 クラウドサービスの地域別市場シェア(2013年)(出典)IHS Technology 同様の傾向がデータセンターにもみられる。首位のEquinixは、主要地域に跨って15%以上の市場シェアを有している。NTTは、アジア地域において最も市場占有率が高い。また、KDDIのデータセンター「Telehouse」はアジアや欧州地域において比較的高い市場シェアを有している(図表5-2-4-6)。 図表5-2-4-6 データセンターの地域別市場シェア 12 (2014年)(出典)IHS Technology 10 IHS Technology社レポート“Global ICT Navigator”ではICT支出は、企業のICT関連機器、ソフトウェア、サービスへの支出の合計と定義されている。 11 IHS Technology社レポート“Cloud Services for IT Infrastructure and Applications”による市場区分の定義に基づき、SaaS/IaaS/Paas/CaaSの4区分の整理とした。 12 n/aは当該地域に参入していない、または規模が小さく参照データ無し。