6 通信機器レイヤー (1)グローバル市場の動向 ア 市場規模の推移・予測 通信機器市場を牽引している移動体通信機器市場においては、いわゆるマクロ基地局 20 を主製品とする市場が形成されてきたが、世界的にみると移動体インフラが一定程度構築されてきたことから、今後は徐々に縮小することが予想される。移動体通信システムの技術方式別でみると、これまで大勢を占めた2G/3G向けの機器市場が大きく減少する一方で、4G向けの機器市場が拡大するが、後者の市場規模についても2018年に向けて縮小していく見込みである(図表5-2-6-1)。 一方、4G(LTE-Advanced)そして2020年頃の開始が期待されている5Gなどの次世代移動体通信網では、いわゆる「スモールセル」が多用されることが予想されている。スモールセルとは、従来エリアのカバレッジを高めるために整備されてきた「マクロ基地局」のエリアを補完するとともに、近年急増するトラフィック対策にも期待されている小型基地局の総称である。同機器の市場はマクロ基地局市場の縮小を補うまでの規模はないものの、今後成長が期待される(図表5-2-6-2)。 図表5-2-6-2 スモールセルの世界市場規模の推移及び予測(出典)IHS Technology イ 市場シェア 移動体通信網に係る通信機器の市場シェアの推移を示す。首位はEricssonであり、30%以上の市場シェアを維持してきている一方で、HuaweiやZTE等の中国ベンダーが着実にシェアを拡大している状況である(図表5-2-6-3)。他方、こうした中国ベンダーに押されながらも、端末事業を売却するなどで選択と集中型の経営を図ってきたNokiaは、通信インフラ事業を強化しており、2015年4月にAlcatel-Lucentの買収を発表している。経営統合により業界シェアを高め、Ericsson及びHuaweiと競争する体制を整える見通しである。当該の合併により、市場の3/4弱が3社による寡占状況となる見込みである。 図表5-2-6-3 移動体通信機器市場の世界市場シェアの推移(出典)IHS Technology 市場シェアを地域別で比較すると、北米はEricssonが6割以上のシェアを有するが、その他地域では、HuaweiやZTEの存在が大きいことが分かる。特にアジア太平洋地域においては、両中国ベンダーが市場シェアの半分近くを占めている(図表5-2-6-4)。 図表5-2-6-4 移動体通信機器市場の地域別市場シェア(2014年)(出典)IHS Technology 20 半径数百メートルから十数キロメートルに及ぶ通信エリアを構築するための基地局であり、移動体サービスのカバレッジを確保するために利用されてきている