(2)未来ICT基盤技術 総務省及びNICTでは、通信ネットワークの大容量化や安全性向上を目指し、新しい原理や機能を応用したICT基盤技術について、次のとおり研究開発を実施している。 ア 超高周波ICT技術に関する研究開発 総務省及びNICTでは、ミリ波、テラヘルツ波等の未開拓の超高周波帯を用いて、新しい超高速無線通信方式の基盤技術や、社会インフラの劣化診断等のためのセンシングシステムの研究開発を実施している。平成26年度は、超高周波基盤技術について、通信波長帯半導体レーザを用いた変調器ベースのコム光源の広帯域フラットバンド化を行った。このコム信号から2本のコム成分を抜き出し、テラヘルツ変換器に入射することにより、中心周波数に対して10兆分の1程度の周波数安定度を有する3THz帯のテラヘルツ波発生に成功した。また、テラヘルツ帯の利用に寄与するインジウムリン系トランジスタについて、モンテカルロ法シミュレーションによりゲート電極形状と遮断周波数の関係を解析し、ゲートフット先端部の寸法が実効ゲート長となることを明らかにした。さらに、テラヘルツ波帯を用いた分光測定結果の妥当性確認法を確立するために行った国内ラウンドロビンテストの解析結果をもとに、テラヘルツ波帯分光器のユーザーガイドを公開した。 イ 量子ICT技術に関する研究開発 NICTでは、計算機では解読不可能な量子暗号技術や、微弱な光信号から情報を取り出す量子信号処理技術の研究開発を実施している。平成26年度は、量子暗号技術について、フィールド環境における連続運転試験を実施し、1ヶ月以上メンテナンスフリーで安定動作が可能なことを確認、さらに世界最高値となる1日あたり25.8ギガビットの暗号鍵配送を実現した。また、量子信号処理技術について、量子光源、光子検出器等の高速化により、量子通信の基本プロトコルの1つである「量子もつれ交換」について、通信波長帯において従来の1000倍以上となる世界最高速動作の実証に成功した(図表8-7-6-1)。 図表8-7-6-1 量子ICT技術に関する研究開発 ウ ナノICT技術に関する研究開発 NICTでは、ナノメートルサイズの微細構造技術と新規材料により、光子検出器や光変調・スイッチングデバイス等の性能を向上させる研究開発を実施している。平成26年度は、有機ナノICT基盤技術について、高温で長期保存可能な有機電気光学ポリマーの実用材料の開発に成功するとともに、光位相変調器を試作し67GHzでの高速位相変調動作を確認した。また、超伝導ICT基盤技術について、4ピクセルインタリーブ型超伝導単一光子検出器を作製し、従来比10倍以上の高速化を実現するとともに、64ピクセルアレイ素子の試作を行い入射光の空間強度分布の取得に成功した。