2 第4次産業革命実現に向けた課題 第4次産業革命は、膨大なデータを処理・活用することで社会や経済に変革をもたらす大きな潮流であり、一ないし複数の企業をもってしても自発的にできることには限界があると考えられる。そこで、第4次産業革命実現に向けた課題を、ルール・規制、人材、ネットワーク等の企業の外部に依存する「外部要因」、それ以外のマインド・認識、リーダーシップ・目標等の「内部要因」とに区別した分析を行う。 外部要因に対する課題意識は、海外企業では、ネットワークや標準化・端末等のインフラに対する課題意識が高い(図表3-2-2-1)。他方、我が国企業では、標準化、人材育成、データ流通や連携に係る制度・ルール等に対する課題意識が強い。内部要因に対する課題意識についてみると、海外企業と我が国企業では、人材・外部リソースに対する問題意識で大きな差がみられる(図表3-2-2-2)。 図表3-2-2-1 第4次産業革命に向けた課題(外部要因) (出典)総務省「第4次産業革命における産業構造分析とIoT・AI等の進展に係る現状及び課題に関する調査研究」(平成29年) 図表3-2-2-2 第4次産業革命に向けた課題(内部要因) (出典)総務省「第4次産業革命における産業構造分析とIoT・AI等の進展に係る現状及び課題に関する調査研究」(平成29年) 前項までみてきたように、IoT・ビックデータ・AIなどの新しいICTをはじめ、技術革新が実用段階に入り、国境・産業の垣根を越えて世界中のビジネスが大きく変わろうとしている。このような第4次産業革命のダイナミズムな潮流に対比すると、企業向け国際アンケート調査結果からは、日本は他国から当該革命を最も享受する国の一つとして期待されているにも関わらず、日本の企業、ひいては産業・社会システム、そして国民意識の社会変革に対する抵抗感が際立って見える。 我が国企業は失われた20年において債務・雇用・設備という3つの過剰解消に努め、ようやく2000年代に入り企業のバランスシートは改善した一方で、その過程において経営・組織・個人は、かつて高度成長期にあったような黎明期の新市場に積極果敢に挑戦しようとする企業DNAを弱めている。第4次産業革命の到来を想定した本アンケート調査から明らかになったように、我が国企業は他国企業と比べて、オープンイノベーションや外部連携の志向が低い中で、主力既存事業の維持に適したように組織特性の純化が進み、また中小規模の事業者も含め、垂直統合型取引から抜け出せないでいる。結果的に、第4次産業革命はIoT・ビッグデータ・AIによるICT産業を主とする変革である、という認識から脱却できていない状況も窺える。 こうした状況において、日本の産業競争力の復活ならびに産業発展と持続可能な社会システムの実現につなげることが期待される。