(1)「つながる経済」の進展 インターネットの普及により、様々なものがつながる社会は、従来「ユビキタス」などと表現され、進化してきた。一方で、近年のIoTに係る取組等にみられるように、生産設備や流通などあらゆる産業やサプライチェーンの中で、デジタル化やネットワーク化により、生産設備や流通(供給)サイドと消費(需要)サイドをICTでつなぐことで、効率的な生産体制を構築しようとしている。このように、今「つながる経済」、「つながる産業」として、より具体的な潮流へと発展している。 ア 技術革新の進展 ネットワーク化によってつながるのは人やモノに留まらず、今まで分散していたキー技術がつながり、今後お互いに影響を及ぼし合うことが予想される。具体的には、ロボティックス(ロボット)、ナノテクノロジー、3Dプリンター、遺伝子工学、バイオ技術、ブロックチェーン技術等など、ネットワークを介すことで相互作用する技術的な進化が、新たな産業革命を具現化する。このような点からも、第4次産業革命は、ICT産業に閉じた潮流ではなく様々な産業に及ぶものである。例えば、自動運転技術の革新は、自動運転車の普及と交通事故の減少をもたらし、自動車産業の構造変革のみならず、自動車保険の概念そのものを変革する可能性を秘めている。また、ドローン(無人航空機)の空撮による3次元計測データは、農林水産業や建設業、鉱業の生産性に飛躍的な向上をもたらす可能性を秘める。さらに3Dプリンターの普及は、製造業における生産管理にとどまらず、設計思想や物流政策のあり方自体に再考を迫るものである。 イ 新たなビジネスモデルの創出 「つながる経済」では、つながる前(分断されていた時)には実現できなかったビジネスモデルが成立する。例えば、いつ、どこで誰が商品を使ったかを把握して細かく管理・課金する形態や、売り切り型ではなく多様な貸与・利用許可型ビジネス(いわゆる「モノ」から「コト」へ)の潮流を生んでいる。1章でみたように、AirbnbやUberなどに代表されるシェアリングエコノミー(共有型経済)も、こうした新たなビジネスモデルの発想が、個人が所有するさまざまなモノやサービスの交換や共有などマッチング(つながること)を可能とした、新たな産業革命の一端といえる。加えて、ソーシャルメディア、クラウドファンディング等、情報やお金の流通に係る新しいモデルの普及と進展によって、従来にない価値創造が可能となりつつある。 一方で、従来つながっていなかったが、つながることで、これまで単独で存在していた商品や市場が代替されることも予想される。このような潮流は分野や業態の垣根を超えた異業種間の競争が進展することを示唆するものである。