(1)拡大する越境データ流通 越境の流通は、人・モノ(貿易)・カネ(ファイナンス)の流通に加え、現在はデータの流通が注目を浴びている。ここでいう越境データとは、情報、検索、通信、取引、映像、企業間データなど、多様な情報が含まれる。Mckinsey Global Instituteの分析によれば、世界のモノやカネの越境流通の成長は鈍化しているものの、データの越境は、国・企業・個人を結ぶウェブの構築により、爆発的に成長しているという。同社によれば、2005年から2014年にかけて、越境データの帯域は、4.7Tbps(毎秒テラビット)から211.3Tbpsへと10年間で約50倍拡大している(図表2-3-1-1)。特に、北米とEU間のデータ流通に係る帯域が大きく、両地域を起点とした帯域が世界の越境データ流通を牽引していることがみてとれる。IoT時代に向けて、IoTに関わるデータの流通や関連するビジネスやアプリケーションの展開により、越境のデータ流通の更なる拡大が予想される(図表2-3-1-1)。 図表2-3-1-1 国境間データ流通の変化 (出典)Mckinsey Global Institute DIGITAL GLOBALIZATION: THE NEW ERA OF GLOBAL FLOWS 次に、我が国を起点とした越境データの状況について、国外ISP等と交換されるトラヒック(帯域)についてみてみると、in(国外から国内へ)及びout(国内から国外へ)ともに大きく増加している。特に、前者については2004年から2016年の間で約50倍と、前述した世界におけるトラヒック(帯域)と同等の成長率である(図表2-3-1-2)。 図表2-3-1-2 我が国から国外ISPと交換されるトラヒック (出典)総務省「我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計・試算」より作成 企業向け国際アンケートから、各国企業における国外へのデータ提供状況についてみてみると、英国企業及びドイツ企業の約70%、米国企業の約60%、日本企業の約40%が現在越境のデータ提供を行っていると回答している。このように特に欧州の企業による国外へのデータ提供が多い状況がうかがえる(図表2-3-1-3)。 図表2-3-1-3 企業の国外へのデータ提供状況 1 (出典)総務省「安心・安全なデータ流通・利活用に関する調査研究」(平成29年) 1 「分からない」と回答したサンプルは除いている。