(3)フランス ア ICTエコシステム構築の支援 政府は2013年から、各種産業技術分野での国際競争力強化を目指し、R&D投資促進、国際市場進出支援を続けている。ICT分野も、国内市場の飽和を見越して、各種サービス開発の活性化と国際市場での地位強化を目的に、先端産業育成計画の支援対象とされている。 政府は、産業活性化プログラムを通じたICTエコシステム構築の支援を積極的に進め、先端産業育成計画「未来への投資」によりR&Dを中心とする助成対象プロジェクトに対して最大50%の助成を実施してきた。 2013年9月には、34分野の技術開発支援プログラム「新産業フランス」が発足した。このプログラムでは、世界市場での競争力強化によって、各分野の主要事業者が2022年までに455億ユーロの収益と48万以上の新規雇用を実現することが目標とされている。2014年7月には、ロードマップにより、それぞれの今後数年間の雇用や市場規模等の到達目標が明らかとなり、2015年半ばまでに、「未来への投資」その他の助成プログラムにおいてパイロット・プロジェクトの公募を開始するという見通しが示された。 また、2013年末には、中小企業を対象としてデジタルベンチャー支援イニシアチブ「French Tech」が開始された。このイニシアチブでは、公的投資銀行(Bpifrance)が2億ユーロの基金により年間1,000程度の中小ベンチャーへの融資を計画し、2014年末から先端技術開発に関する起業者支援に関する公募を実施している。政府はまた、「French Tech」による地域経済活性化・都市環境デジタル化を図るため、公募により2014年11月には応募15都市から9都市を指定した。指定都市には関連施設の設置や雇用の斡旋等の資金として、BpiFranceから基金の一部が分配される。このほか、世界各国で開催されるICT関連の見本市への出展などにより、関連企業の海外展開支援も進められている。 イ デジタル法案策定に向けた取組 情報通信分野における政府の諮問機関である全国デジタル評議会は、2014年10月、ヴァルス首相やルメール経済・産業・デジタル大臣付デジタル担当長官の出席の下、デジタル分野における政策の在り方に係る公開協議の開始を表明する催しを開催した。当該協議は、首相から同評議会への9月の諮問に基づくものであり、同評議会が調整役となって、@成長戦略・デジタル分野における企業育成、Aデジタル技術と基本的権利の保障、B政府によるデジタル技術利用、Cデジタル技術による社会の変革(教育、健康分野等)の4つのテーマに係る広汎な事項について、ウェブサイトや物理的な会合により意見の集約が進められている。協議の結果は、同評議会から首相に対する答申としてまとめられ、2015年に予定される政府によるデジタル法案策定や関連分野の活動方針の決定に役立てられる。 成長戦略・デジタル分野における企業育成に関して、イノベーション支援措置の改革により、いかにしてデジタル技術を成長、競争力及び雇用向上の梃子とするかについて議論がなされているほか、デジタル技術と基本的権利の保障をめぐって、ICTに関わる巨大な経済主体と利用者との間の不均衡が顕著になる中、個人情報や著作権といった分野における法の遵守、権利の尊重をいかに確保するかについて検討がなされている。 ウ ブロードバンド整備に係る取組 政府は、2013年4月、「フランス高速ブロードバンド計画」を策定し、2022年までに全土で高速ブロードバンドを利用可能とするための方策を提示した。具体的には、国土を民間企業主導で整備を進める地域と政府の関与を得て整備を進める地域とに分け、前者については企業による60億から70億ユーロの投資、後者については官民ほぼ同額の負担により130億から140億ユーロの投資を見込んでいる。2014年に入り、固定高速ブロードバンドの整備が本格化しつつあり、FTTHが利用可能な不動産は2014年末で406万(前年比109万増加)となり、契約数も94万(前年比38万増加)となっている。また、オランジュ(旧フランステレコム)は、2015年3月に公表した5カ年計画において、フランスにおける光ファイバへの投資を2020年までに3倍とし、光ファイバ利用可能不動産を1200万(2018年)、2000万(2020年)へと増加させる意向を表明している。 移動体によるブロードバンド接続の需要に応えるため、政府は、2014年12月、700MHz帯を電気通信事業の用途に移管する旨の方針を発表するとともに、割当てを2015年12月に決定し、移管は2017年10月から2019年6月にかけて実施するとの計画を明らかにした。これを受け、ARCEP(郵便・電子通信規制機関)は、同年12月から2015年2月にかけて割当てに係る具体的な検討事項について公開協議を実施した。